01 大橋

September 28, 2009

「労働者」の存在感-スウェーデン・オランダ訪問【大橋】

 大橋です。

 このシルバーウィークの期間を利用して、労働問題に関わる弁護士と労組関係者の有志で、スウェーデンとオランダの労働事情を調査する訪問企画を組んでいました。

 帰ってきたところですので、速報的にご報告です。

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 スウェーデンのストックホルムにある、最大の労働組合・LOの本部です。

 スウェーデンでは、平等オンブズマン及び統合化男女平等省という行政機関を訪ねた他、社会民主党の女性同盟と、2つの労組(LO及びユニオネン)を訪ねました。

 スウェーデンは、長らく続いた社会民主党主導の左派連合が右派連合に政権を譲って3年目、来年には改選があるそうです。
 右派連合の政策は労働者には逆風でしたが、これが経済動向との関係で「やむを得なかった」のか「やはりダメだった」のか、来年に向けて論争が始まっていました。

 男女平等(機会均等)施策にも逆風が見られたようです。ただ、いったん進み出した方向性「男女ともフルタイム・男性にも育児休暇」の流れは止まらないという印象でした。

 町中でも、父親休暇中の子連れの男性が目立ちました。

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 オランダは、いわゆる「1.5モデル」、夫婦で合計1.5の働きをするパートタイム労働が推進されてきた国と言われています。

 オランダでは、最大の労組FNVの傘下にある、女性労働組合と、公共事業の労組を訪ねました。
 また、オランダ独自の機関といえる、労組・経営者・学識経験者で構成される社会経済審議会SER,そして経営者連合VNO-NCWを訪問しました。

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 オランダでは1人の男性労働者で家族を養えるだけの給料が得られるという所得水準の高さがあり、妻があと0.5働けば家計的には十二分で、オランダの労働力不足の事情からパートタイム労働が推進されてきたという感じです。また、聞いてみますと、母子家庭になっても、母の収入に家賃扶助・子ども手当その他を合わせると休暇に家族旅行に行けるくらいの収入になるそうです。
 これは、ビザを得てオランダの住民となった人には全て適用されるそうです。

 そうした事情と、寛容さの気質からか、今日、オランダの人口の20パーセントはオランダ以外にルーツを持つ人が占めているそうで、比較的低賃金の現業労働は移民労働者がまず就いているようです。(ファストフードの店員、ホテルの従業員、清掃労働者は移民の人たちでした。)
 この人達も、後に述べる「労使共同合意」により職務給が決まっていて、資格をとれば次の職務へ移行できます。
 FNV女性労働組合では、移民出身の女性労働者からリーダーを養成する特別企画を組んでおり、「白人で年寄りの男性が多い労組に多様性を巻き起こす」と意気盛んでした。

 移民を受け入れて多様性をもった国を作るということが、政策の方向になっており、それに対して既得権勢力のオランダ人からの不満が見え隠れするが表には公然と出にくい、そういうせめぎ合いが感じられました。

 家庭及び社会における男女平等は、一定レベルの生活が保障された中で、次なる課題として各人に任されているという感じがしました。あくまでフルタイムで平等を追及していくスウェーデンとは違いがあるようです。

 あと、オランダの労組で見せていただいた「労使共同合意」というものには、職務給料表がありました。例えば介護職で、こういう資格があれば初任給はいくら、1年経験を積むごとにいくら、という一覧表です。
 10年で一つの職務表は上限になり、さらに高給を求める場合には資格取得をして次の表の適用を受けることになります。
 「これぞ均等待遇の見本」というべきもので、参考になりました。さらにこれを日本に適用させるには、日本ならではの職務分析が要るので、大変な作業とは思われるのですが、重要です。
 そして、これを就労時間比例でパートタイム労働に適用するわけです。

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 いずれにしても、両国とも、労働者の働く権利、平等に扱われる権利、人並みの生活を保障される権利の存在は決定的でした。

 日本のように、派遣契約が更新されなかったらあとは生活保護しかないとか、パートタイム労働では時給が正社員の半分以下だとか社会保険も厚生年金も適用がないとか、そういったあまりにもせーフティネットがなさすぎる現状は、両国から見れば「信じられないひどい状況」だということになります。

 両国では、労働組合が労使自治の中で労働協約をがっちり締結し、かつ、政策にきっちり関与し、労働者全体の地位の向上のモデルを作ってきました。
 オランダでは、経営者連合の担当者さえもが「労働者にファーストクラスとセカンドクラスを作るのは、差別でしょう?」と当然のように言ったのが、大変に印象的でした。

