03 契約・契約書

September 10, 2009

契約書の文言/法律用語と一般的な国語の用法〜スズケン対小林製薬〜【松井】

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 平成19年の秋の初めころだっかに、新聞で小さく報道されていた事件、名古屋の医薬品卸売り業者スズケンが大阪の小林製薬に対し、議決権行使禁止の仮処分を求めたという事件がありました。
 その後、新聞報道では認められなかったという結論だけが報道され、いつまでたっても判例雑誌等でその名古屋地方裁判所での仮処分申立の決定書が掲載されることはありませんでした。ネットで検索もしたのですが、自分のブログ記事がヒットするだけで、ひっそりと忘れられた事件になっているのだと思っていました。認められなかった仮処分のあと、スズケンがさらに本訴を提起したという報道も目にすることはありませんでした。


 ところが、今年になってようやく取り上げられるようになり、ついに決定書を目にすることが出来ました。
 金融・商事判例09年7月1号50頁と商事法務09年7月25日号82頁です。
 
 名古屋地裁平成19年11月12日決定(株式交換承認の議決権行使禁止仮処分申立事件)の決定書の全文を読んでみて分かったこと。
 スズケンと小林製薬が締結した契約書の文言に決定的な不備があったため、その間隙を縫ったのかどうかまでは分かりませんが今回の小林製薬の行動となり、裁判所はスズケンの言い分を認められなかったのだということです。
 端的には、「株式の譲渡」というこの言葉を法律用語として解するのか、一般的な国語の用法として解するのかでした。株式の「交換」は、株式の「譲渡」にあたるのか否かが問題とされたようです。

 スズケンの言い分は、一般的な国語の用法としての主張に基づいていると解されました。すなわち、「譲渡」というからには、「交換」も自身の手から株が離れるという意味で「譲渡」だろうと。
 それに対して裁判所は、

「一部上場企業で、過去にM&Aの経験を有する大企業」
であって、そもそものスズケンと小林製薬との契約においても
「薬粧卸売事業を、債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換の方法によりコバショウに移管することや、それに伴って債権者と債務者の共同出資会社となるコバショウの経営・運営方法を定めたものであること」
「本件合意書上、4条には、債権者がその薬粧卸売事業をコバショウに移管する方法として株式交換が規定され・・・」
と「株式交換」を意味する用語が使い分けられていることからすれば、17条に規定される「保有するコバショウの株式の全部又は一部を他に譲渡してはならない」という「譲渡」は、法律用語としての「譲渡」であって「交換」は含まれない、としてスズケンの申立てにつき、保全の対象となる権利をスズケンは小林製薬に対しもたないという結論を出しました。
 
 そうなんです。
 会社法上、「譲渡」と「交換」は次のように全く異なる性質のものと解されているのです。

 この当初の契約作成に会社法に詳しい弁護士が関与していたのかどうかは分かりません。もしスズケン側の弁護士が作成に関与していた契約書だとしたら大失態と言わざるを得ません。あるいは、法務部門だけで契約したとしたら、安くつけようとして、結局高くついた結果ということになります。
 いずれにしてもスズケンのミスということになるようです。
 だからか、きっと本訴も提起しなかったのだろうと合点がいきました。

 ところで、保全処分では、申立をした者を「債権者」といい、申立ての相手方を「債務者」といいます。法律用語としては。


 「譲渡」と「交換」。判決書は次のように判示しています。
 

「株式交換は、平成11年8月13日法律第125条による改正により、ある会社を他の会社の完全子会社とするため、会社組織法上の行為として新設された制度であり(その際、株式交換を、完全親会社となる会社にとって、完全子会社となる会社の株主の有するその会社の株式の現物出資に対する株式その他の財産の交付とする構成も考慮されたが、合併に類似する組織法的行為として立法された。)、完全子会社の株式は、株式交換の当事会社間で締結された株式交換契約が両者の株主総会の特別決議で承認されることにより、株式交換に反対する株主の意思にかかわらず法律上当然に移転する」

 
「本件株式交換において、株式交換契約の当事者はメディパルとコバショウであって、債務者は当事者ではないし、債務者の保有するコバショウ株式のメディパルへの移転も、法的には債務者の意思基づくものとはいえない。」

 
 そして決定書はこのように結論づけています。
 
「債権者の上記主張は、本件株式交換が、旧商法ないし会社法上の株式交換であることを理解せず、債務者とメディパル間のコバショウ株式の民法上の交換契約であるかのように誤った理解に基づくものであるといわざるを得ず、採用できない。」

 その後、さらに一応、いろいろとスズケンの主張が検討されてはいるのですが、結局はここにいきつきいています。

 残念ながら、スズケンにとっては可哀想だけど、お粗末ともいえる契約と仮処分の申立てだったようです。
 スズケンが小林製薬に対し、仮処分の申立てをせざるを得なかった事情、気持ちを考えると、当時、報道されていたときから「頑張れ、スズケン!」でした。コバショウにおいて、過半数を超える大株主の小林製薬と少数となるスズケンという株主構成の中、そもそもがこの株主構成もスズケンと小林製薬の合意による戦略的なものだったようです。そのことからすれば、小林製薬のやっていることは禁反言の原則に反するようにも思えました。
 しかし、そもそものスズケンと小林製薬の契約書において、コバショウのありかたについて株式交換が規制されていなかったとは。。。
 スズケンのミスと言われても仕方ないのかなと思います。


 なお、この決定書では、株主総会における議決権行使を制約する契約の効力等についても触れられています。
 

「①株主全員が当事者である議決権拘束契約であること、②契約内容が明確に本件議決権を行使しないことを求めるものといえることの二つの要件を充たす場合には例外的に差止請求が認められる余地があるというべきである。」

 ②の要件はともかく、①の要件が「株主全員」の契約であることを要するとしているのですが、ここまで要するのかどうかというのも一つの問題ではないかと思います。
 
 にしても、いずれにしても、スズケン、残念でした。。。

(おわり)
  
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September 09, 2009

そのお金に理由はありますか?〜更新料約定無効高裁判決から学ぶこと〜【松井】

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撮影 yuko.K


 先日、新聞などでも大々的に報道されましたが、大阪高裁平成21年8月27日判決でもって、京都地方裁判所での一審判決が覆されて、京都のマンション賃貸業者と元住人との間の訴訟で、1年ごとの契約更新時に支払われていた10万円の更新料支払いの約定が、消費者契約法10条に基づき、無効と判断されました。結果、1年の契約更新ごとに支払われていた40万円の更新料を利息をつけて家主は元住人に返せという判決となりました。
 これは、不動産を所有して、賃貸業を営んでいる方々にとっては、衝撃の判決ではないかと思います。消費者契約法が施行された平成13年4月1日以降に授受された「更新料」名目の金員について、場合によっては、一括して利息までつけて返済しなければならないということがあり得るからです。
 この判決の一審京都地裁判決と今回の高裁判決を読み比べてみました。
 この裁判はおそらく上告も受理されて、最高裁判所の判断も出るだろうとは思いますが、現時点で賃貸人において気をつけるべきことを示唆するものともいえ、自身のメモがてら記しておきます。


 大きなポイントは、賃貸人が賃借人から受け取るお金について、「そのお金に理由はありますか?」ということを改めて総チェックすべきだろうということです。
 今回の事案で、京都地裁と大阪高裁とで結論が別れたのは、まさに今回の事案での「更新料」について、この点の結論の違いだったようです。

 判決は共に、まず「更新料の法的性質」について検討しています。
 家主側は次のような主張をしていました。
  ① 更新拒絶権放棄の対価
  ② 賃借権強化の対価の性質
  ③ 賃料補充の性質

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 この点、京都地裁判決は、①については、希薄ではあるが、その性質があるとし、②についても、やはり希薄ではあるがとしつつ、これを認め、③については、本件での「更新料約定は、本件賃貸借契約における賃料の支払方法に関する条項であり」として、「賃料の補充の性質を有しているものということができよう。」としました。
 その上で、消費者契約法10条前段にあてはめてみると、

「『賃料は、建物については毎月末に支払わなければならない』と定める民法614条本文と比べ、賃借人の義務を加重しているものと考えられる」
としてその要件を充たすとするものの、10条後段の要件はみたさないとして、10条の適用を否定したのです。
 すなわち、
「本件更新料約定が『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』であること」
について検討し、①1年契約、賃料月額4万5000円という状況で、10万円の更新料は、過大なものではないこと、②更新料約定の内容は明確であり、賃借人は契約締結時に説明を受けているので、賃借人に不測の損害あるいは不利益ではないこと、③希薄とはいえ、更新料が更新拒絶権の対価及び賃借権強化の対価と志手の性質を有しているということ、これらを考慮し、10条後段の要件は充たさないと判断しました。


 以上の京都地裁の判断に対し、大阪高裁は、まず更新料の法的性質について、① 更新拒絶権放棄の対価性を否定しました。そもそも正当事由がない限り、賃貸人は更新拒絶できないこと(借地借家法28条)、契約条項上も賃貸人がそのように考えていたとは認められない、更新拒絶権行使に伴う紛争回避目的と言う点については、その危険は対等に負担されるべきものであって、賃貸人のみが更新拒絶権放棄の対価として更新料を取得すべき理由はないとしています。
 そして、② 賃借権強化の対価の性質についても、否定しました。合意更新により解約申入が制限されることにより賃借権が強化されるといっても、本件賃貸借契約は、契約期間が1年間という借地借家法上認められる最短期間であって、強化といっても無視してよいのに近い効果であることを理由としています。
 最後に、③賃料補充の性質も否定しました。
 契約期間満了前に退去した際、精算をする規定がないこと/更新料が基本的に10万円の定額のままであり、家賃の増減と連動しないこと/更新料不払いであっても、債務不履行解除を認める余地はないといえること/といったことを理由としています。
 さらには、なお書きで次のように判示しています。
 

「なお、賃貸借契約の当事者間においては、賃料とされるのは使用収益の対価そのものであり、賃貸借契約の当事者間で賃貸借契約に伴い授受される金銭のすべてが必ずしも賃料補充の性質を持つと解されるべきではない(そうでなければ、敷金はもちろん、電気料、水道料、協力金その他何らかの名目をつけさえすれば、その名目の実額を大幅に越える金銭授受や趣旨不明の曖昧な名目での金銭授受までも賃料補充の性質を持つと説明できるとかいされかねないからである)。」

 
 そして、大阪高裁判決は、消費者契約法10条後段の要件についても、まず検討にあたっての指針を打ち立てています。
 
「この要件に該当するかどうかは、契約条項の実体的内容、その置かれている趣旨、目的及び根拠はもちろんのことであるが、消費者契約法の目的規定である消費者契約法1条が、消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があることにかんがみ、消費者の利益を不等に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより消費者の利益の擁護を図ろうとしていることに照らすと、」
として、
 
「契約当事者の情報収集力等の格差の状況及び程度、消費者が趣旨を含めて契約条項を理解出来るものであったかどうか等の契約条項の定め方、契約条項が具体的かつ明確に説明されたかどうか等の契約に至る経緯のほか、消費者が契約条項を検討する上で事業者と実質的に対等な機会を付与され自由に検討していたかどうかなど諸般の事情を総合的に検討し、あくまでも消費者契約法の見地から、信義則に反して消費者の利益が一方的に害されているかどうかを判断すべきであると解される。」
としました。

 そして、今回の事案について大阪高裁は検討しました。
 更新料10万円については、賃料月額4万5000円に比すれば、かなり高額とします。
 そして、

「本件賃貸借契約に本件更新料約定が置かれている趣旨、目的及び根拠について検討」
します。
 この点、
「本件更新料約定が維持されるべき積極的、合理的な根拠を見出すことは困難である」

 
「この約款は、客観的には、賃借人となろうとする人が様々な物件を比較して選ぶ際に主として月払いの賃料の金額に着目する点に乗じ、直ちに賃料を意味しない更新料という用語を用いることにより、賃借人の経済的出捐が少ないかのような印象を与えて契約締結を誘因する役割を果たすものでしかないと言われてもやむを得ないと思われる。」
とまで判示しました。
 そして、
「端的に、その分を上乗せした賃料の設定をして、賃借人になろうとする消費者に明確に、透明に示すことが要請されるというべきである。」
としています。
 そして、賃借人においては、契約締結時、建物賃貸借契約においては強行規定となる法定更新制度というものがあり、この場合更新料を支払う必要がないことの説明を受けていないということを重視しています。賃借人が契約条件を検討する上で賃貸人と実質的に対等な機会を付与されて自由に検討したとはいえないとするのです。結果、本件更新料約定が賃借人に不利益をもたらしていないということはできないとしました。
 このように
「諸点を総合して考えると、本件更新料約定は、『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものと』ということができる。」
としました。


 この大阪高裁判決から言えることは、当たり前ですが、事案を丁寧に検討した結果のものであって、他の賃貸借契約において、「更新料」名目の契約が即、消費者契約法10条に反し無効ということまでにはならないだろうということです。
 場合によっては、要件を満たさず、有効になるものもあるかと思われます。
 
