11 信託

October 23, 2008

渉外相続の実務に関する研修会【松井】

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 先日、日本連合会主催の「渉外相続に関する実務に関する研修会」13時30分〜17時00に参加しました。
 自分用のメモがてら、ブログにアップしておきます。
 
 第1部 韓国渉外相続の実務 近似の実務上の留意点について
     〜近似の韓国家族法の改正点ほか〜 
     裵 薫 弁護士(大阪)
 第2部 外国人の遺言
     〜外国人遺言作成上の実務上のノウハウ〜
     本間 佳子 弁護士(東京)


 相続事件を多く扱うなかで、被相続人が韓国籍の方の事件をいくつか担当させていただいてきました。
 準拠法が韓国法となるため、それなりに韓国の相続法の事柄は、比較的資料、文献が入手しやすいこともあり、分かっているつもりではいました。

 が、やはり。フォローしきれていませんでした。知らなかった事柄がいくつかありました。

 常時フォローしているわけではない案件を新しく担当する際は、念のためにと常に最新情報をチェックする必要があります。
 ここ数年で怖いのは、出版物でのフォローでは間に合わないことがあるということです。
 出版社による出版物はそれなりに編集作業がほどこされているので情報の精度は信頼できるのですが、スピードがネットに遅れることがあります。
 弁護士も、まずはネットで検索する必要があります。そして文献でチェック。また人のネットワークも重要です。経験者の方に教えてもらうのは早いし確実です。
 ネットの検索は、当然、開設者によって掲載情報の信頼性がまったく異なるのでこの点が注意ですけど。


 「外国人の遺言」は、上記のとおり、被相続人が韓国籍の方のものについては比較的なじみがあるのですが、それ以外の国の方のものについては、アメリカといった何となくポピュラーな国籍の方のものであっても、経験している弁護士はなかなか少ないのではないかと思います。
 私自身も数えるほどしかありません。
 
 今回の講演の本間佳子弁護士も、アメリカ国籍の方のものは10件程度だと仰っていました。
 
 その際のポイントとしてレジュメで挙げておられたことをメモしておきます。
 
 外国人の遺言作成上知っておきたいこと
  ⑴ 遺言の方式
  ⑵ 遺言の成立と効果
  ⑶ 遺言の内容
  ⑷ 遺言執行者の指定と権限
  ⑸ 外国法に基づく他の遺言との関係
 その他の留意点
  ⑴ 相続税
  ⑵ 遺言執行時の問題(相続人の確定、検認など)

 約90分の講演でのお話は、私にとっては一応、確認作業になり、安堵するものでした。


 講師の弁護士が何度も強調されていたのは、ニーズはあるのだということでした。  
 また、最後に仰ったのは、日本での外国人の遺言作成についてはニーズがあり、しかもやりがいがあるということでした。

 遺言を作成しようとする外国人、アメリカ国籍の方の多くの意識としては、自分の死後、遺された配偶者や家族の方を守るという意識で行動されていることが多く、そのことに弁護士としてサポートし、サポートをしていくなかで信頼をうけるといった点、仕事としてもやりがいを感じると仰っていました。
 講演を聞きながら、1人激しく共感していました。

 日本国籍の方が普通に日本で遺言を作成しようとする場合、確かに、子ども達が紛争にならないように、あるいはこの子には多くを相続させようといった意味で、相続人を守ろうという意識が確かにあります。

 ただ、たまたま今、日本で暮らしているという外国籍の方の場合、もっと切実な思いがあるように思います。
 本間弁護士が仰っていたのは、自身も、アメリカで暮らしたり、立法支援活動としてカンボジアで2年ほど暮らしたことがあるが、言葉に不自由しなかったとしてもやはり異国の地では何かと不安で、心細い思いは常にある、だからこそ、日本で暮らしている外国人が日本で遺言を作っておこうという気持ちは、よく分かる、それは自分の死後、自分の家族に対し出来る限りのことをして守りたいという意識が余計に働くのだろう、ということでした。
 そのとおりだと思います。
 弁護士として不慣れな点はあるかもしれないが、それでも訪ねてもらった以上、弁護士として出来る限りのことをしてサポートしたい、愛する家族を守りたいという思いに応えたいという意識に突き動かされるのだと思います。
 自分が外国で暮らしていたら、同じような思いになるだろうなと思います。そんなときやはり力を貸してくれる、信頼できるプロフェッショナルが欲しい。

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 ただ、アメリカでは、Estate Planning の一環として遺言を作り、さらには信託制度が発展しているので、財産の一部に信託(Trust)を設定することにより、相続税対策が可能という面もあるようです、遺言が利用される理由の一つとして。

 数年前、相続特集で、日本テレビの「思いッきりテレビ」に出演させていただいたとき、ゲストだったダニエル・カールさんが仰っていました。毎年、遺言を作っていると。遺言を作成するというのは、ごく普通のことだったと。そんなもんかと聞いていたのですが、たぶんそうなのでしょう。
 ネットサーフィンをしていると、西海岸にEstate Planning 専門の弁護士のサイトもありました。
 