 日本にとっての大きな課題です。

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September 14, 2009

日曜日の中之島【大橋】

 大橋です。

 今日は日曜日ですが、北浜にいました。つまり、仕事です。

 せっかくなので、中之島界隈の様子をご紹介しましょう。

 今、「水都大阪2009」という催しをしていて、たくさんの人で賑わっています。

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 はい。まず、天満橋近くの大川に浮かんでいる、巨大アヒルです。あと2週間は浮いている予定だそうです。

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 天神橋の上から、中之島の東端、剣先公園を眺めます。現代アート展があり、たくさんの風車が地面に刺さっています。

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 中之島では、いろんなアートや出店が出ていて賑やかです。

 北浜の事務所の窓から、改装なったバラ園を眺めます。

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 しばらく前から難波橋の上から気になっていた、魚のアートに接近してみました。

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 なんと、淀川と大阪湾のゴミでできているのです。よく見えるところにこんな「おやおや」なものを置くとは、大阪市も懐が広い。

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 難波橋の下には、大阪市のおいしい水道水「ほんまや」の自動販売機があります。1本100円。懐が広いのか狭いのかわからなくなります。

 まあまあ、仕事も進みました。

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August 16, 2009

夏休み!アサリ大漁、チンアナゴ、そして最後の日に地震【大橋】

 焼けない肉を見つめていた大橋です。箸を握りしめて待っているところを松井に撮られなくて何よりでした。
 
 さて、朝はそう早くないですが晩は日が変わるまで働くこともしょっちゅうの弁護士稼業、年末年始と夏休み期間はちょっと一息つける時期です。
 裁判所が夏休みに入ってしまうというのが大きな理由で、それに合わせて弁護士も夏休みをとってしまうので弁護士同士の交渉も進まなかったりします。

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 今年の夏は、浜松の実家の片づけ作業があったので、妹弟と予定を合わせて集まりました。妹はファミリーで来たこともあり、日頃は母1人の住まいが大人6名、子ども4名の大所帯となりました。
 
 子どもは中1から保育園まで、姪っ子ばかりです。決して行儀よくしつけられているわけではないので、朝から晩まで大騒ぎ。伯母としては、多少は面倒見に協力できたのではないかと思いますが、子どもからは元気ももらうけど吸い取られる方が多いかなぁと思ったことでした。
 
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 早朝到着の1日目、台風が接近しているからと、突然、予定を1日前倒しして浜名湖へ潮干狩りに行く話になりました。
 車で30分も走ると、温泉で有名な舘山寺に着きます。
 そこの遠浅の海で、潮干狩りをするのです。
 近所の家の人が臨時駐車場をしていて、そこへ車を預ければ後はだれも入場料も請求しない、小さな砂浜でした。
 
 ちなみに浜名湖は「湖」と書きますが、実態は「入り江」であり、海そのものです。
 
 曇りがちの空で、お客もそんなに多くない中、われわれ総勢9名は水着で膝から腰程度の水につかり、砂に手を突っ込みました。

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 「お!」一つかみの砂の中に、アサリが5つくらい入っているのです。
 
 大きさは、だいたい「普通」が1つあるかないか、「小」が2つか3つ、「ミニ」が2つというところです。
 
 最初は「ミニ」まで全て捕っていましたが、あんまりザクザク捕れるので、選別してリリースすることにしました。
 
 それでも、クーラーボックスに半分以上の量が捕れたのです。
 大豊漁。
 
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 このアサリをどう食べ尽くすか。考えました。
 
 帰ってきた晩は庭でバーベキューです。
 子どもたちが小さな手で小さなゆでアサリをどんどんむき身にしていきました。
 最後の焼きそばに、むき身のアサリとゆで汁を混ぜ込んで「塩焼きそば」にしました。濃厚なアサリの出汁が利いていました。
 
 翌日の昼はスパゲティ・ボンゴレです。
 むき身アサリ満載のボンゴレを堪能しました。
 大人向けにはニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒め、白ワインを振りました。
 
 そして晩、母が頑張って揚げてくれたたくさんの天ぷらとともに、アサリのみそ汁で締めました。
 
 10人で3食堪能してもなお余ったアサリは、近所へ分け、最後は冷凍保存してしまいました。これが最もうまみの逃げない保存法だそうです。
 
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 話は戻りますが、潮干狩りの翌日は、まだ台風の影響がなかったので、また総勢9名で愛知県蒲郡市の竹島水族館というところへ出かけました。
 