 ただ、教訓として考えられるのは次のようなことです。
 「受け取るお金、そのお金に理由はありますか?」ということです。
 そのお金は何の対価なのか、営業、商売をする人は、改めて、この問いにどのような答えを用意できるのかを総点検する必要があるかと思います。
 そうでないと。
 消費者契約法10条によって、無効として、利息もつけてまとめて返還せねばならないという事態もありえます。

 先日、賃貸物件を所有する賃貸人の方の代理人となって、簡易裁判所に出廷しました。そうです、元賃借人から訴えられたのです。
 その訴訟は、大事になることを望まない依頼者の方の意向によって、徹底抗戦で判決ということなく和解で終わったのですが、その際、簡易裁判所の裁判官の方や調停委員の方とちょっと雑談をしました。
 曰く。
 やはり、今、簡易裁判所では、弁護士に依頼せずに本人訴訟で、賃貸人を訴えて、敷金などを返還しろという裁判が非常に多いとのことでした。

 更新料の約定というのが、京都で多い契約スタイルなのかどうか、それとも日本各地であるものなのかどうかはよく知りませんが、今一度、今のうちに確認されることをお勧めします。


 そして何よりも。消費者を相手として商売を営む個人、法人についても、金銭の授受がある場合、契約書に何らかの請求権などを明記している場合、そのお金はいったい何の対価として支払請求を定めるのか、「そのお金に理由はあるのか。」「どういう理由なのか。」を今一度、点検し、改めるべきところは早々に改められることをおすすめします。
 訴えられてからでは、さらに時間、弁護士費用といったコストがかかりますので。

 話は違いますが、私が以前、自分の住居を賃借しようとした際、不動産仲介業者の方から支払額の明細を示され「クリーニング料」というものが挙っているに気づいたことがありました。
 「何だこれは?」と思い、実は、仲介業者をすっとばして家主の会社の方に連絡をいれました。家主も知らない金額であり、部屋の清掃はすでにもうしてあるということでした。仲介業者が、家主にも黙って、根拠のない金を賃借人からくすねとろうとしたものでした。

 あれ?コレは何?という素朴な感覚と、それに従い行動することが、食い物にされることを回避する道ですし、業者の方は、突っ込まれたときに弁解できないようなお金は請求しないという基本を今一度、確認するということだと思います。
 不安を覚えるようでしたら、今のうちに早めに弁護士に相談されることをおすすめいたします。過去の事実を変えることはできませんが、将来のさらなる損害の拡大に対し手当はできるかもしれませんから。

(おわり)

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August 19, 2009

入口を考えるなら、出口も考える  〜マンション電気高圧受電契約と友情婚〜【松井】

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 ある契約をしようかどうしようかというとき、通常、やはりその「効果」に目を奪われがちです。

 婚姻なら、婚姻したことによりどのような効果が生じるのか。
 法律上互いに「配偶者」という立場になり、法定の権利義務が生じます。
 そのことを望み、当事者は、一つの法律行為として「婚姻」届を提出し、婚姻します。

 また、マンション管理組合であるなら、この「契約」をしたら電気代がこれまで関電に支払っていたよりも毎月数パーセント安くなる、というのであればその「効果」を望み、「契約」します。
 
 もちろん、法律行為をするからには、法律効果を狙うものであり、こういった「効果意思」というものが必須とされています。
 
 この「効果」に対して、どういう「対価」が必要なのか、ということも一般には検討します。

 「婚姻」したことにってどのような「対価」が必要なのか。法律上、配偶者に対していろいろな義務が生じます。
 マンション管理組合でいうなら、各住戸が支払う毎月の電気代が安くなることに対して、いくらその会社に支払うことになるのか。結局、その会社は、高圧電力契約によって関西電力に支払う単価が安くなる電気代と住人からの支払いを受ける「電気代」の差額で儲けになって、それが管理組合がその会社に支払う「対価」となります。

 自分が得られる「効果」と自分が支払うその「効果」に対する「対価」「義務」については、検討します。


 しかし、契約を締結するかどうかというときに、もう一つ、さらに大事なことがあります。
 契約を解消するときに、どのような負担が、手続きが必要となるかの確認です。

 これの検討が本当は一番大事なのではないかと思います。
 なぜって、皆、忘れがちだから。

 しかし、業者は考えています。がっちりと一度その手を握ったら離さない、契約を解消されても自分の方だけは損しないようにうまく契約書に条項をもぐりこませています。
 
 また、「婚姻」についていえば、「婚姻」をするときに二人が別れる日がくるなんてことを想定してその際にどうするかというシミュレーションをする人は、ことの性質上、まず多くはいません。
 なので、「解消」するとき、「離婚」するときのこと、そのときにどういうことが問題となるか、手続きはどのようなものなのかということまで考えて「婚姻」することは少ないと思います。

 でも、入口を見て、入ろうかどうしようか悩むときは、出口も考えておいてください。
 出口からの脱出が困難なことが分かれば、それでもあなたはその「効果」「対価」だけを考えて、契約しますか?ということです。


 マンション管理組合において、他の「電力」会社と契約して、関電との電気供給契約を変更して各住戸の低圧受電の契約から管理組合として一括で高圧受電の契約とし、各住戸への供給の管理をその「電力」会社に委託することによって、結果、各住戸が支払う電気代を安くするかどうかということが検討されていました。
 同種企業が4社ほどあり、各社の担当者からの説明を受けたり、質問状、要請書を出すなどして、「入口」、契約をするかどうかということを検討してきました。
 結果、見送ることとしました。

 なぜか。
 各社一様に、契約期間が10年間だったからです。
 理由は、高圧受電をするには、現在使われている関電の設備を入れ替えて、その業者が用意した受電設備に入れ替える、その設備費用の消却期間が10年だから10年は契約し続けてくれないと困る、というものでした。
 「知るか、そんなこと」、というのが消費者の声でしょう。
 たとえば、業者の対応が思いのほか悪かったとき、あるいは他に安い電気の契約形態が関電から提供されたとき、「出口」、「解除」「解約」を考えます。 
 このとき、スムースにいくのだろうか。解除、解約したら、その業者は、入れた受電設備を撤去します。その費用負担はどうなるのか。業者に責めのある解除を主張しても、スムースに業者がそれを受入れるのか。
 そんなことを考えたら、初めて取引する相手方の業者と、始めからいきなり、10年の長期契約なんてできません。
 せいぜい2年契約で、更新するかどうかです。
 マンション管理会社との契約でも、2年契約で、自動更新条項はアウトとされています。

 にもかかわらず、各社一様に10年間の契約を主張し、結局、一歩も譲られませんでした。
 消費者がする契約で、10年以上の契約なんて住宅ローンくらいです。それも、最初にお金を借りたら、あとは返すだけという単純な内容。
 それをライフラインに関する電気に関して、どのようなトラブルが発生するか分からない未知の要素が多い中で、いきなり10年。
 
 契約は、無事に見送られました。


 「婚姻」でも、同じです。
 婚姻なんかは、期間の定めがありません。
 そんな契約を、会ってからまだ数か月でよく分からない相手と普通は、しません。
 それを「効果」だけに目を奪われ、「出口」を考えずに「入口」から入ってしまうと、あとで後悔することにもなりかねません。
 こちらが別れたいと思っても、相手が嫌だといったときにどうなるのか、どのような手続きが必要なのか。
 また、お互い、別れようということになっても、相手から法外な財産的要求をされた場合、どのように対応せざるをえないのか、どのような手続きが必要なのか。
 
 便宜上の「婚姻」として、「友情婚」と言われるものがあるようですが、よく「出口」を見据えたうえで、理解して納得して、それでも「入口」をくぐるのか、よくよく考える必要があると思います。

(おわり)
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May 19, 2009

契約の相手方【松井】

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 契約書のチェックをしました。
 まだ契約締結交渉段階で、契約するかどうかも未定の契約について、相手方が既に用意して、他の契約で使っている契約書を見せてくれと言いました。用意されているものを見せてもらいました。
 自分の弁護士としての業務上のことではなく、まったくプライベートに関する事柄に関してのものでしたが。


 ゲっ!
 という条項がいっぱい見つかりました。
 他の契約当事者の方々は、この契約書でそのまんまハンコを押しているのだろうと思うと、やっぱり業者対消費者ってなんだかなあと思います。
 業者の権利保証や損害賠償の予約についてはしっかり書いてあるのに対し、消費者側のそれは何も記載されておらず、むしろ権利としてあるものが制限されているのではないかと読める文言もあります。
 たとえば、業者が「契約上の地位」を譲渡するときは、原則、承諾するとか。
 えっ!?という感じです。契約の相手方を選べられへんやん!この会社だからと信頼して契約したのだとしても。なんじゃ、こりゃ?!という感じです。
 
 それなりの規模の会社なので、一応、顧問弁護士さんがいて、契約書のチェックをしているのだろうとは思いますが、顧問弁護士がいる会社であっても、こまめに契約書のチェックまではしてもらっていない会社もあります。また、下手したら、名前だけの「法務部」が法的にはまったく意味不明の文言で契約書を作っていたりします。


 プライベートな事柄で、お仕事モードで弁護士スイッチがオンになるのはなんだか気が引けるけど、住まいに関する事柄であり、金額も大きいので、見過ごすわけにはいきません。
 全部突っ込みを入れて、文言の変更等に応じないようだったら、その時点で私はその会社との契約については反対せざるをえません。
 会社の営業も、何事もよくを出しすぎると、80%の得られたものも0%となり失います。
 このへんの事柄が分かっている事業者かどうか。
 そもそもこっちは何もこの新しい契約を締結しなくっても特に大損するわけでもなく、困りもしないという立場であるということを考慮してもらわないと、いい加減バカにしないでよね、消費者を、という気分になります。


 大きな取引、金額や影響が大きなこと、さらには事業上の事柄についてはなおさら、ちょっとしたことでもこまめに弁護士に相談できるなら相談するようにされた方がいいかと思います。
 用意された契約書を弁護士に見てもらって、リスクを教えてもらう、ということです。
 それが「顧問弁護士」契約。
 あ、宣伝っぽくてなんだかイヤらしいですね。

 でも、本当にそう思います。
 なんでこんな契約書を作成したの?という契約書をもってこられて、トラブルが起こってから相談されると後の祭りに近いこともあります。

 民法の基本姿勢は、契約上の当事者は対等、という大前提があります。それが空想であっても。私人と私人は対等。そんななか、ずる賢い私人のカモにならないよう気をつけてください。
 こういう、相手の無知などに乗じるやり方が好きじゃないので、消費者保護委員会に入っています。
 欲をかいてだませられる方が悪い、とは言い切れないという思いがあるので。

(おわり)
*選ぶ方にも責任がもちろんありますけどね。目の前のものに対し、どれを選ぶのか、選ばないのか。 
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February 23, 2009

「私の履歴書」〜Mの腹黒日記〜【松井】

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*昔、つかこうへいの「腹黒日記」という本があり、中学生のころ愛読し、多大な影響をうけたことを思い出して敢えて「腹黒」と言ってみました。アマゾンで見てみたら、もう売られていないんですね。持っていたあの本はどこにいったんだろう。実家からは知らない間にいろいろなものが消えています。たぶんきっと親が処分したのだろうけど。


 なかなかタイムリーで面白いです。
 今の日経の「私の履歴書」。ドトールコーヒー名誉会長の鳥羽博道さんの「履歴書」。


 2月23日付けのものではこんな一文が。
 
 「契約書は当然取り交わすが、それを盾に争った事はない。問題が起きた時は、損得や契約書の文言ではなく、何が正しいかを考える。こちらに非があれば改め、相手に非があれば改めてもらう。その後に初めて利害を考え『どうすれば相手が成功するか』という観点から、最小の費用で解決する方法を一緒に探る。」

 皆が、これを出来れば、契約を巡っての裁判なんてきっと無用の長物。
 それが出来ない会社が多いので、最高裁まで、弁護士費用云百万、云千万円、年数3年なんてかけて紛争解決をする。笑うのは弁護士か。


 またこんな一文が。
 「ある時、日経新聞と日経ビジネスが『フランチャイズチェーンなのにトラブルが起きたとの話を聞いた事がな無いのは何故か』と取材に来た。トラブルはなくて当たり前と思っていたので、一瞬何を聞かれているか分からなかった。」
 
 「なのに」というのがポイントだと思います。
 「フランチャイズチェーン」「だから」、トラブルがおき、「契約書」「を盾に争」う。

 この一文は鳥羽さん流の嫌みなのでしょうか。なかなかしゃれています。


 「『人の不幸を作らない』という思い」「オーナーの喜びが私の喜び」。
 「『相手の成功』考え解決策探る」。
 交渉ごと、紛争ごとの解決の基本だと思います。

 それを分かっていないと、いきなり頭ごなしの高飛車な、脅し文句を連ねた内容証明郵便を送りつける。ひどいのだと、刑事告訴する、なんて言葉も入れたりして。
 それで余計な紛争が一つあぶくのように沸き上がり、世の中のお金と時間と労力が費消されます。
 戦わないといけないこともあるけど、うまくやれば訴訟は回避できたのにということがほとんどなんだろうと思います。