 ただ、これも以前、アメリカの信託制度に詳しい元金融マンで、現在教授をされている方とお話をしていたときに聞いたのでは、アメリカでは、信託制度といっても個々に非常に詳しい内容の契約を交わしているので、信託制度が発展しているというよりも、契約文化が発展しているのであるといったことでした。

 日本の信託法は、最近、事業承継などとからんで改正、注目されてはいますが、税務上は、やはり信託制度の利用による課税逃れといったことがらはなかなか出来ないような仕組みになっているようで、今後、信託法としてどうこうというよりも、おそらく、ニーズに対応した契約内容、超超超具体的な内容の、ごっつい、分厚い信託契約書を作成するくらいでないとなかなか相続関連については信託制度は使えないのかなという気もしています。
 

 講師の弁護士は、アメリカ留学もされておりニューヨーク州の弁護士資格も持っておられて、英語には不自由しない弁護士のようでしたので、その点、非常に羨ましく思いました。
 以前、ニューヨーク州法の相続関連の内容を調べようとしたのですがうまく文献にたどり着けず、同じくニューヨーク州の弁護士資格をお持ちの大阪の弁護士にお世話になりました。
 ああ。
 せめて読みに不自由しない程度に英語の勉強をしたいと思います。

(おわり)
 
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December 25, 2007

不正を防止する仕組み~内部統制制度の有用性~【松井】

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 内部統制が監査の対象になるということで、監査報酬バブルが起こっているといういわれかたをしたりしますが、仕事量に応じた報酬を請求するのは当たり前のことでは?!と思ったりします。何も監査法人が無理からに仕事量を増やしたわけでもないし。
 ただ、八田先生曰く、「コンサルティング会社やIT業界など外部の専門機関に内部統制の構築を丸投げするといった『経営者不在の内部統制』の動きもある。これらはいずれも、本来の趣旨を理解しておらず、第三者評価には耐えられないものだ。」(07年12月7日日経)ということですが。コンサルに金を払っても、無駄じゃないの?!といことを暗に言いたいのか・・・。



 内部統制。小さくみれば、例えばうちの事務所のようなところでも、小口現金の出し入れにつき、管理者と現金の利用者を分けるといった仕組みを作ることを指すでしょう。これが同じ人物だと、現金なだけに横領しようと思えば簡単に出来てしまう、そこで仕組みを作って、管理者のチェックが入るようにするといった簡単なことです。
 この仕組みを作る責任は、もちろん経営者である弁護士の責任です。
 この仕組みを大きくしたものが、内部統制かと。

 といことで、「はて?どうなっていたんだろう?」と思ったのが、「全国小売酒販組合中央会」の年金共済制度です。


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 日本弁護士連合会では、「日弁連 消費者問題ニュース」というA4、10枚程度のニュースが発刊されています。
 そこで、2007年3月号を何気なく見たところ、「事件情報」ということで、「全国小売酒販組合年金被害対策東京・大阪弁護団」のニュースが目にとまりました。
 
 中身はというと。
 「全国小売酒販組合中央会が、私的年金制度として運用していた年金共済制度が破綻して、年金加入者が、年金の受給はもちろんのこと、掛金相当額の大半の返還も受けられなくなったという事案」です。
 弁護団は、2007年1月15日、東京地裁・大阪地裁に、損害賠償請求訴訟として提訴しているということです。
 
 「元事務局長の独断にょって、クレディ・スイスとの間で信託契約が締結され、チャンセリー債への一括投資が行われました。」ということです。
 ここに掛け金のほとんどの総額約145億円が注ぎ込まれたところ、投資に失敗し、資金の大半が失われたとういことです。
 年金を老後の収入と考え、掛け金を支払っていた方々の苦悩を思うと何ともやるせない気持ちになります。

 「本件の問題点は」「安定した運用でいどむべき年金事業において、リスクの高い仕組み債であるチャンセリー債への勧誘・誘導が行われた結果、リスク分析も行わないままに、年金資産のほとんどを一括投資した点です。」とあります。
 「年金資金の運用方法等について具体的な決定権限を持っていた中央会の理事会等では、本件投資について必要な検討を行っておらず、事実上、事務局長の独断によって」投資が決定されたということです。
 「その際、クレディ・スイスは、中央会に対して、本件投資について行うべき適切な説明・助言を行いませんでした。」とあります。



 専門業者として、顧客に説明すべき事柄を説明すべきは当然としても、一体、中央会の仕組み、まさに内部統制はどうなっていたのかという疑問です。
 おそらく、145億円もの資金の使途を決定する権限について、何らの抑制の仕組みもなかったものと思われます。あっても、まったく機能していなかった。
 その責任を全て、クレディ・スイスが負うべきなのか。正直なところ、この点は疑問ですし、裁判所もそれなりの考慮をするかとは思います。
 不正を抑止する仕組みとしての内部統制制度は、何も上場企業だけに有用なものではありません。
 その発想それ自体は、ネーミングはどうあれ、うちの事務所のような小さな個人事務所から、年金共済といった組合でももちろん有用です。
 「仕組み」に対して、疎かであったことのリスクは誰が負担することになるのか。その共同体の構成員に結果が降りかかってくるのです。
 自分が属する組織、お金を託している組織に対し、今一度、「仕組み」が出来ているのかどうか、考えてみてはどうでしょうか。
 ことが起こってからでは、遅すぎます。