 帰ってみると、母が「そこは新婚旅行で行ったところだ」と言いだし、なかなか格のある観光地であったと知りました。
 
 水族館ではアシカショーもありましたが、ステージがミニサイズで観客が溢れていました。大型の魚を頑張って展示していて、なかなか見応えはありました。
 
 しかし人気を集めていたのは「チンアナゴ」です。ムーミンに出てくる「にょろにょろ」を思い出させるユニークな姿でした。ちなみにサイズは直径5ミリくらいですが、砂の下に隠れた長さは35センチメートルくらいあるそうです。

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 そして3日目。妹弟は東京方面へ、私たちは大阪へと解散する日でしたが、午前5時7分にあの「地震」が起こりました。
 
 なんと奇遇でしょう。日頃は母の1人住まいを私たちが心配する構図でしたが、とうとうやってきた「地震」のときには10人が集まっていたのです。
 
 ただ、私たちのいたところは震源地との関係ではそんなに揺れず、体感では震度4というところでした。
 
 最も揺れたのは菊川・浜岡あたりで、震度6弱、浜岡原子力発電所の発電機も停まったということですからそれなりに大きなものだったはずですが、亡くなった方が1名おられて後は怪我で済んだようでした。
 
 まだ起きている人もわずかだった早朝という時間がよかったのかもしれませんし、暖房器具がついていない夏だったのも幸いしたのでしょうが、何しろ静岡県民は「地震対策」が身体に染みついていますから、「お、来た来た」程度の感覚であったかもしれません。
 
 私も高校卒業まで年間3回くらいは地震避難訓練で机の下に入り、校庭へ集合する訓練をしていましたし、学校の中では「防災ずきん」なるものを持ち歩いていました。今でも寝るときには「揺れたらどこへ逃げようか」と考える癖もしっかりついています。
 そんなことをなつかしく思い出していましたが、東名高速が崩れて通行止めになったのには困りました。
 
 大阪方面への交通はすぐに開通して問題ありませんでしたが、東京方面は菊川の崩れがあるために、静岡まで一般道を行くか、名古屋近くまで西進して中央自動車道へ回るかで妹のファミリーは選択を迫られました。
 静岡を選択したところ、一般道は大渋滞だったそうです。
 姪っ子たちも車の中でしんどかったことでしょう。
 
 というわけで、前の晩には「帰る前にお墓参りをしようか」などと殊勝な話も出ていたのに、それどころではなくなって解散となりました。
 全て母任せです。

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 こうして、台風の大変な被害と地震が新聞紙面を大きく占める時期でしたが、それなりに和やかに、私の夏休みは終わりました。
 
 お盆期間、電話の鳴らない事務所と自宅で、溜まった仕事を片づけています。

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June 29, 2009

車道を歩く-均等待遇ウェーブのパレードに参加【大橋】

 続けて大橋、6月27日の話です。

 「6.27均等待遇ウェーブ 安心して生活できる賃金・雇用を!」

というテーマの集会とパレードがありました。

 主催は、「均等待遇アクション21大阪実行委員会」で、私は事務局団体の中の「いこる」と「働く女性のための弁護団」に入っているので、これに参加してきたのです。

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 パレードの迫力としてはちょっと人が少なめだったのですが、天満橋のエル大阪から、南森町へ北上し、1号線を西に向かい、出入橋まで歩きました。

 残念ながらデパートの前や商店街を通ったわけではないので、目立ち方もイマイチだったと思いますが、大阪駅前を歩くのはきっと警察も認めなかったのでしょう。

 車道をゆっくり歩いていき、歩行者や店の店員さんたちに注目してもらいます。

 交差点を渡るときには列のお尻は赤信号になってしまったりしますが、随行している警察官がピッピと警笛を鳴らして自動車を止めています。
 パレード(デモ行進という方が言論表現活動をしている感じがして本当だという気がしますが)は目立つことに意義があるので、こうしたものが「よくある」「見てみよう」「参加してみよう」と思える状況であるべきなのでしょうに。

 コールを紹介しますから見てみてください。当然のことを言っていて、なんだか母子家庭の依頼者の複数の人が目に浮かんで泣きそうになりました。

 「女と男で賃金ちがう」「なんでやねん?そらあかん!」
 「女も男も均等待遇」「そうや、そうや、それがええ!」

 「パートはないねん一時金」「なんでやねん?そらあかん!」
 「パートもボーナスあたりまえ」「そうや、そうや、それがええ!」

 「正規とパートで時給がちがう」「なんでやねん?そらあかん!」
 「正規もパートも均等待遇」「そうや、そうや、それがええ!」

 「何年働いても不安定」「なんでやねん?そらあかん!」
 「有期契約原則禁止」「そうや、そうや、それがええ!」
 (以下略)