(おわり)

*「swich」と「法学教室」。たくさん雑誌を定期購読していますがその一つ。同時に届くと微妙な気分です。
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February 21, 2009

商売はやっぱり、共存共栄/三方よし【松井】

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 ここ数日、セブンイレブンに公正取引委員会が立ち入り調査したという報道が新聞紙面を賑わしています。
 
 以前にも二度ほど、セブンイレブンが被告となった訴訟について、興味があり触れていました。
 http://osaka-futaba.cocolog-nifty.com/futaba/2008/07/post_79e3.html

 ついに、「窮鼠猫を噛む」という状態が現実化したということでしょうか。
 訴訟で戦いを挑んでも相手は徹底抗戦。それならば、他に使える手段は!?と。
 今回使われたのは、独占禁止法違反です。


 ここにいたる前に、なぜセブンイレブンは不満に対する火消しをしなかったのか。

 日経新聞の「わたしの履歴書」では、今、フランチャイズ展開をしているドトールの会長さんの連載となっています。
 数日前の記事。
 コーヒーショップ経営の「コンサルタント」をしていた人が、相談者が経営に失敗しても知らん顔で高級車を乗り回している姿を見て、人を泣かすような商売をしては駄目だと思ったといったことが書かれていました。
 ドトールは、フランチャイズ展開をしており、そこで、フランチャイズでコーヒーショップを経営する経営者の人、その人も幸せになってもらいたいといった思いでやっているといったことが書かれていました。
 「会社」といっても、その中身は人です。「会社」が「会社」として頭をもって考え、動くわけではありません、もちろん。会社も人が動かします。
 結局、経営者トップ、経営者の資質の問題なのだろうと思います。


 誰かを泣かせて利益を得ても、いつかどこかでしっぺ返しをくらいます。
 そんな事業の形は、長くは続きません。
 ざまあみろと何人もの人が舌を出しているはず。
 でも、そんな事業が世の中、事欠かない。なぜなんだろう。
 たぶん。
 なぜ、人が人を殺すのか?
 なぜ、人が人のものを盗むのか?
 なぜ、人が人をだますのか?
 といった問いと同じなんだろう、なんて考えます。
 
 公正取引委員会ががんばっても、適確消費者団体ががんばっても、消費者庁が出来ても、なくなりはしない。
 でも、不合理な目に遭って泣く人がちょっとでも減ったら、それは素晴らしいことだと思います。

*こんな本を本屋さんで見つけ、買いました。これから読んでみます。

(おわり)

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February 20, 2009

弁護士さんへ〜50のじぶんへ〜【松井】

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弁護士さんへ

 相続に関する問題を扱うのならば、相続税法をきちんと勉強してください。
 せめて最低限のこと、手続は押さえてください。
 それを踏まえて、合意書を作成してください。
 お願いします。