 ところで。何の本で読んだかすっかり忘れていますが、アメリカなどでは年金資産の運用についてはそもそも組合などにおいて投資のプロをスタッフとして擁しているとか。勧誘しても、甘い話しにはちょっとやそっとでは乗ってこない慎重な姿勢が徹底していたという業者側からの体験談を読んだことがあります。日本の年金は結構、団体任せで各団体によって違うんでしょうね。
 あ。弁護士会の年金はどうなっているんだろう。
(おわり)

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September 22, 2007

信託、そして大阪【松井】

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 先日、伊丹の裁判所へ行ったところ、壁に貼ってあったポスターに目がとまりました。新しい信託法の施行日のお知らせでした。
 新しい信託法。信託が人々の身近な存在になるのでしょうか。


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 この夏、中央大学の教授の「信託法」講義を受ける機会がありました。関西方面では信託法を講義出来る者が多くはなく、声をかけられ、毎週末、わざわざ大阪まで出てこられての講義を受け持たれることになったとのことでした。
 実は、信託そのものは身近なところで企業が利用しています。
 その例としてあげられたのが、阪急電車の車両。阪急電車の車両は実は阪急電鉄の所有物ではないとのこと。信託制度を利用しており、所有者はケイマン諸島にある会社になっているということでした。これは有名な話のようで、クラスでも何人かの方はご存じでした(私は知りませんでした)。



 新しい信託法が施行されますが、また第2弾の改正作業が進んでいるようです。次のポイントは福祉信託。
 ちなみに、道垣内弘人教授の「信託法入門」(日経文庫)によれば、信託のポイントは次の4つです。
 1 一定の財産をめぐる法律関係であること
 2 受託者は財産の管理・処分などの義務を負うこと
 3 信託財産は受託者の財産のうちで特別な位置づけを有すること
 4 受託者がさまざまな特徴的な義務を負うこと

 つまり、自分の財産を信託契約に基づき、義務づけたうえで、特定の人に委ねる、所有権を移転させてしまうということです。
 自分で、所有して、使用・収益すればいいものを、処分して、他人にその使用・収益、あるいは処分まで委ねてしまいます。
 どういったメリットがあるのでしょうか。登場人物、役割は3つ。

    委託者      受託者

        
        受益者

 これら3つの役割をうまく利用すれば、一人で財産を抱え込むことでは得られないメリットがあるということです。
 新しい信託法では、信託する財産として従前と異なり、いろいろなものが考えられます。
 委託者と受益者が同じでも構いません。
 さらには、施行は延期されていますが、委託者と受託者が同じということも可能とされています。



 信託で何が出来るか。
 講義の最後のテストでは、信託を利用したビジネス・プランを考えよというものでした。
 私が考えたプランはというと・・・。
 相続や事業承継の際にトラブルになりがちな深刻な問題をクリアしようというプランです。会社法106条(共有者による権利の行使)のために起こりがちな問題をクリアできないかとの発想から。
 問題なのは、誰が受託者になりうるのかということ。
 弁護士は弁護士に過ぎないのであって、弁護士だから経営、運用の才覚があるとは限らないのはもちろん。
 この点が私が考えたプランの辛いところでした。
 ただ、教授の採点は面白いか否かを基準とするということで、A+はいただきましたが、実現可能性はまた別の問題。


 ところで、個人の財産の信託については、教授曰く、関東よりも関西の方が需要があるのではないかということでした。信託は、自分の所有財産を信頼して、第三者に完全に譲渡してしまいます。お互いを規律するのは信託契約に基づく権利義務だけです。
 相当な信頼関係が前提となります。
 このとき、関東よりも関西の人の方が人間関係が濃厚で、信託に対する心理的抵抗が少ないのではないかといった趣旨のことを述べられていました。
 私は関東方面で暮らしたことがないのでよく分かりません。
 ただ、三重県から大阪に来た当初、驚いたのが距離感のなさでした。スーパーで買い物をしていたとき、山積みにされていた果物を買おうかどうしようか棚の前で逡巡していると、おばちゃんがさっと近づいてきて突然、私の耳元でささやきました。
 「やめとき。それ、マズイでぇ。」
 ありがとう、おばちゃん。

 先日、大阪のシンボル、通天閣の付近を通ったのですが、やっぱり「濃厚」でした。

I love OSAKA.

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(おわり)

追記 「信託大好きおばちゃん」のブログで「大阪のおばちゃん」という記事を発見。
そういえば、去年の冬、電車の座席で咳き込んでいると、隣の上品そうなおばちゃんがカバンの中から飴を取りだし、「これ、食べ」と差し出してくれたことがあった。「ありがとうございます。」と素直になめる。知らないおばさんから飴をもらったことが2回ほどある。ありがとう、大阪。

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