 また、「ごんべさんの赤ちゃん」の替え歌「間接差別バージョン」というのも歌いましたが、これも泣けます。

 「おんなじ仕事をしてるのに パートの時給は安すぎて
  手当もなければ期限付き これーは間接差別!」

 「子どもができたっておめでとう パートは育休とれません
  何年働いても雇い止め これーは間接差別!」
 (以上抜粋。8番まであります)


 世の中のたくさんの人が、これを聞いたら胸に迫るはずだと思います。パートタイマー・契約社員・派遣社員の人たち。
 もっとたくさんの人に目を向けてもらう方法は何がいいのかな?と、歩きながら思ったことでした。

 パレードの終わりの出入橋では、名物のきんつばをしっかり買いました。

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 北浜にある事務所まで歩いて帰ったら、途中の「堂島ロール」の50人くらいの行列にも遭遇。

 そして、夕方の依頼者打合せの準備に戻ったのでした。

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実感・裁判員裁判(模擬裁判に参加して)【大橋】

 久々に登場した大橋です。
 ブログの竹虎模様が復活したことにも気づいていませんでした。


 松井が書いてくれた「模擬裁判員裁判」(6月10日実施)については、副主任弁護人役をしてみて、かなり興味深かったです。(弁護人は3人組で、私よりベテランと、私より若手で組んだのです。)

◆ 一つは、公判前整理手続で争点を絞り込む手順から、当日の審理の流れ、裁判員に説明するときに必要な資料の準備や説明の流れの工夫など、一通りのものを「やってみた」ので「わかった」ということです。

 これで裁判員裁判の弁護依頼が来てもこわくありません。刑事弁護に長けた弁護士にも伝ができましたし。

 (だからといって、安心して重い罪を犯して依頼しないようにしてください(-_-;))

 
◆ 二つめは、裁判員の人たち(法曹界の「常識」に囚われない考えをする人たち)の実際の思考過程に触れることができたということです。

 今回の模擬裁判について言えば、罪名は「殺人未遂」ですが、加害者と被害者はヤクザの義兄弟関係で、歳は若いのに偉そうな兄貴分(被害者)に日頃からプライドを傷つけられてきた弟分(加害者)が酒の勢いで包丁を突き出したという事案でした。
 被害者は全治3カ月の診断書が出る重症でしたが、1カ月半で病院から無断退院したという、あまりかわいそうでない人でした。しかも100万円で示談しています。嘆願書までは書いてくれませんでした。
 しかし、被害者のしっかり者の兄が「みかん園へ引き取って働かせます」と約束してくれました。

 法曹界の「常識」だと、これは実刑事案です。

 しかし、評議を傍聴していると(模擬裁判だからできたのであって、実際には傍聴はできません)、裁判員は、あまりかわいそうでない被害者の存在には当初気持ちが向かず、加害者の「犯行動機」への同情が強く出てきました。「無理もない」「酒さえ断てればやり直せるのではないか」と、雰囲気はぐぐっと「執行猶予」へ傾きます。

 そのうち、過去の量刑相場表を見ながら、また裁判官の説明も聞きながら、「実刑」の方へ引き上げられていきましたが。

 法廷で強く印象づけられたことにまず思考が向いていくのがわかりました。初めて審理をするのですから、そうなって当然ではあります。

 最後の「評議」という場が、裁判官と裁判員だけで行われることになるので、弁護人から見ればブラックボックスです。この場で裁判官はどんな進行をするのか、説明をするのか。ここへも出来る限りの要望をしていくべきと考えますが、法廷では、弁護人はとにかく裁判員に強い印象付けをしておかなければなりません。
 (同じ問題意識を、検察官側もまた持っているはずですが。)


◆ 三つめに、「被告人は判決が下りた後どうなるのか」についての説明の重要性です。

 裁判員の方は、量刑を考えるときに、「執行猶予」の方はまだわかりますが、「刑務所へ行くというのはどういうことなのか、何年行くべきなのか」の判断をするときに、刑務所のことを知らずに戸惑います。