 迷惑です。
 当事者の方々が被害を被ります。
 
 分からないのならきちんと税理士さんに相談してください。
 税理士さんに相談するときは、相続税法の分かっている税理士さんに相談してください。

 自分のミスの尻ぬぐいを当事者の方にさせないでください。

 あちこちで、すすり泣きが聞こえてきます。
 プロなら、恥を知って下さい。
 バカならバカの自覚を。それがプロの賢さ。

 条文の読み方、知っていますか?
 「できる」というのは、義務ではありません。
 勉強、しようよ。

 ~~~~~~
2/23 改訂 「心はホットに、頭はクール」にということで、改訂。

 数年後の自分への、自戒の意味を込めた一文です。
 厚顔無恥な弁護士、といわれないように。
 弁護過誤を扱う弁護士さんに自分が訴えられたりしていないように。

 アンジェラ・アキの「15のきみへ」とかいう歌がありましたが、
 「50のじぶんへ」としておきます。

(おわり)

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February 19, 2009

分譲マンションと電気〜新しいビジネスモデルと誠実さ〜【松井】

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「kaisekizu.pdf」をダウンロード
 マインドマップで分析してみました。こんな感じか?


 分譲マンションに暮らしています。
 そんな中。

 以前にもこのブログに書いた、分譲マンションと電気の問題が起こりました。
 関電との電気供給契約は、一戸建ての場合と同様、各戸が契約し、低圧契約です。
 ところが、分譲マンションは一個建てと異なり、管理組合が関電と高圧の契約をすることが可能です。
 そこで、分譲マンションとして関電と高圧の契約をするか否かという問題が突きつけられています。

 なんのため?
 各戸が負担する電気代、あるいは管理組合が負担する共用部の電気代を安くすることができるのではないか?という考えからです。
 ただ、何も検討事項なくそうできるのであれば、どのマンションもそうしているはずです。

 何が躊躇させるのか?
 賃貸住宅のオーナーと同様の責任が管理組合にかかってくるからです。
 つまり、電気供給そのものの管理の責任と各戸の検針と請求などです。

 これを管理組合ができるのか?
 また、賃貸住宅のオーナーと違うのは、高圧を低圧にする変電設備については、契約内容を変更すると、関電は、従来、マンションの「電気室」においていた自社の設備を引上げます。そのかわりの設備を入れないといけない、これをどうするのか?です。


 そこで登場するのが、いわゆる新しい電力会社です。
 電力会社といっても、電気を売っているわけではない、というのがポイントです。
 今回、わたしが暮らすマンションでは数社に集会でプレゼンテーションをしてもらいました。
 
 各社は当然、メリットを強調します。曰く、電気代が安くなる、デメリットはありません、万が一我が社が潰れても、電気供給が止まることはありません、事業承継会社が現れます。

 電気供給が止まらないのは当たり前です。
 法律で定められているので、何かがあったら関電が対応します。

 問題なのは、管理組合、区分所有者として、「余計な出費」があるのかどうかです。
 電気代が安くなるといっても、各戸の場合、従前の最大10%です。月1万円だったら、1000円です。
 その1000円は、10年たっても、12万円です。
 12万円のために、たとえば、余計な出費として、また関電に切り替えるための負担費用として、工事費を管理組合に対し、200万円請求されたら?50戸のマンションだったら一戸あたり4万円です。しかも。それが、契約後、3年以内だったら、何のために、新会社との契約を管理組合としてしたのか?ということになります。
 事業承継会社といっても、じゃあ、そこと貴社との契約書はどうなってる?管理組合に新たな負担なしでOKになってるの?
 登場して、まだ数年の新しいビジネスモデルです。
 

 新しいビジネスモデル、スタイルというのは、結局のところ、その債務は何かという観点で分析して、その債務を遂行する能力があるのか、もし債務不履行状態が起こったときにどういう対応がとれるのか、といったことを想定するしかありません。
 破産するんじゃないかという倒産リスクについては、その会社の財務内容はそもそもどの社も上場企業ではないので、監査もなく、粉飾されていたらわかりようがありません。

 双方がいかなる債務を負うのかという点で契約を分析すると、これらの新会社は、マンション管理についての、従前の管理会社と同様、管理組合が自ら出来ない業務を委託するにすぎないということがよく分かります。

 だったらそのように説明して欲しいと思う。
 業務を委託する契約なのに、どの社も定額の料金制ではありません。
 自社がいったいいくらの代金を受領するのかを明確にせずに、住人が、従来のパターンよりも8%得する、管理組合が10%得するといった説明の仕方をしていました。
 我が社は仕事として、これこれこれだけの仕事をする、そのお代は、仕事内容に見合ったこれこれの代金になりますよ、といった形をきちんと示せばいいのに。
 やっぱり信用できない・・・。
 分譲マンションって、いい餌食なんだと思う。
 
 もうすぐ大規模修繕工事の時期。このとき。各社が群がってくる。場合によっては、管理会社もこのときのために手ぐすねひいているとか。
 
 疑心暗鬼、考えすぎ?


 で、わたしはというと。各社が用意している契約書を見せて欲しいと言いました。契約書を見たらその会社の姿勢が分かります。いい加減が、文字通りありとあらゆる手当がされているか。
 営業トークで口だけで、契約書には一切書かれていなくって、あとでトラブルというのがよくあるパターンなので。「大丈夫です!」「迷惑はかけません!」という言葉ほど信用できないものはないので。でも、この言葉だけを信じて、契約してしまう人がなんと多いことか。餌食です。
 でも。
 餌食にされる方が悪いのではなく。餌食にする方が絶対に悪だと思います。
 そういうせこい人間性が大嫌い。恥ずかしくないの?と思います。それが根底。
 だからずっと。大阪弁護士会の消費者保護委員会に入っています。
 儲け話にだまされる消費者が悪いのではなく、騙す業者が悪い、という価値観です。

(おわり) 
 
*美しいものを見て、心を洗わねば。浄化が必要か。
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October 29, 2008

頑張る経営者の方への想い【松井】

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 よくブログで書くように、実家は有限会社でハンコ屋さんをやっています。
 祖父が始め、5人兄弟の長男であった父が二代目となり、兄が三代目となります。

 小さい頃、税務署の職員が調査に来たといって、母が、「凄い、帳簿からこんな小さな数字まで拾っていった。5年遡って払わなあかんらしい。」といったことを口にしながら、店舗兼自宅だった家が騒がしかったことを覚えています。
 取引先の倒産、従業員の同士のトラブル、あるいはお客さんから苦情の対応、さらには借入、その借金の返済などなど、否が応でも目に入り、耳に聞こえていました。母曰く、「うちらのような小さい自営業者は借金があって当たり前、借金があるから返済しないといけないと張りが出て、それでがんばって働こうという気になるのだ。」と。「従業員の人は大切にしないといけない。自分たち家族だけではお店はできないんだから。気は心だ。」といって、何かと渡しものしたり。さらには、「自営業はいいよ。やったらやっただけ金銭で評価を受ける。会社の従業員だったら、どれだけがんばっても決まった給与額しかもらえない。自営業の方がやりがいがある。」と母曰く。
 借金の話は、子ども心に「ほんまかいな。借金なんてないほうがいいに決まってるんちゃうん。」と懐疑的だったことを思い出します。


 朝早くから、夜は遅くまで、母は、外回りの営業、配達、ショッピングセンターに出店した店舗の店番の交代、家に帰って来てからは家事に、さらにはまたゴム印の柄付け、帳簿作成といった仕事をしていました。
 父はというと、こちらはまさに職人で、朝から夕方まで、「本店」と言われた店舗兼住宅の店舗部分で、黙々とハンコを彫っていました。で、夜になると「会合」といって飲み歩いていた記憶があります。行った先の雀荘に、母に言われて、電話を架けさせられたりした記憶もあります。そして休みの日には、ひたすらゴルフ。夜も、打ちっぱなし場へ出かける日々。
 まさに、典型的な家族経営の会社。夫は仕事と遊びに精を出し、妻はひたすら働く、といったところでしょうか。


 たぶん、意識していなくても、小さいころ、親のこうした働きぶりを見ていたせいか、自分で仕事をもって奮闘している人、自営業者、中小の会社の経営者の方にお会いすると、「頑張って欲しい、成功して欲しい」という思いが募ります。
 しがない弁護士、町医者ならぬ町弁ですが、何かお役にたてることがあれば最大限のことをしたい、サポートしたいという想いが募ります。
 経営が順調になるまでには、売掛金の回収や、事務所、店舗の賃貸契約のトラブル、あるいは従業員との雇用契約上のトラブル、あるいは顧客とのトラブルといったいろいろなトラブルの発生が考えられます。
 
 法的な知識と作るべき契約書等があれば、たとえトラブルが発生したとしても、紛争の拡大を抑えることができることが多いかと思います。
 ルーティンなところは事前に整備し、マニュアル、書式などを用意し、経営者が経営者として本来、注力しないといいけないところに注力できる環境を作り、本来の事業で安定した成功を収めてほしいと、がんばっている方々をみると思います。


 実家でも、先日、いつも割り引いてもらっていた手形の割引を金融機関に断られた、当てにしていたのにどうしたもんか、という相談がありました。
 支払を手形で受け取るということはどういうリスクがあるのか、手形の流通の現状はどんなもんか、新たな取引先と取引する際の注意点などを母に説明しました。
 母がどこまで分かっているかは分かりません。
 兄がどこまで分かっているかも分かりません。
 うちの実家の会社には、顧問の会計事務所はありますが、顧問の弁護士なんて頼んでいません。

 たぶん多くの自営業者、中小企業は、そうだと思います。
 何かトラブルがあったときに、弁護士に相談しようなんて発想はないんだろなと。
 相談した知り合いから、弁護士を紹介され、弁護士に相談するという選択肢があるという機会がない限り。
 多くは税理士さんに相談し、税理士さんからアドバイスを受けているのだと思います。法的な事柄についても。
 それでうまくいっているならそれでOKだと思います。
 税理士さんに顧問料を支払い、さらには月に1件相談があるかないか分からない弁護士と顧問契約をして顧問料を払うことはないかと思います。


 ただ、自営業者の方や、中小企業の経営者の方などに知っておいてもらいたいのは、経営上のトラブルについて、税理士さんだけではなく、ぜひ、どこかで探すなり、つてを頼るなりして、弁護士に相談して欲しい、その価値はあるということです。
 税理士さんの視点、知識、情報と、弁護士の視点、知識、情報は当然のことながら、レベルというか種類が全く違います。良い、悪いではなくて、単に違います。
 弁護士は、税法の通達なんて知りません。チェックしたりしません。
 税理士さんは、会社法、民法は知っていたとしても、訴訟の場合の裁判官の考え方、立証責任、要件事実について、たぶん知りません。チェックしたりしません。
 そういうことです。
 
 いろいろご縁があって、顧問契約といったことこそしていないものの、何かあると気軽に電話をしてきてれくて相談してくれる経営者の方がいます。もちろん仕事なので無報酬ではありませんが、相談ごと、時間制のフィーを請求させてもらっています。
 頼られると、頑張って応援したくなる。
 そんなものかと思います。
 顧問をつとめさせてもらっている会社では、新しい分野で、法整備、法解釈もままならず、関係省庁に一緒に出向いたりして、まさに一緒に道を切り開いているといったところもあります。そこの会社とのご縁は、私が弁護士1年目のとき、交通事故事件を担当し、その事故車を修理した修理工さんとして出会ったというものでした。その方が数年後、会社を興し、こういう事業をするのだけど力を貸して欲しいと請われ、以前助けてもらったご恩とご縁もあり、では今度は私の番かと、その会社の方々の事業への想いにも共感し、私自身も試行錯誤で活動させてもらっています。
 頑張られている姿を見るから、私も自分が出来ることを頑張ろう、役に立とう思います。

 頑張って欲しいです。
 山あり谷ありで、次から次へといろいろな難題がふりかかってきますが、頑張っている方の成功を目にするまでは応援していきたい、支援していきたいと思っています。
 真面目に、創意工夫をもって地道に商売をしていれば、得難いチャンスも入ってきます。
 それをぜひものにしてください。
 過去のトラブルは笑い話になるほどに成功してもらいたいと思います。

 カナディアン・メープルシロップ、買います! Oさん、頑張ってください!
 べトナムと日本との架け橋、頑張ってください、A社の皆さん!

 ほかにも、自ら奮闘、頑張っている方々、頑張ってください! 
 応援しています!!
 紛争解決、紛争予防に勤め、その方々が本来、注力すべき事柄に注力できるように。
 それが弁護士の使命の一つではないかと思っています。
(おわり)

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October 23, 2008

渉外相続の実務に関する研修会【松井】

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 先日、日本連合会主催の「渉外相続に関する実務に関する研修会」13時30分〜17時00に参加しました。
 自分用のメモがてら、ブログにアップしておきます。
 
 第1部 韓国渉外相続の実務 近似の実務上の留意点について
     〜近似の韓国家族法の改正点ほか〜 
     裵 薫 弁護士(大阪)
 第2部 外国人の遺言
     〜外国人遺言作成上の実務上のノウハウ〜
     本間 佳子 弁護士(東京)


 相続事件を多く扱うなかで、被相続人が韓国籍の方の事件をいくつか担当させていただいてきました。
 準拠法が韓国法となるため、それなりに韓国の相続法の事柄は、比較的資料、文献が入手しやすいこともあり、分かっているつもりではいました。

 が、やはり。フォローしきれていませんでした。知らなかった事柄がいくつかありました。

 常時フォローしているわけではない案件を新しく担当する際は、念のためにと常に最新情報をチェックする必要があります。
 ここ数年で怖いのは、出版物でのフォローでは間に合わないことがあるということです。
 出版社による出版物はそれなりに編集作業がほどこされているので情報の精度は信頼できるのですが、スピードがネットに遅れることがあります。
 弁護士も、まずはネットで検索する必要があります。そして文献でチェック。また人のネットワークも重要です。経験者の方に教えてもらうのは早いし確実です。
 ネットの検索は、当然、開設者によって掲載情報の信頼性がまったく異なるのでこの点が注意ですけど。


 「外国人の遺言」は、上記のとおり、被相続人が韓国籍の方のものについては比較的なじみがあるのですが、それ以外の国の方のものについては、アメリカといった何となくポピュラーな国籍の方のものであっても、経験している弁護士はなかなか少ないのではないかと思います。
 私自身も数えるほどしかありません。
 
 今回の講演の本間佳子弁護士も、アメリカ国籍の方のものは10件程度だと仰っていました。
 
 その際のポイントとしてレジュメで挙げておられたことをメモしておきます。
 
 外国人の遺言作成上知っておきたいこと
  ⑴ 遺言の方式
  ⑵ 遺言の成立と効果
  ⑶ 遺言の内容
  ⑷ 遺言執行者の指定と権限
  ⑸ 外国法に基づく他の遺言との関係
 その他の留意点
  ⑴ 相続税
  ⑵ 遺言執行時の問題(相続人の確定、検認など)

 約90分の講演でのお話は、私にとっては一応、確認作業になり、安堵するものでした。


 講師の弁護士が何度も強調されていたのは、ニーズはあるのだということでした。  
 また、最後に仰ったのは、日本での外国人の遺言作成についてはニーズがあり、しかもやりがいがあるということでした。

 遺言を作成しようとする外国人、アメリカ国籍の方の多くの意識としては、自分の死後、遺された配偶者や家族の方を守るという意識で行動されていることが多く、そのことに弁護士としてサポートし、サポートをしていくなかで信頼をうけるといった点、仕事としてもやりがいを感じると仰っていました。
 講演を聞きながら、1人激しく共感していました。

 日本国籍の方が普通に日本で遺言を作成しようとする場合、確かに、子ども達が紛争にならないように、あるいはこの子には多くを相続させようといった意味で、相続人を守ろうという意識が確かにあります。

 ただ、たまたま今、日本で暮らしているという外国籍の方の場合、もっと切実な思いがあるように思います。
 本間弁護士が仰っていたのは、自身も、アメリカで暮らしたり、立法支援活動としてカンボジアで2年ほど暮らしたことがあるが、言葉に不自由しなかったとしてもやはり異国の地では何かと不安で、心細い思いは常にある、だからこそ、日本で暮らしている外国人が日本で遺言を作っておこうという気持ちは、よく分かる、それは自分の死後、自分の家族に対し出来る限りのことをして守りたいという意識が余計に働くのだろう、ということでした。
 そのとおりだと思います。
 弁護士として不慣れな点はあるかもしれないが、それでも訪ねてもらった以上、弁護士として出来る限りのことをしてサポートしたい、愛する家族を守りたいという思いに応えたいという意識に突き動かされるのだと思います。
 自分が外国で暮らしていたら、同じような思いになるだろうなと思います。そんなときやはり力を貸してくれる、信頼できるプロフェッショナルが欲しい。

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 ただ、アメリカでは、Estate Planning の一環として遺言を作り、さらには信託制度が発展しているので、財産の一部に信託(Trust)を設定することにより、相続税対策が可能という面もあるようです、遺言が利用される理由の一つとして。

 数年前、相続特集で、日本テレビの「思いッきりテレビ」に出演させていただいたとき、ゲストだったダニエル・カールさんが仰っていました。毎年、遺言を作っていると。遺言を作成するというのは、ごく普通のことだったと。そんなもんかと聞いていたのですが、たぶんそうなのでしょう。
 ネットサーフィンをしていると、西海岸にEstate Planning 専門の弁護士のサイトもありました。
 
 ただ、これも以前、アメリカの信託制度に詳しい元金融マンで、現在教授をされている方とお話をしていたときに聞いたのでは、アメリカでは、信託制度といっても個々に非常に詳しい内容の契約を交わしているので、信託制度が発展しているというよりも、契約文化が発展しているのであるといったことでした。

 日本の信託法は、最近、事業承継などとからんで改正、注目されてはいますが、税務上は、やはり信託制度の利用による課税逃れといったことがらはなかなか出来ないような仕組みになっているようで、今後、信託法としてどうこうというよりも、おそらく、ニーズに対応した契約内容、超超超具体的な内容の、ごっつい、分厚い信託契約書を作成するくらいでないとなかなか相続関連については信託制度は使えないのかなという気もしています。
 

 講師の弁護士は、アメリカ留学もされておりニューヨーク州の弁護士資格も持っておられて、英語には不自由しない弁護士のようでしたので、その点、非常に羨ましく思いました。
 以前、ニューヨーク州法の相続関連の内容を調べようとしたのですがうまく文献にたどり着けず、同じくニューヨーク州の弁護士資格をお持ちの大阪の弁護士にお世話になりました。
 ああ。
 せめて読みに不自由しない程度に英語の勉強をしたいと思います。

(おわり)
 
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October 10, 2008

連帯保証をするという意思表示と信義則と裁判【松井】


 数年前から、ぼんやりと連帯保証という制度について考えている。
 いったいこの制度はなんなのだろうか、と。
 いったい今の使われ方、裁判所の裁判の判断の仕方はなんなのだろうか、と。


 一見無関係だけどひっかかった文。
 「淵源の如何を問わず、法的義務の創造と履行を規律する基本原則の一つは、信義誠実の原則(principle of good faith)である。信用と信頼は国際協力に固有のものであり、特に多くの分野における協力が不可欠になっている時代においてはそうである。まさに条約法における『合意は守られなければならない(pacta sunt servanda)』というルール自体が信義誠実に基礎をおいているのと同様、一方的宣言によって負うこととなる国際義務の拘束的性質もそれに基礎をおいている。」(中谷和弘、160頁「法学教室 No.331」(有斐閣、2008年))。
 これは、国際司法裁判所(ICJ)の判決文の一文(ICJ Reports 1974, pp268,473.)だそうです。

 法的義務を創造する個人と個人との契約においても、信義誠実の原則が「合意は守られなければならない」というルールの基本だと思います。
 民法では、第1条2項において、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」という条項が定められています。
 ここで確かに、信義則という言葉が使われていますが、どういう意味に読めるかというと、権利や義務が発生していることを前提に、その行為あるいは履行において、信義誠実の原則が働くという風に読めます。
 権利義務の発生原因としての信義誠実の原則ではない?分かりません。


 それはさておいて、当事者を拘束するの「合意は守られなければならない」というルールの基礎が信義誠実だとすると、いったん意思表明して合意に達したことは「守れ」と命令されるのであるなら、当然、その意思表明の内容はその効果を理解してなされたものである必要があるし、効果は理解していたけどその意思の作出過程においてキズ(瑕疵)があるのであれば、その意思には拘束されないという考え方が出てきます。
 これについては、民法は、93条以下で「意思表示」として一定の保護をはかっています。
 そうです。一定の保護であって、絶対的な保護ではありません。
 なぜか?
 対立利益があるからです。
 意思表示をした人の意思表示になんら問題はない外形的に判断し、信頼して取引関係に入った、相手方の利益です。
 意思なんて内心です。見えません。なので、外形を信頼した相手方を保護すべきという要請が働きます。
 この両者の利害を調整しているのが93条以下の条文です。
 意思表示の相手方の「不測の損害」を防止するといった表現が利用されたりします。


 一方。
 当事者間で権利義務に関する紛争が発生した場合、解決のため、裁判制度が利用されます。
 シロクロ付けるというものです。
 ここでは、民事訴訟法という法律が、裁判の「手続」について定めます。
 そもそも意思表示があったのか、なかったのか。
 裁判官はいかなる場合に、その問題となっている事実があったと認定できるのか。
 「被告の方が悪人顔だし、法廷での供述もごにょごにょとしてうさんくさいので原告の言い分を事実と認めました。」
 なんてことを裁判官がやっていたら、誰も裁判所の判断なんて信用しません。
 権威失墜。
 事実の「立証」というものが求められます。
 「立証」できなかった事実は、残念ながら、真実としてはこの世に存在したとしても、裁判手続きの中では存在しないものとして扱われます。そのことによって不利益を負うものが負担する責任。それが「立証責任。」
 立証できなかったら、負けです。
 
 立証は何を持ってするのか。
 そうです。「証拠」です。
 言った、言わないが争いとなっているときに、一方の言い分が信用性が高い、証拠価値が高いと判断するとしてもその根拠はなんでしょうか。
 お互い、口だけの場合、それはいわざ引き分け、つまりは証拠はないに等しいものとして、事実はなかったものとされてしまいがちです。もちろん事案によっては、当事者の供述あるいは第三者の証言だけで事実認定されることもあるでしょうが。
 そこで、ものを言うのが、物証です。書類です。文書です。
 なぜ一般的に証拠としての価値が、人よりも物の方が高いのか。
 変容せずに、その時点のそのものとして固定されているからです。
 逆に言えば、「人」は、つまりのその「記憶」に価値がある、しかし人間の記憶なんてむちゃくちゃいい加減です。こんなに嬉しい出来事、一生に一度のこと、二度と忘れることはないと思っていたことすら、2年、3年も経てば、びっくりするくらいに忘れています。忘れているだけならまだしも、偽の記憶を自ら作り出し、心底、それが事実であったと信じていることすらあります。
 人間の記憶はいい加減。
 だから。
 証拠としての価値は、人よりも物にあるとされています。


 では、物の価値をどのように評価するのか。
 民事訴訟法は定めています。

 228条1項 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
     4項 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
 
 まず、文書の証拠価値を認める前提として、その文書が名義人によって作成されたものであることを証明する必要があるとされていますでもその証明は、その文書に「本人」の「署名」又は「押印」があれば、真正に成立したものと「推定」されます。
 「推定」とは、「みなす」とは異なり、覆すことも認められます。でもその責任は覆そうとする方が負いますよという定め方です。
 つまり、例えば、貸金返還の請求を行う原告は、「消費貸借契約書」という文書を証拠として提出します。
 そこには、借主として被告の名が署名され、押印されています。金1000万円を借りました。返済期日は平成20年9月30日です。利息は5%です、といった具合です。
 これを証拠として提出する意味は何か。
 もちろん請求を理由あるものとして認めてもらうためのものです。
 つまり、貸した金を返せというためには、当事者間においてまずもって金銭授受、さらには使っていいよ、でも一定のときに返してねという約束があったのか否かということが問題になります(ちなみに、こういった事柄を要件事実といいます。)。
 で、争う被告に対し、原告は、この契約書を証拠として提出して、被告は、平成20年9月30日に1000万円を返すという意思表示をしていました、原告との間で約束していました、というわけです。
 
 ただ、これに対して、被告は、いやいやそんな契約書にサインをした覚えはない、筆跡も違う、印鑑もそんな印影のものはもっていないといって争います。これを文書の「成立が真正であること」を争うといいます。
 それに対して、原告は、何をいっている、よく見てごらん、これはあなたの筆跡であり、あなたが「署名」したものでしょ、とやり、被告がそれをしぶしぶ認めたりすると、「私文書は」「真正に成立したものと推定」されます。
 まだ推定なのは、確かに、私が署名したものだとしても、金銭消費貸借契約書とは知らなかった、私が署名したときにはそんな文言はななかったといって、その証拠として提出された文書そのもの成立を争いうる余地があることもあるからです。ここでいきなり「みなす」とはしていないのはそういう趣旨だと。
 

 と。
 民事訴訟法でも明記されているのはここまでのはずです。
 
 じゃあ、次に裁判官はどう考えるか。
 文書全体をみても、後から書き足したような痕跡は認められない。
 最初から「金銭消費貸借契約書」という大きなタイトルが一枚目にあったのだろう、しかも被告が署名している欄には、肩書きとして「借主」としっかりと大きく明記されている。
 そこに被告は、自ら署名をしている。
 ということは、この文書の内容に目をとおして、理解して、署名したということだろう。
 それ以外の可能性を考えることは困難である。
 だったら、当時、「借りたものを返す」という被告の意思表示はあったということだろう。
 なぜなら、被告はこの「金銭消費貸借書」に署名し、この文書の内容を理解して原告に手渡しているだから。

 原告の主張に理由あり。
 被告は、原告に対し、金1000万円を払いなさい、という判決が出ます。


 では。
 これが、連帯保証契約の場合はどうだろう。
 またいわゆる被担保債権が、分かりやすい金銭消費貸借の場合と、複雑な精算責任のような場合ではどうだろう。
 
 主債務者に頼まれて、「連帯保証契約書」というものの「連帯保証人欄」に署名押印してしまうような人が、本当に、自己が負担する法的義務の内容を分かっているのだろうか。効果を受入れているのだろうか。
 被担保債権の発生原因が例えば、それ自体からよく分かりにくい複雑な契約の場合、どうなのだろう。自分がいったい、いつ、どんなときに、どれほどの債務を負担するということを理解して、受入れているのだろうか。
 
 信義誠実の原則のもと、「契約は守られなければならない」として法的な拘束を受けるに値する、意思表示を行ったと評価できるのだろうか。
 「連帯保証契約書」という書類に署名押印しただけで。
 
 思うに、この場合、意思表示の内容、その存在の探求は、金銭を借りたにすぎない人の場合とは異なってしかるべきじゃないだろうかという気がします。
 刑法における犯罪の成立要件、故意についても、未必の故意といった類型があります。故意はあるかないかといわれればあるけど、でも中身は薄いといったイメージです。
 
 意思表示においてもそうであるべきではないかと。
 特に、連帯保証債務については。だって、連帯保証契約書に署名押印する「連帯保証人」の私が知る多くの人々は、本当のその意味、法律効果を理解していないことが多いから。
 でも、裁判で争っても、契約書に署名をしていたら、裁判での勝ち目はかなり低くくなります。というか、実務上は、よっぽどの事情がない限り、勝つことはないかと思います。
 だって。
 裁判所では、裁判官が言います。裁判官の心の声(想像)。
 「この書面を見て、あなた、自分で署名押印したんでしょ。『連帯保証人になってくれ』と言われて署名したんでしょ。意味を分かっていなかったなんて、あなた未成年者なの?いい年した大人でしょ。」


 これは一方で契約の相手方の信頼を保護したものといえるかと思います。契約書に署名までもらいながら、あとから否定されるなら何を証拠としてとっておいたらいいのかとまどいます。
 不測の損害の防止です。

 ただ。
 どうなんでしょう。
 私が知る、問題となっているような事例の場合、相手方を保護する要請がそれほど働くものなのか。そもそも、上記のように、債権者の方が連帯保証人と事前によく協議して説明して、署名押印をもらっていれば普通は、連帯保証人も納得がいって、それほどもめないはずです。
 しかし、債権者は、要は連帯保証人候補者に対し、リスクの説明をリアルにすればするほど、連帯保証人になる人はいなくなります。誰だってそんなのは嫌です。なぜ他人の不手際の後始末をしなきゃならないのか。保証料をもらっていれば別ですけど。普通の個人は、経済合理性は何一つないけど、家族が金を借りるから、あるいは家族に求められるから、連帯保証契約書に署名押印するのです。なぜか。人間関係を形に取られているわけです。
 そこで主債務者の人も言います、書類に署名をもらうとき。「大丈夫。絶対に迷惑はかけないから。」
 むなしい言葉です。
 
 債権者は、主債務者が払ってくれなくなったときのために、別のポケットに手をつっこんで金を回収しようと連帯保証人をとるのです。
 債権者は、連帯保証人を連れてこないと、金は貸せないと主債務者に言います。
 そして、連帯保証人になってくれと言われた親族は、最悪、主債務者がもってきた書類に署名、押印するのです。
 債権者は、これを受け取って終わり。
 連帯保証人に、そのリスク等の詳しい説明をしません。

 でも、それでいいのか。
 債権者は、通常、強い立場です。署名しないなら、金を貸さない、業務の提供をしない等など。
 一方、連帯保証人は、特に、債務者の業務と何ら関係のない、普通に別の仕事をして普通に日常生活を送っている普通の人であることが多いです。いわゆる消費者です。言われて、うんうんと署名押印していることが多いです。
 
 消費者契約法は次のように定めています。
 1条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について・・・」
 
 そうです。消費者と事業者との間には、「情報の質及び量並びに交渉力の格差」があることが法定されています。
 
 連帯保証契約の効果を知らなかった被告、契約書をよく読まなかった被告、書類に署名した被告が、一方的に悪くて、この消費者との対比で、業者の債権者の方を不測の損害から守るべきだと言えるのでしょうか。
 むしろ、このような契約の場合、医師の説明義務などと同様、債権者は、連帯保証人になろうとする者に対して、それが効果を理解しての真意に基づくものといえるのか否か、契約締結に際して、情報提供義務があるのではないかとすら考えます。
 
 契約書に署名押印しているから、連帯保証責任ありとする裁判実務については、どうしても違和感を拭いきれません。
 実態にあっていない。
 
 それをどう裁判官に理解してもらうのか。
 それが、訴訟代理人の腕の見せ所なんでしょう。
 
 
 うーん。文書の成立の真正を認めるのはともかく、その文書の中身の意思表示をしたとするところに飛躍があるのか。
 利益衡量として、相手方の保護の必要性は低いということ、不測の損害を負うわけではないことをいいつつ、理屈としては、証拠の証拠力の問題か。となると、他の周辺事実をどう立証するのか。証拠力を低減させる事実とその証拠。
 
 最高裁、規範を定立すべきときじゃないかと思うけど。立法で確かに一部、規制されたけど。
 いいんだろうか、連帯保証債務の発生原因のところを野放しにしていて。
 うーん。

(おわり)
 
 
  
 
 
 

 

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July 07, 2008

戦う契約書〜結局、紛争拡大?〜【松井】

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 7月5日付けの日経新聞で。
 「加盟店の商品仕入れ代」「セブンイレブンに報告義務」との見出し発見。
 最高裁HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=36582&hanreiKbn=01


 セブンイレブンとそのフランチャイズ契約のオーナーとの関係と言えばこの裁判例を思い出します。
 http://osaka-futaba.cocolog-nifty.com/futaba/2007/06/post_786a.html
 やはり高裁判決を最高裁が覆し、差戻したものです。ただ、この差戻審では確か、オーナーが負けたと記憶。錯誤があったとはされなかったと記憶しています。

3 
 で、今回。
 またしても、セブンイレブンとフランチャイズ契約のオーナーとの訴訟で、高裁判決を最高裁が覆し、差戻す。
 いったいこんな訴訟がいくつ係属しているんだろうと疑問に思う。
 オーナー側からの要請、要求に対しては、セブンイレブンは基本的に徹底抗戦しているんだろうか?という疑問も出てくる。
 で、最高裁まで争い、最高裁で負けて、事実審理のために高裁に差戻される。