 刑事政策を学べば、刑務所についてはいろいろな問題点があります。

 確かに、刑務所は人を反省させ、勉強させ、出所後の生活再建のために研修などを受ける場であるべきでしょう。プログラムも考えられてはいます。「過剰拘禁」問題が長年ありましたが、近時は解消の方向にはあるようです。

 ただ、刑務所へ入ることによる弊害も大きいです。
 刑務所は「自由刑」つまり移動の自由その他を制限する刑であるはずなのに、実際には、身体拘束を受けることによって、職場を失い、家族を失う場合もあります。
 出所したからといって職がすぐ見つかるとも限りませんし、履歴書にはっきり受刑歴を書けば採用されないし、空けておけば不審がられるし経歴詐称と言われかねません。「前科者」であることによる不利益はずっと付きまといます。
 そのうちに「前科者」同士が連絡を取り合い、よからぬことで身を立てる方向へ行ってしまうこともあります。

 出所後のフォローがあまりに不備である。したがって現状で安易に実刑を肯定的に見ることはできない。そう思います。

 そういった、受刑の実際について、評議室で裁判官はちゃんと説明してくれるのかといえば、現状では余り期待できません。
 社会的に受刑者の問題がよく理解されるようになればよいのですが、とりあえずは、弁護人が法廷でそうした情報を裁判員に示すようにするべきであるように思います。
 刑務所自体の改革も必要です。諸外国では「週末拘禁」「夜間拘禁」という制度もあるのです。平日や日中はそのまま働きに行けるのです。


◆◆ 裁判員裁判がひとつのきっかけになり、「罪を犯した人の更生保護」への道がさまざまなバラエティで展開されるようになり、一般の人の理解も深まれば、それはそれで意味があると言えると思います。

  更生保護について、また裁判員裁判については、「アジェンダ」という季刊誌に書きました。よろしければご覧ください。

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April 07, 2009

最近の「新鮮」・・裁判員裁判に向けた研修を受けています【大橋】

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 和歌山・アドベンチャーワールドの双子のパンダです。今体重11キロで、可愛い盛りです。
 子どもが大人と違うところは、よく動くこと。始終よじ登ったり、ずり落ちたり、とっくみあいをしたり、笹を食べたりして、見ていて飽きません。「キミがおとなになるまえに」というキャッチフレーズはその通りだと思いました。


 さて、新年度を迎えました。私たちふたばの弁護士も登録10年を満了し、11年目です。

 パンダとの比較ではありませんが、経験を積んでくると、動いてみる前に結論が見えるという気がしてきがちです。
 しかしやはりそうでない場合もあります。事実は小説よりも奇なり、思いがけない展開になることもありますから。また、そうであってはならない場合もあります。従来判例の変更を迫るべき場合です。
 新鮮さを失わずに取り組まなければ、と自戒します。

 新しい経験、といえば、5月からの裁判員制度導入(実際の裁判は7月ころからと思われます)を控えて、年度末に弁護士会の「体験型研修」を受けていました。

 皆さんは、「裁判員に当たったらどうしよう?」「当たってしまったけどどうしよう?」と困惑、あるいは期待をしておられるかもしれません。
 私たち弁護士や、検察官、裁判官は、専門家なので、裁判員には当たりません。
 その代わり、裁判員の方々にわかりやすく「裁判を運営する」ことが義務付けられていることになります。
 また、制度自体の当否・改善策を考えるのも私たちの仕事であると言えると思います。
 現状の裁判員制度は、「有罪か無罪か」を決めるだけでなく、「刑罰をどれだけにするか(量刑)」まで決めることを求めていますので、私はそれには反対の意見です。量刑を入れるならせめて死刑制度は廃止にし、「死刑」という選択肢を裁判員が行使する事態をなくすべきだと思っています。

 しかしそれはさておき。
 これまでの刑事裁判と、裁判員による裁判は、かなり違います。従来型の弁護活動をしてきた弁護士からすると「新鮮」ですし、新しいことですから「億劫」にもなりがちです。
 研修をして何が新鮮であったかといって、一番は「メモを見ずに裁判員全員に話しかける」ということです。
 これまでの裁判は、あとで「書面を」「裁判官に」読んでもらうことを前提に、書面を読み上げていたのです。
 しかし、裁判員裁判は、法廷の審理が終われば直ちに評議に入ってしまいます。書面を丁寧に読むのではなく、すぐに結論に向かう話し合いになるわけです。
 また、それこそ初めて裁判員を経験する人の「新鮮」な視点で、弁護人も検察官も一挙手一投足を観察されてしまい、そこで与える印象は甚大なものがあるはずです。