 最高裁でオーナー側の言い分にも一理ありといった判断がされている以上、そもそもオーナー側の要求も全く理不尽ではなかったということだろう。結果論かもしれないけど。
 最高裁、差戻し審と争い続けるまえに、どこかで歩み寄りの余地はないのだろうかと思う。
 解釈論等を巡って最高裁まで徹底抗戦して、挙げ句の果てという例を思い浮かべるのは、やはりNOVA。
 どこかで折り合えれば、破産の憂き目も避けられたかもしれないと思う。
 

 今回の最高裁の判断。
 「コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンの運営者は加盟店に代わって支払った商品仕入代金の具体的な支払い内容に着いて加盟店に報告すべき
義務を負うとされた事例」として最高裁HPでは紹介されています。
 判断手法としては。
 契約関係の分析→準委任契約(民法656条、645条)
 「本件基本契約の合理的解釈」「本件特性があるために被上告人は本件報告をする義務を免れないものと解するのが相当である。」
  ↓
 必要性&許容性
 必要性/「商品の仕入れは、加盟店の経営の根幹をなすもの」「加盟店経営者は、被上告人とは独立の事業者であって、自らが支払い義務を負う仕入先に対する代金の支払いを被上告人に委託している」「仕入代金の支払についてその具体的な異様を知りたいと考えるのは当然のことというべきである。」
 許容性/「加盟店経営者に報告することに大きな困難があるとも考えられない。」「通常の準委任と比較して被上告人にとって不利益であり、被上告人の加盟店経営者に対する一方的な援助のようにも見えるが」オープンアカウンにより決済されることによある結果
 →オープンアカウントによる決済方法/被上告人にも数々のメリットがある。


 立場の強弱で、ブラックボックスをつくっることは、そこで契約当事者に不信感をもたらすだけ。
 こっそり儲けようと言うビジネスモデルは成り立たないということだろう。
 最高裁からの警鐘だろう。
 説明義務を果たしてなんぼ。
 公正、透明。
 
 「当然の要求」か否かを慮り、可能な限りそれに応える努力。企業の姿勢。
 もちろん「不当な要求」に応じる必要はないけど。
 何が「当然」で何が「不当」なのか。ここの選別に力を入れ、「当然」に対しては、可能なかぎり応えるというところに企業としての資金、エネルギーを注いだ方が、最高裁まで争って、差戻審なんて年月、弁護士費用と企業イメージの悪化を回避できるんではないだろうか。
 
 株主代表訴訟をおそれてなんでもかんでも裁判所の判断に委ねるということだろうか?それもまた情けない話。きちんと検討して、理屈が立てばokなだけ。
 検討もせず、自己の判断を放棄して裁判所にその判断を委ねること、それで無駄な弁護士費用に年月、企業イメージの悪化をもたらすこと、それもまた注意義務を怠り会社に損害を与えたものとして、株主代表訴訟に値するのではないだろうか。
 だって、自ら決断しないということだから。

(おわり)

なんでもかんでも戦えばいいというわけでは当然なく。戦わないのが一番いいに決まってる。いかに戦わずして勝負を決するかに力を入れた方が効率的。
     
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May 21, 2008

電気室、再び〜分譲マンションの電気代〜【松井】

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 いわゆる電力自由化によって、電気供給契約において、関西電力、東京電力といった既存の電力会社以外の会社が関与できるようになっているようです。
 このような状況の中、新しい会社がどういった契約システムで営業をしているのか知る機会がありました。


 例えば、私が知っているのは次のような事例。

 分譲マンションの管理組合に対して営業をかける。
 セールスポイントはというと、今、各戸が関西電力に支払っている電力が最大10%お得になりますよ。
 そのシステムはというと。
 分譲マンションには、6000Vの電気を一般家庭でつかえる100Vに変換する変電設備が必ずどこかにあります。
 いわゆる「電力会社の借室問題」というのは、この変電設備が関電の所有する設備であるにも関わらず、消費者であるマンション所有者らがその敷地、空間を関電に提供して、電気の供給を受けている、しかも提供は無償であるという点です。
 何がおかしいのか。
 一戸建て住宅と比較した場合、マンション所有者らが同じ一般消費者であり低圧電力での契約をしているという点で同じである。一戸建て住宅の場合は、この高圧を低圧にする関電の変電設備は電柱にとりつけてあって、一戸建て所有者である消費者は電気の供給を受けるにあたって特別な負担はありません。ところが、マンション所有者らの場合は、上記のように無償で敷地、空間を関電の設備のために提供させられているという点で、余計な負担を負わせられているということです。
 新築の分譲マンションにおいては、工事段階で、デベロッパーと関電とで、変電設備のための空間を無償で提供するという合意書が取り交わされていたりするようです。
  
 このような状況において、新しい会社は分譲マンションの管理組合に営業をかけるわけです。
 つまり、各戸は、低圧電力での契約をしているところ、事業者用の高圧電力での契約に変更させるわけです。
 事業者向けの高圧電力で関電と契約すれば、単価が安くなるので、マンション各戸あたりの電気代も当然に安くなるのです。
 ただ、この場合、管理責任者を用意したりしないといけないという、一般家庭の低圧電力での契約とは異なる負担が生じます。
 この点を、新しい会社が、関電に代わって、管理組合、各住戸に代わって提供しようというのです。
 電気料金の差額のところで、利益を得るわけです。

 ただ、このようにシステムを変更するには、関電の設備である既存の変電設備を撤去して、新たに変電設備を設置しないといけないようです。関電の設備をそのまま譲り受けるといったことは出来ないようです。
 すると、この新たな変電設備は誰のものなのか。
 管理組合が購入するのか?
 それでは新たな設備投資を管理組合が負担することとなり、参入障壁は高いものとなります。

 この新たな変電設備は、新しい会社が投入するわけです。それが、自社所有なのか、リースなのかはともかくとして(たぶん、リース)。
  
 このような状況から、新しい会社と管理組合との間の契約スタイルが導かれます。
 すなわち、 
   契約期間は、10年!
 長っ。

 新しい会社は、この長期にわたる契約期間でもって管理組合を拘束することにより、設備投資の費用を回収するシステムです。
 変電設備がいくらのものかまでは、まだ分かりませんが、10年をもって回収せざるを得ないような金額ということでしょうか。
 あるいは、ただ単に、長期拘束して儲けを確保しようとしているだけなのか。だとしたら、欲がすぎるかと。

 すると、管理組合が検討しないといけないことは明らかです。

 この新しい会社は、10年間、潰れないのかどうか。
 仮にもし、契約期間中に事業廃止、倒産等に至った場合、管理組合には最悪、どれだけの出費が発生せざるを得ないのか。
  
 新しい会社が破産した場合、その会社所有の変電設備であれば、マンション管理組合に買い取るように打診があるでしょう。価値があるにもかかわらず、管理組合が買い取らないのであれば撤去して売却します。あるいはリースであっても、同じです。
 撤去される可能性があります。

 電力の供給自体は関西電力に法的な義務が有る以上、マンションの各戸は新たに元通りに関西電力と契約すればいいだけでしょう。
 ただ、変電設備について、新たに関西電力が無料で設置してくれるのでしょうか。そんなわけはないかと思います。
 だとすれば、いずれにしても最悪、管理組合、マンション住人らは、新たに変電設備を設置しないといけない、その費用負担のリスクが発生するのです。
 これがいくらなのかというのがリスク計算の大事なところだとは思います。

 常に最悪の事態に備える。

 新しい会社が、例えば、自社が倒産あるいは事業撤退した場合、承継企業がこの費用負担をしますといっていても、そんな言葉に承継企業が拘束される法的根拠は、当然、ありません。
 パンフレットの謳い文句を無防備に信じる人々がほとんどかと思いますが、常に疑ってかかってください。
  
 常に疑ってかかることが、消費者被害を防ぐ術、自身を守る術となります。

 この会社は10年の長期契約を求めてきているけど、10年経づして潰れたらどうなるのか。
 まず、潰れる可能性はどうなのかの確認。
 潰れる可能性としては、信用できないものである可能性も高いけど、まずは財務状況を確認する必要があります。
  
 営業をかけてきた会社に対して、過去数年の財務諸表の提出を要求してください。
 そしてのその財務諸表を信頼できる人、財務諸表を読み解く能力のある専門家に見せて、意見を聞いてみてください。
  
 そもそも財務諸表を出せないという会社は、その時点で、見せられない会社の資産状況なんだと判断すべきでしょう。 
 つまり、10年の契約を結んでも、10年もたない可能性が高いといえる。低いとする根拠は何もない、ということです。

3 
 分譲マンションにお住まいの方々。
 疑い深く、最悪の状態を考えてください。

 例えば、連帯保証債務を請求された方は皆さん、こういいます。
 「絶対、迷惑はかけないといわれたから、契約書にサインしたのに。」
 
 人の言葉ではなく、法律と数字をチェックしてください。ウラをとってください。
 利益に比して、それはハイ・リスクなのか、ロー・リスクなのか。
 日常のベースとなる住居に関する事柄については、ハイ・リスク、ハイ・リターンの商品を買う必要はないとわたしは思います。

 
(おわり)

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November 22, 2007

仁義なき自由との戦い。子会社株式って、やっぱりリスキー?

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 11月21日の日経夕刊、「目からウロコの投資塾」(編集委員 前田昌孝)を見ると、見出しが「子会社投資のリスク」となっていた。
 上場子会社の株式を親会社が買い戻して上場廃止になるケースについて、「上場→上場廃止」の期間があまりに短期間のケースがあり、この点、疑問を呈しています。
 米投資ファンド、ペリー・キャピタルのアジア地域投資責任者、アルプ・アーシル氏の言葉を紹介しています。
 「上場子会社の少数株主の利益を守る仕組みが不十分な日本の現状は問題が多く、早急に改める必要がある。」
 そして最後、次のように締めくくっています。
 「上場子会社の経営陣は親会社から派遣されるケースが多いですし、重要な意思決定にも関与できないとなると、少数株主が持つ子会社株は無議決権株と言ってもいいくらいです。」


 記事を読んでいて、やはりスズケン対小林製薬の紛争を思い出しました。
 コバショウは上場会社ではありませんでしたが、子会社の株式を取得することの問題点・リスクが浮き彫りになっている事案だと思います。
 まさに「少数株主が持つ子会社株は無議決権株」といえます。

 親会社の小林製薬がその持つ株式を全部、他の会社に譲渡すると意思決定したら、少数株主に過ぎないスズケンはなすすべもないのか否か。資本提携契約の際の内容如何という面はあるにしても。
 ただ、これは上場企業が上場廃止になるというデメリットとはまた異なる意味合いがあるものではあります。

 株式はそもそもが譲渡自由であり、投下資本を回収する必要性があるときに譲渡によって回収するというのはある意味、企業にとっては当然の判断とも言えます。
 なので、大株主と少数株主の間で、株式の譲渡をめぐって利害調整の必要性はそもそもないという見方もあるかとは思います。数の論理で、そもそも少数派なんだから仕方ないじゃん、少数派のためになぜ多数派の利害が犠牲にされないといけないのか。
 ただ、親会社との間で、少数派株主になるにあたり、資本提携の契約をしている場合にまでそのように言えるのかどうかだと思います。

3 
 さらに進んで、この子会社が上場会社だったとしたら、親会社に少数株主が振り回されるというのは確かに、看過しがたい利害衝突があるかと思います。究極が、上場廃止となれば少数株主の不利益は投下資本の回収可能性の低下として明かです。
 しかし今の法制度では、こんな状況に関してすら、「上場子会社の少数株主の利益を守る仕組みが不十分」です。「不十分」というか、原則論、形式論を貫いていて、上場企業であっても非上場企業と同様に考えていて、多数決の論理だけで処理している、「少数株主」の利益を守る必要があるという発想がまだないのではないかと思います。
 
 小林製薬の行動が、まさにそれ。少数株主の意見なんて完全無視です。その少数株主は、自身が資本提携して、子会社に事業を譲渡させ、その見返りに20%の「少数」の株式を発行した相手だというのに・・・。
 仁義なき自由。

(おわり)

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November 15, 2007

スズケン対小林製薬の仮処分~今後の行方~【松井】

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1 
 スズケンが小林製薬に対して行った仮処分の申請が11月12日付けで名古屋地裁から却下されたとの報道(11月13日付け日経夕刊)。
 小林製薬のHPでは早速、広報されていました。ちなみにスズケンの方では広報を見つけられませんでした。いいのでしょうか?最高裁HPの下級審裁判例のところでも載っていません。載るでしょうか?本当は、情報開示という点では差し支えない範囲で小林製薬は決定書全文を載せたらいいのにと思うのですが。たぶん本訴になるだろうし。争点を明らかにするという意味でも。


 今回の仮処分の詳しい内容は、まだ分からないけど、おそらく仮の地位を求める仮処分(民事保全法23条2項)だったと思う。係争物に関する仮処分は、給付請求権があることが前提だけど、小林製薬が保有するコバショウの株式に対して、スズケンが給付請求権を有するわけではないから。
 仮の地位を定める仮処分は、「争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。」とされています。

3 
 「債権者」というのは仮処分の申立人側のことをいい、「債務者」というのは相手側のことをいいます。
 法23条2項のこの「債権者に生ずる著しい損害」の要件については、あの有名なUFJ信託銀行経営統合交渉差止仮処分申立事件の最高裁決定(最決H16.8.30)で次のように言われています(19年版有斐閣判例六法より)

 債権者が被る損害の性質、内容が事後の損害賠償によって償い得、かつ、仮処分命令が発せられた場合に債務者の被る損害が相当大きいと解せられる本件申立ては、本条2項の要件を欠く。

 利益衡量ですね。


 スズケンと小林製薬の仮処分を考えた場合、おそらく上記と同じような判断をしたのではないかと推測されます。何の根拠もない推測ですけど・・・
 でも株式を譲渡するなというのは、やっぱりよっぽどのことであって、契約にばっちりお互いをそこまで拘束するような文言が明記されていない限り、困難だったのではないかと思います。で、きっとそこまでの明記はされていなかった・・・。
 ただ、スズケン側の思惑としては、「騙された、損害を被る」という思いがあるわけで、今後どうなるかというと・・・。

 損害賠償請求の本訴、しかないかと思います。

 上記のUFJ信託銀行経営統合交渉差止仮処分申立事件も、その後、損害賠償請求の本訴となり。
 で。
 本訴の行方はというと、何億円だったかの和解金が支払われて終わったように記憶しています。
 なお、日本評論社から「UFJvs.住友信託vs.三菱東京 M&Aのリーガルリスク」という本が2005年に出版されています。



 スズケンは、まぁ、間違いなく損害賠償請求訴訟を起こすでしょうから、それに対して、小林製薬はどのように対応するのか。
 徹底抗戦?でしょうか。
 契約書を見ていないので分かりませんが、利害状況を見る限り、スズケンの主張、言い分に一理もないとは思えません。
 貴方が大株主だというから、貴方との契約で子会社・関連会社に対して、自分の大事な事業の一部を譲渡し、その対価としてその会社の株式の譲渡を受けた、それがもはや貴方の関連会社でもなくなってしまうというのでは、譲渡を受けた株式の価値にも大きな影響があり、いわば大事な事業の一部を騙し取られたような思いになるのはある意味、当然かと思います。
 事業譲渡の対価が株式ではなく、現金だったら、単なる売買で一回限りの契約関係で終わっているということになるのでしょうけど、「現金」と「株式」は当然、意味が違うのであって、一回限りの契約で終わるという意思表示にはならないかと思います。
 そこには何らかの継続的な関係の形成が意味されていたといえるのではないでしょうか。
 それを、子会社・関連会社の株式を一方的に譲渡自由だからといって、全然異なる外資系の会社に株式を譲渡することが果たして許されるのかどうか。
 スズケンは司法判断を問うでしょう。
 で、やっぱりお金をいくらか払って和解?でしょうか。
 個人的には要注目です。
 まずは仮処分の行方を見守らねば。
(おわり)

追記
 小林製薬とメディセオ・パルタックHDとの間のコバショウ合併の詳細
 http://www.mediceo-paltac.co.jp/news/pdf/2007/070926.pdf
 スズケンが20%の株を取得した経緯からして、やっぱりそりゃ怒るよね・・・。コバショウ、消滅会社みたいだし・・・。小林製薬もまさか強硬路線一本槍とは思えない、賢い会社なら・・・。株主に対する説明を果たしている?ただ、損害の算定が難しい。見えない財産だしねぇ。提携関係。具体的にどういうメリットがあったのか。やはり当初の合意時点での双方の利害、思惑が大きい。それを小林製薬は知らない、関係ないとは言い切れるのだろうか。裁判所は実は以外とドライじゃなかったりする。どうなるんだろう。代理人弁護士の見通しはいかに。

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October 29, 2007

NOVAの仕訳~クレジット利用の罠~【松井】

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10/30追記
「NOVAの監査 調査へ」と日経朝刊。「会計士協『リスク情報』開示焦点」」と。
中身には、「受講生が前払いしたレッスン料の45%を契約時点で売り上げとしており、収益計上の方法が適切だったのかも調査の対象となりそうだ。」とありました。
外から見ている分には、正直なところ、何を今更・・・という感が否めません。
また、「4-6月期の業績開示で本来計上すべき解約返戻金を一部しか計上しなかった。」ようです。本当は6月時点で債務超過だったかも!?ということ。


 10月24日の日経で、こんな見出しがあった。
 「支払能力を超す契約禁止 経産省審議会 割賦販売で義務づけへ」
  
  経済産業省の産業構造審議会の小委員会は23日、信販会社など割賦購入あっせん業者に対し、消費者の支払い能力を超える契約を結ばないよう義務づけることで一致した。」という。


2 
 NOVAが10月26日、大阪地方裁判所に対し、会社更生手続開始の申立てを行った。
 丁度、10月1日付けの判例タイムズには、「特報」として「外国語会話教室の受講契約の解除に伴う受講料の清算規定が特定商取引法に関する法律49条2項1号の定めに違反し無効とされた事例」として平成19年4月3日最高裁第三小判決の解説が掲載されている。
 法49条1項の趣旨について、最高裁はこう述べた。
 「特定継続的役務提供契約は、契約期間が長期にわたることが少なくない上、契約に基づいて提供される役務の内容が客観的明確性を有するものではなく、役務の受領による効果も確実とはいえないことなどにかんがみ、役務受領者が不測の不利益を被ることがないように、役務受領者は、自由に契約を将来に向かって解除することができることとし」
 
 そう。NOVAのビジネス・モデルは、講座受講料をポイント制とし、このポイントを大量に一括して買わせる、その際の支払方法としてはもちろん現金一括払いというものは少なく、70万円の総額であっても、1か月2万円を支払うというカタチで割賦販売を行うというものだった。収入月3万円の学生など。ただ、もちろんNOVAが分割払いを受け入れるのではなく、立替払いをしてくれる第三の会社、信販会社が登場する。

 このとき、NOVAの仕訳はどんなものか、公認会計士の方が示してくれた。

 現金   100  /  前受授業料  100
 
 そして、
 前受授業料 20  /  売上      20


 P/L 売上 20、 C/F 100 が計上される。

 営業C/Fは黒字であるが、先払いでもらっているものなので、黒字でもあやうい会社になるという。



 NOVAはいったいどこで過ったのだろうか。
 中途解約の場合の清算方法等に対する消費者からの苦情に対し、もっと早期に、もっと謙虚に耳を傾けていれば、ビジネス・モデルの転換も可能だったのではないか。

 電車の定期券を買って、解約した場合、清算金は割高になって当たり前だ。
 バナナを1本買ったら100円のところ、3本買うからというので270円にした。しかし1本返すというのなら、それは受け入れるけど、バナナ2本で200円だから70円しか返さない。270円÷3本=90円じゃないよ。
 という話し。
 NOVAはこの理屈で戦い続け、最高裁判所までいって負け判決を持ち帰った。
 絶対に自分の主張が正しい。
 思うに、商売なんだから、理屈を押し通すのではなく、相手の声に耳を傾けようよ、といったところか。
 
 最高裁の指摘は、法の趣旨、この契約の特性をよく見ていると思う。バナナの3本売りとどこが、どう違うのか。電車の定期券とどこがどう違うのか。
 クレジット利用での長期にわたる分割支払い方法。対価として提供される、モノの特殊性。

 経営上のワンマンという問題もあったようだ。
 いろいろな問題が合わさって、負のスパイラルを描き、今回の破綻に至ったのだろう。大ざっぱだけど。

 この失敗から学び、ビジネス・モデルを変更すべき業界、企業は、山ほどあるだろう。負債が大きくなる前に手を打たないと。
 営業C/Fが黒字だからといって、大丈夫とは限らない。

(おわり)

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October 25, 2007

The paradigm in the music business ~長期契約のマドンナは何処へ~【松井】

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 前の続き。
 マドンナのオフィシャル・ウェブサイトでの告知の記事(末尾)を読んだ。

 The paradigm in the music business has shifted
 and as an artist and a business woman,
 I have to move with that shift,

 マドンナなりにmusic businessの環境変化に対応、あるいは変化させたということなんだろう。
 
 告知の記事を読むと、マドンナ側もライブ・ネーション側も手放しで大喜び。
 
 creat a new business model

とまで言っている。


 この告知の記事を読んでふと思った。
 果たして、マドンナは今後、大丈夫なんだろうか、と。
 契約は10年の長期の契約だとか。
 それは、ある意味、保証でもあるが、ある意味、拘束でもある。

 逆に、これからの「変化」に対応できなくなるのではないか。

 過去25年を振り返っても、自身が11歳のとき、今のこの音楽業界の現状は想像もつかなかった。CDが登場し、さらにはi-Tunesで音楽を買い、i-pod で音楽を聴くなんて。
 今後の10年間、同じように誰もまだ想像がつかない音楽ビジネス・モデルが登場しないなんて誰がいえるだろう。
 
 今回のマドンナとライブ・ネーションの契約の契約書は、たぶんきっと、すっごい、ごっつい契約書が作成されていると思う。

 「契約」について考えるとき、考えないといけないのは「出口」だ。円満にこれからビジネス関係を築いてやっていこうね、と言うときに、別れるときはこういう風にしようねと決めておくこと。こんな場合には別れようねと決めておくこと。
 当然、決めてあると思うけど。
 どんなときだろう。ライブ・ネーションが世間の変化に対応できないとき。あるいは、マドンナに商品価値がなくなったとき、か。


 今後、想像を超えた環境変化が起こったとき、果たしてライブ・ネーションは対応できるのだろうか。
 図体がでかいだけなんじゃないのかという気がふとしたもので、マドンナのこの契約は果たしてマドンナにとって利のあるものなのか疑問が浮かんだ。
 それはきっとライブ・ネーションという会社がどういう会社なのか、今ひとつ、よく分からないからだとは思う。上場しているようなので、情報はとろうと思えばとれるんだろうけど。

 ただ、告知の記事を読む限り、世界規模のネットワークを有するということが強みのよう。
 ただ、マドンナほどの知名度のあるアーティストが、今更世界規模のネットワークを頼りにするというのもどうなのかという素朴な疑問がある。
 ナイン・インチ・ネイルズのように、規模を小さくして、コンテンツごとに誰と手を組むのかを選別するという方が変化に対応しやすいのではないかと思うんだけど。
 ライブ・ネーション。どうなんだろう。 
 大丈夫か、マドンナ。
 選択を誤ったような気がしないでもない。
 次にでるアルバムのその後を見れば分かるだろう。


(おわり)

-マドンナ オフィシャル・ウェブサイトからー

Madonna Joins Forces With Live Nation In Revolutionary Global Music Partnership
Posted: 16 October 2007

LOS ANGELES, CA - October 16, 2007 - Live Nation's President and Chief Executive Officer, Michael Rapino officially confirmed today that Madonna has entered into an unprecedented global partnership with Live Nation and will become the founding artist in its Artist Nation division.

"The paradigm in the music business has shifted and as an artist and a business woman, I have to move with that shift," commented Madonna. "For the first time in my career, the way that my music can reach my fans is unlimited. I've never wanted to think in a limited way and with this new partnership, the possibilities are endless. Who knows how my albums will be distributed in the future? That's what's exciting about this deal - everything is possible. Live Nation has offered me a true partnership and after 25 years in the business, I feel that I deserve that."

"Madonna is a true icon and maverick as an artist and in business," stated Mr. Rapino. "Our partnership is a defining moment in music history. I am thrilled that Madonna, who is also now a shareholder in our company, has joined with us to create a new business model for our industry. Bringing all the varied elements of Madonna's stunning music career into the Artist Nation and Live Nation family, moves her future and the future of our company into a unique and extraordinary place."

The first-of-its-kind partnership between Madonna and Live Nation encompasses all of Madonna's future music and music-related businesses, including the exploitation of the Madonna brand, new studio albums, touring, merchandising, fan club/web site, DVD's, music-related television and film projects and associated sponsorship agreements. This unique new business model will address all of Madonna's music ventures as a total entity for the first time in her career.

Arthur Fogel, Chairman of Live Nation's Global Music Division and Chief Executive Officer of Global Touring, who has produced the artist's last three worldwide tours with the company which generated close to $500 million in the last six years commented, "Madonna is without a doubt one of the most fiercely original artists in history. It is a great opportunity for Live Nation and Artist Nation to build upon our years of success with Madonna as a touring artist."

Artist Nation was created to partner with artists to manage their diverse rights, grow their fan bases and provide a direct connection to fans through the global distribution platform and marketing proficiencies that have made Live Nation the world's largest live music company. Headed by the division's Chairman and Chief Executive Officer, Michael Cohl, Artist Nation has significant infrastructure in place to execute additional revenue streams including recorded music, merchandise, studios, media rights, digital rights, fan club/website and sponsorship divisions.

Joining with Artist Nation to work with Madonna will be Live Nation's unmatched global distribution platform and artist-to-fan-reach, including over 80 offices in l8 countries, over 200 national and local sponsorship personnel, over l60 venues, access to over 35 million fans that attend well over l0,000 shows that Live Nation produces, promotes and/or hosts each year for over l,000 artists including fan access via Live Nation's growing database of over 25 million fans.

"I've been fortunate enough to work with Madonna for half my life. She has always encouraged me and set a great example for me to push the boundaries to reach our full potential. This partnership exemplifies just that," commented Madonna's co-manager Guy Oseary.

Angela Becker, Madonna's co-manager added, "The partnership and vision for the future that Artist Nation along with Live Nation presented to us assured me that this is the ideal home for Madonna. It is with great trust and optimism that we collectively move ahead together."

In regard to Madonna's relationship with her current label, the artist commented, "My time with Warner Bros. Records has been great. I appreciate their hard work and value the many relationships I have developed over the years with the label in the U.S. and around the world. I have an album coming out with them next year and I'm excited about it. We still have work to do together."