 ですから、研修ではけっこう「形」の指導がありました。
 「視線は下に落とさない」「胸を張り手を前で組むのが基本姿勢」「主尋問をするときは証人が主役、弁護人は裁判員席の端に立つ」「反対尋問をするときは弁護人が主役、証人席の傍に立つ」など。
 ビデオを撮られて、あとでクリティークというのをするのです。
 自分が思いがけず(でもないのですが)のそのそと立ち居振る舞いをしているのを見てプチショック。
 若手の方が工夫していてうまいんです。その中で中堅が奮戦するのは恥ずかしいですが、そこは乗り越えねばなりません。

 でも、いっぺん練習でやってみるというのはいいですね。
 もう一度、今度は「模擬裁判」で練習をやってみる予定です。
 そうしたらもう次は本番なんですから。被告人のために責任ある弁護活動をしなければなりません。

 責任重大ですが、準備をしておこうと思っています。

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February 12, 2009

法律相談をお受けするときに意識していること【大橋】

 大橋です。
 しゃれた写真もありませんが、次々アップの松井ブログから発想したことを。

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 「人のお金」。

  「依頼者になるべくお金を使わせないようにしている」という信条を明確に意識したことはありませんが、法律相談に来られた方には、「弁護士を依頼するとこうなる」「弁護士を依頼しなくてもここまでできる」という説明の仕方をします。

 仕事が欲しいので、なるべく依頼させるように話を持っていく、ということはありません。

 法律相談を有料でさせていただくのは、相談自体が法律サービスだと思うからです。
 一度、詳しくお話を伺っておけば、その後の継続相談もスムーズです。
 また信頼関係もできますし、メールで相談継続ということも考えられます。

 そうした関係の上で、「ここは弁護士に依頼したい」と思われたら、大事なお金をお払いいただくのも有意義と思っていただけるでしょう。

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 「ベテラン弁護士の一言、そして自戒」。

 還暦を迎え、弁護士歴も30年以上に及ぶベテラン弁護士が言いました。

 「このごろすぐ怒ってしまうのだけれど、これは加齢現象だと思うわ。若いころはベテラン弁護士が『なんで若い弁護士は怒らないのかな』と言うのが不思議だったけれど。」

 確かに私自身も、弁護士歴10年目ですが、以前は5時間も6時間も相談者の話を聞き続けていたのが、このごろはもう少し短く切り上げるようになりました。

 体力、というのもあり、他の事件処理との関係での限界というのもありますが、推察力が付いてきたのもあると思うのです。

 駆け出し弁護士は、依頼者の話が全て「未知との遭遇」ですから、一から十まで聞き入ります。それが経験値を上げることになり、キャリア形成につながります。

 経験値が上がってくると、相談者の考えの筋道、相手方の考えの筋道、が早めに見えてきます。
 だから、相談者が「全部話した」と思う前に、こちらのアドバイス内容が固まります。
 それで今度は相談者に説明する作業に入るのですが、相談者が納得するのに時間が掛かってしまうこともよくあります。
 「このアドバイスが貴方の利益になるのに、どうしてわからないのか?!」
 
 念のため、私は大ベテランではないですし、相談者に怒ることはありませんが、相談者への説明が本当に理解していただけたのか、独りよがりになっていないか、自戒しないといけないと思いました。

 できるだけホワイトボードに書いて説明を差し上げて、すっきりわかっていただけるように心がけていますが、もう一つ、相談が1時間くらい連続したら、いったん休憩を入れ、頭の整理をしていただく時間を意識的に作るようにしようと考えています。

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 このごろはネットの時代で、HPを見て当事務所へ相談予約をしてくださる方も増えました。

 遠方の方でもわざわざお越しいただいたりします。

 見も知らぬ弁護士のところへ、いろいろお考えいただいた上で予約をしてくださる、そのお気持ちになるべくお応えしたいと思います。

 ただ、なかなか数日以内に相談日時を入れさせていただくことが難しいときもあります。そのときには当座の対応をとりあえずお電話やメールでアドバイスさせていただいたり、工夫してみますのでよろしくお願いいたします。