ABOUT MADONNA:
The multi-Grammy Award winning artist, songwriter, children's book author, producer and video visionary with an unrivaled reputation for astonishing stage spectacles, has made music history many times over, logging an incredible 12 number one pop singles and 35 number one dance singles in the U.S. alone. Her 2006 "Confessions" tour generated almost $200 million, making it the highest grossing concert tour of all time by a female artist. Over the last 25 years, Madonna's collective record sales number over 200 million albums worldwide. Her last album, Confessions On A Dance Floor debuted at number one in 29 countries and sold almost 8 million copies worldwide. Her last concert DVD The Confessions Tour - Live from London, sold more than 1.2 million copies worldwide.

ABOUT LIVE NATION:
Live Nation is the future of the music business. With the most live concerts, music venues and festivals in the world and the most comprehensive concert search engine on the web, Live Nation is revolutionizing the music industry: onstage and online.

Headquartered in Los Angeles, California, Live Nation is listed on the New York Stock Exchange, trading under the symbol "LYV." Additional information about the company can be found at www.livenation.com under the "About Us" section.


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October 22, 2007

マドンナとナイン・インチ・ネイルズ、そして  noodles【松井】

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(注 まとまり、ありません)
10/24追記 27日まで、コルネイユの動画が観られる!

 中学生のころ、ソニー・ミュージック・TVが始まった。金曜日の深夜12時30分から3時50分まで。毎週、食い入るように見続けた。
 丁度、マイケル=ジャクソンの「スリラー」やマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」、シンディ=ローパーの「ガールズ・ジャスト・ハブ・ア・ファン」(邦題ハイスクールはカフェテリアとかなんとか)が流行ったころだった。
 そして、近所にはレコード・レンタル店が開店し、毎日ようの通っていろいろなレコードを借り、せっせとテープに録音していた。FM放送を聴いて他のまだ聴いたことのない音楽を知り、シンニード=オコナーやテレンス=トレント=ダービーといった才能に衝撃を受けたりしていた。
 コンサートはミーハーで、ハワード=ジョーンズや、トンプソン=ツインズ、そしてチャーリー=セクストンのコンサートに行った。ネーナのコンサートでは、学校を早退して名古屋へ行き、ホールの入口で待ち伏せした。エルビス=コステロのコンサートでは待つだけのみならず、着ていたTシャツにサインまでしてもらった。
 まったくお馬鹿でミーハーな中学、高校時代。

2 
 マドンナといえば、私にとっては「ライク・ア・ヴァージン」で登場したときの衝撃と共に自分の中学時代が蘇る存在。
 そのマドンナが、長年契約してきたレコード会社であるワーナーとの契約を解消し、代わってライブ・ネーションという会社と契約したとういう。マドンナのオフィシャル・サイト


 

2007年10月17日(水)08:19
 【シリコンバレー16日時事】米コンサート運営大手ライブ・ネーションは16日、女性人気歌手マドンナ(49)が同社に移籍したと発表した。大物歌手は収益源の軸足をCDからコンサートへ移行しつつあり、マドンナは「音楽業界の構造変化に対応した」と移籍理由を説明した。

 米紙によると、契約は期間10年で総額1億2000万ドル(約140億円)。同社がコンサート運営や3枚の新アルバム制作、関連商品販売などを包括的に展開する。 

【時事通信社】


 レコード会社と契約をしなくても、音楽を発表し、それを売り、またコンサートを開催して、ビジネスとして収益をあげられるということか。
 
 一方で、これまた10代のいっとき、バロウズなどが好きになったきかけの山形浩生さんのHPでの紹介で、ナイン・インチ・ネイルズがレコード会社、レーベルとの契約を解消したことについて、喜びの報告をしているものがあった。 移籍ではないようだ。
 


 レーベル。レコード会社との契約。

 思い出すのは、やはり鈴木あみの裁判。以前にもこのブログで触れた。

 一発あたると莫大な売上げにつながるが、そこでの利益で他の新人アーティストの育成、つまりプロモーション等にお金を費やすビジネスモデル。
 アーティスト側にすると、売れるまでは恩義を感じ、恩返し的に次々とアルバムを制作、発表しつつ、契約で縛られて年に何枚だすということを強いられるもの。
 ナイン・インチ・ネイルズは辛かったんだろう、きっと。

 freeということの喜びが伝わってくる。

 これは、ナイン・インチ・ネイルズが確固たる地位を築き、自分たちも金銭的には不自由をしておらず、今後は、好きなときに好きな作品を発表するという喜びなんだろうと勝手に想像する。

 そういった点では、マドンナも確固たる地位を築いているようだけど、自身ではそうは思っていないからこそ、ワーナーを離れ、代わりにライブ・ネーションと契約したんだろう。
 マドンナのインタビュー記事でずっと記憶に残っているものがある。
 「私は、歌も特別うまいわけではない、ダンスも特別にうまいわけではない、私より、スタイルも顔もきれいで、歌もダンスもうまい人がいっぱいいることは分かっている。」 といったものだった。
 マドンナには何があるのか。紳助の「紳竜の研究」ではないが、時代を読む力、セルフ・プロデュース力なんだろう。ありきたりの分析だけど。
 一方、ナイン・インチ・ネイルズは、自分たちの音楽は自分たちにしか作れない、そしてこれはこれからもずっと多数に受け入れられるという自信がある。
 だから、レーベルを離れた。



 日本ではどうだろう。
 平井堅は、何枚目かのシングル「楽園」がヒットし、命拾いしたというのは有名な話。デビューして数年、泣かず飛ばずで、これが売れないともう契約を切るというところまでいっていたらしい。レコード会社との契約を切るということは、もうCDは出せないということ。
 そういう意味では、ポップミュージックの音楽家はその音楽がヒットしてなんぼのものと言わざるをえないのかもしれない。
 一度売れても、また売れ続けないといけない。
 強迫観念にもなるだろう。
 でもまずは売れないと、終わりも何もなく、始まらないままに終わってしまう。別の職業を見つけるかしかない。音楽は、食い扶持にはならない。

 マドンナはライブ・ネーションの力を借りることにしたようだが、日本のレコード会社は、「売り出す」ための仕事としていったいどんなことをしているのだろうか。
 平井堅の楽園が売れたのは、そのPVで三角マキコが出ていたからというのが大きいだろう。話題を作る、ということ。
 
 音楽は、その力だけではなかなか芽が出ない(ヒットしない)んだということを実感した最近の出来事。
 
 女性3人組の noodles というバンドを最近知った。「池袋ウェスト・ゲート・パーク」でデビューした石田衣良がゲイの父親役ということで俳優デビューしていたというのでどんなもんかと思ってみた映画「ラブ・マイ・ライフ」で音楽を担当していた。
 石田衣良の演技力はともかくとして、音楽が格好よかった!(映画も10年前のドイツ映画全盛時のヒット作「バンディッツ」のようで格好良かった。吉井怜がまさに熱演。)。
 最近では、コルネイユ以来のヒット!
 
 どうやらもう10年近く活動しているバンドのよう。
 なのになぜ、あまり知られていない!?
 ブルーハーツやクロマニヨンズが売れている以上、noodlesが売れない理由はない!と思う。シンプルにギター、ドラム、ベースで、ギヨンと格好いいギターのメロディー、ポップな歌詞に、弾むドラムとベース。
 
 思うに、レーベルの力の弱さが一番の原因ではないかと思った。売り出し力の不足。
 noodlesこそレーベルを移籍したらいいのに。一発、当たったら、ヒロトやまーシーのように、息の長い、格好いいグループになると思う。
 応援したい。
 がんばれ、noodles。
 そして頑張れ、マドンナ49歳。女優の途は絶って、女ミック=ジャガー、ローリング・ストーンズのようになって欲しい。60歳になっても体力付けてコンサートをして欲しい。
 希望の星、マドンナ。
 希望の星、noodles。

(おわり)

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June 12, 2007

契約書の作成について~最高裁の補足意見~【松井】

1 
 最高裁第2小法廷で平成19年6月11日、二審破棄、高裁へ差し戻しを命じる判決が出ました。

 セブン・イレブン・ジャパンのフランチャイズチェーン(FC)加盟店が本部に払うロイヤルティーの計算方法に関する契約の解釈を巡っての争いです。
 最高裁は、「契約」内容そのものについては「契約書」などを手がかりにして会社し、セブン・イレブンの言い分を認めました。
 が、しかし。差戻審の高裁においては、事実審理を尽くしたうえで、

「場合によっては、本件条項が錯誤により無効となることも生じうるのである。」
と補足意見は指摘し、結局は同社の敗訴になる可能性があることを指摘しています。

2 
 消費者関係の事件を担当していると、いわゆる大会社が用意した契約書に呆れることがたまにあります。契約当事者のチカラの強弱は明かであり、自社にのみ一方的に有利な契約が堂々と明記されていることがあります。あるいは、異議が出そうな事柄については敢えて目立たないように紛れ込ませてあったり。
 
 この最高裁判決は補足意見に注目です。せっかくなのでここに引用します(下線部は、松井)。
 大会社の方はぜひ注意して欲しいと思います。ただ、まあ、ずっと問題となっているNOVAの契約書やこのセブン・イレブンのFCの契約書もそうですが、いちおう弁護士のチェックは入っていると思うのですが。そういえば、鈴木あみの裁判でも契約書の難が指摘されていました。
 裁判所で通用する、公正といえる契約、契約書か否か、各社、改めてチェックして欲しいと思います。
 

 

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官今井功,同中川了滋の補足意見がある。

 
 
裁判官今井功,同中川了滋の補足意見は,次のとおりである。
 私たちは,本件条項に定めるチャージの算定方法の解釈については,法廷意見の
とおりと考えるが,本件条項の定め方が,明確性を欠き,疑義を入れる余地のあっ
たことが,本件のような紛争を招いたこと
にかんがみ,このような契約条項の定め
の在り方について,意見を述べておきたい。

 
 そもそもやはり契約書の記載そのものが明確性に欠けるという指摘です。 
 その上で。

 

チャージを定めた本件条項は,「乙は,甲に対して,A店経営に関する対価として,各会計期間ごとに,その末日に,売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いたもの。)にたいし,付属明細書(ニ)の第3項に定める率を乗じた額(以下,A・チャージという。)をオープンアカウントを通じ支払う。」と規定している。これによれば,チャージは,売上総利益の一定割合であること,売上総利益は,売上高から売上商品原価を差し引いたものであることが規定されているが,「売上商品原価」についてはこれを定義するところはなく,本件契約書中の他の条項においても,「売上商品原価」の定義規定はない。そして,「売上商品原価」という言葉は,企業会計上一般にいわれている売上原価と解することもできるし,売り上げた商品の原価と解することもでき,「廃棄ロス原価」及び「棚卸ロス原価」がこれに含まれるか否かが本件で争われたのである。

 

本件においては,本件契約書18条1項において引用されている付属明細書(ホ)2項には,廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が営業費となることが定められていること,上告人の担当者が被上告人に対し,廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価を営業費として会計処理すべきこと,それらは加盟店経営者の負担であることを説明したこと,加盟店店舗に備え付けられていたシステムマニュアルの損益計算書についての項目に,「売上総利益」は売上高から「純売上原価」を差し引いたものであること,「純売上原価」は「総売上原価」から「仕入値引高」,「商品廃棄等」及び「棚卸増減」を差し引いて計算されることが記載されていたこと等法廷意見記載のような諸事情を考慮して,本件条項所定の「売上商品原価」には,廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価は含まれないと判断されたものである。
 

 まず確定すべき契約内容として、かろうじてセブン・イレブンの主張する解釈が認められたというに過ぎません。

 

しかし,本件条項の解釈として,上記のように解釈することが相当であるとはいうものの,本件契約書におけるチャージの算定方法についての規定ぶりについては,明確性を欠き,疑義を入れる余地があって,問題があるといわなければならない
 本件契約である加盟店基本契約は,上告人が一方的に定めたものであって,加盟店となるには,これを承諾するしかなく,これを承諾することによって,加盟店契約が締結されるものであるところ,チャージがいかにして算出されるかについては,加盟店の関心の最も強いところであるから,契約書上それが加盟店となる者に明確に認識できるような規定であることが望ましいことはいうまでもなく,また,そのような規定を設けることが困難であるという事情もうかがうことができない

 
 契約当事者の立場の違いに鑑み、上の強い立場の方は、相手方の関心についても注意を払えといっています。

 

チャージは,加盟店に対する店舗経営に関するサービス等に対して支払われる対価であることから,加盟店としては,店舗経営により生じた利益の一定割合をチャージとして支払うというのが,一般的な理解であり,認識でもあると考えられるのである。ところが,廃棄ロスや棚卸ロスは,加盟店の利益ではないから,これが営業費として加盟店の負担となることは当然としても,本件契約書においては,これらの費用についてまでチャージを支払わなければならないということが契約書上一義的に明確ではなく,被上告人のような理解をする者があることも肯けるのであり,場合によっては,本件条項が錯誤により無効となることも生じ得るのである

 本件では、差戻審でやはりセブン・イレブン敗訴があり得るという指摘です。


 

加盟店の多くは個人商店であり,上告人と加盟店の間の企業会計に関する知識,経験に著しい較差があることを考慮すれば,詳細かつ大部な付属明細書やマニュアルの記載を参照しなければ契約条項の意味が明確にならないというのは,不適切であるといわざるを得ない。それでも,上告人担当者から明確な説明があればまだしも,廃棄ロスや棚卸ロスについてチャージが課せられる旨の直接の説明はなく,これらが営業費に含まれ,かつ,営業費は加盟店の負担となるとの間接的な説明があったにすぎないというのである。上告人の一方的な作成になる本件契約書におけるチャージの算定方法に関する記載には,問題があり,契約書上明確にその意味が読み取れるような規定ぶりに改善することが望まれるところである

 契約書の作成にあたっての立場の違いに鑑みた、一種の注意義務を認めるともいえる補足意見だと思います。私は賛成です。
 一方的に極端に有利、あるいは不当な条項が紛れ込まされているような不誠実な契約書を見ると怒りを覚えます。何事も公明正大に。
 ビジネスは「三方よし」じゃないと長続きはしないよ。
 自身が企業側で契約書作成のアドバイスを行うとき、あるいは作成しようとするときも、裁判所で争われたらかえって不利なこともあるとして、有利な条項を紛れ込ませることや、あまりにも一方的に有利な条項は設けないようにしています。
 まさに、無効とされたり、錯誤無効を主張をされ、その言い分が通ったりするから。
(おわり) 

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