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January 25, 2009

Happy Birthday,Yoshiko Matsui!【大橋】

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 1月中にアップしなきゃ、ということでお送りします。

 当事務所の恒例行事、バースデーケーキを食べる会にて。

 虫のボールペンが誕生日プレゼントだったとは、松井ブログで知りました。
 かなりリアルに、会議室を彩っています。

 私は日曜ですが瀬戸際の書面書きに迫られています。
 ブログに時間を取っていては依頼者に顔向けできない・・との後ろめたさに、ブログ短め。

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January 11, 2009

新年雑感-国連死刑廃止勧告・動かぬ日本政府・ピンと来ない法曹【大橋】

 2009年新年が明けました。
 本年もよろしくお願いいたします。

 既に松井も書いているとおり、2人とも3日からの事務所入り。
 私は13日提出期限の訴訟の陳述書案作りに勤しんでおりました。労働事件で事案複雑、かつパソコンメールをされない方なので、完成までに郵送2往復を見て日数ぎりぎり。
 新年一番の仕事としてはなかなかやり甲斐がありました。

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 年末に向けては、「派遣切り」が大きく問題化し、労働関係の弁護士団体も「なくせ!ワーキングプア」と題する企画を組みました。当事者の方々のお話を聞けば、「派遣さん」と呼ばれ、派遣先会社が必要ないと思えば仕事がなくなる不安定さと非人間的な扱われ方に憤り、「労働者派遣法はなくすべきです」という訴えには強い説得力がありました。
 (登録型派遣で働くということはそういうリスクがあるのはわかっていたはずだ、という意見も出てくるものですが、じっくり正社員就職の活動をする経済的な余裕がない場合が多いはずです。雇用保険制度の不備(あるいは「雇用保険に加入していないのは会社が悪い」ということを知る機会がなかった)、生活保護の運用の狭さの問題は大きいです。)

 また、生活保護支援関係のMLでも情報が忙しく飛び交いました。年末の「年越し電話相談会」企画とその後の生活保護申請フォロー、申請を年末にしてもすぐに決定が出ないので、その間をどこでしのいでもらうのか、等。

 東京の「派遣村」が日比谷公園という行政官庁の目と鼻の先で大きく営まれ、厚生労働省の講堂を開放させたり、生活保護申請時に一時金を出させたり、各区に5日ほどの審査期間で開始決定させたり(通常は14日ないしそれ以上かかるのが実状です)、目を見張る成果を勝ち取られました。
 多くの方々の正月返上の働きあればこそですから、本当に敬服します。

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 さて年明け。この2日間で「死刑」に関して考える機会が3回もあったのです。

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 1月9日、靖国神社と国に対して霊璽簿からの氏名抹消と損害賠償を請求している「合祀イヤです訴訟」の関係者の新年会があり、原告のお一人、高松の福善寺住職・釈氏政昭さんとお話しする機会がありました。
 (私は小泉首相靖国神社参拝違憲訴訟の松山訴訟の代理人となり、そのとき以来、釈氏さんと懇意にさせていただいています。)

 釈氏さんは以前からさまざまな市民運動に関わっておられますが、死刑廃止運動にも取り組んでおられて、たまたまこんな話になりました。
 「国が人を死刑にするということは、『お前もうダメだ』と国が決めて、いくらその人がやり直したくても殺してしまうということだ。人はいつかはふと気づいてやり直すことがあるはずだと思う。その機会を与えないのはおかしい。
 人が国から『お前は役に立たない』と決められて命を奪われる。それでは人は安心して呆けることもできない」
 (以上を温かみのある讃岐弁で話されました。正確な再現ができないのが残念です。)

 釈氏さんは対話の人です。靖国に祀られてこんなにありがたいことはないと強く信じている遺族とも、対話したいと願っています。
 こうしたふところの大きさを、私は敬愛しています。
 そして、こうした人への温かさ、見捨てない気持ちというか共感というか、そういったものが社会には絶対に必要だと思っています。
 (昨年の近弁連シンポ「罪をおかした人の更生保護と弁護士会の役割」もそれがテーマでした。)

 しかし、死刑宣告と処刑は、これに鋭く対立していると思います。

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 1月10日、「派遣切り」に反対する「なんば連続行動」という3日連続の路上企画の初日に2時間弱参加。
 
 寒い中でなんとなく雑談をしていますと、ベテラン労組役員の人が言いました。

 「弁護士さんと話する機会やから、堅い話になるけど、今度、裁判員制度が始まるやろう?あれで呼び出されたら、『死刑を言い渡せるか』とか聞かれるらしいねぇ。裁判員をやりたかったら、意に反して『言い渡せます』と言わなかったらあかんのか?」

 そんな報道もありました。もろに「死刑を言い渡せるか?」という質問はまさかしないと思うのですが、難しく言われてもよくわからないから平たく説明してくれと言われれば、裁判所はそのように聞くかも知れませんね。
 「裁判員をやりたくなかったら、死刑に反対ですと言えばいい」という方向での話は、半分ジョークのようにして語られています。

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 同じく10日の晩。アムネスティ・インターナショナル日本死刑廃止ネットワークセンター大阪の主催、NPO法人監獄人権センター(CPR)の共催で、「世界から見た死刑執行をやめない日本~国連自由権規約委員会・日本の人権状況審査の報告~」という企画に参加しました。
 国際人権法の村上正直先生、CPRの秋山映美さん、いずれも以前に交流を持たせていただいた方で、講演をぜひ聞いてみたいと思ったのです。

 日本は国連の国際人権条約自由権規約を批准していますので、国連から国内の人権実施状況について審査を受けることになっています。
 1993年の第3回定期報告書審議で、国連自由権規約委員会から日本に対する「最終見解」が出され、いわば宿題が出されました。国内の差別問題(在日韓国・朝鮮人、アイヌ、部落、女性、婚外子など)の改善、戦後補償としての年金差別解消、死刑の多数さの改善、被収容者の処遇の改善などです。

 1998年、第4回定期報告書審議で、また「最終見解」が出されました。「・・その勧告が大部分履行されていないことを、遺憾に思う」という恥ずかしい総評がされました。それから、また追加として、人権擁護機関の不存在の問題、婚姻での男女差別、永住者への再入国許可制度の適用問題、人身取引対象とされた女性等や性的搾取を受けた児童の保護、自白の強要や検察の証拠不開示問題などが勧告されました。

 そして2008年、第5回定期報告書審議があり、また「最終見解」が出されました。「委員会は、締約国の第4回定期審査後の見解で発出された勧告の多くが履行されていないことを懸念する。」というまたまた恥ずかしい総評です。そしてまた追加として、従軍慰安婦問題、外国人研修制度の問題、難民認定制度の問題、戸別訪問禁止などの表現の自由と参政権に対する不合理な制限の問題、性的マイノリティに対する差別、アイヌ及び沖縄の人々の先住民族性の否認などの問題が「要改善リスト」に加わりました。

 中でも死刑問題については、第4回最終見解では「日本が死刑の廃止に向けた措置を講ずること」という勧告であったところ、今回第5回の最終見解では「世論調査の結果にかかわらず、締約国は死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである」という勧告となりました。

 以上は、講演された大阪大学大学院国際公共政策研究科教授の村上正直先生のお話から一部を要約させていただきました。

 また、CPRの秋山映美さんからは、ジュネーブの審査で日本のNGOがどう日本国内の実態を訴えたかということと、審査員の審査での模様の報告がなされました。
 日本からは外務省担当者だけではなく、警察庁や法務省などの担当者も出向いたようですが、「日本ではこうなっています」という事実説明のみで、かみ合わず、審査員から強く言われても「??」という状態だったようです。

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 私は、もう一昨年前になりますが、ホームレス問題について、社会権規約の政府報告書の取りまとめにあたる外務省人権人道局の方のセッティングで、厚生労働省と国土交通省の担当職員に集まってもらい、質疑応答の機会を持っていただいたときのことを思い出しました。参加したのは大阪弁護士会のホームレス問題部会員6名。場所は霞ヶ関の外務省でした。

 その時感じたのは、「外務省は内政の権限がない」という厳然たる縦割り行政の限界です。
 外務省はとりまとめに過ぎず、政府審査の期限が近づくたびに担当省庁に「進みましたか?」と聞いて結果をまとめるだけ。
 おそらく担当省庁は、外務省から「進みましたか?」と言われると、過去のファイルを引っ張り出し、前の担当者が書いたものをベースに現状報告を書いて提出するだけなのでしょう。要するに、ずっと政策として継続して取り組む体制になっていないようなのです。

 法務大臣がなんの躊躇もなく死刑を執行し続け、「法の適正な執行である」として問題意識がないのは、日本が国際条約を批准してその制約の下にあるということを思考から排除してしまっているのでしょう。

 それは、実はひとり法務大臣のみを、あるいは法務省のみを責める問題ではありません。法曹界(つまり裁判所・検察庁・弁護士会)が「国際条約(特に人権関係)」を日本の法体系の外であたかも「参考程度」にしか考えていないと言ってもよいくらい、一部でしか関心を持っていません。
 
 韓国の国家人権委員会のように、独立の機関が人権を担当し推進する機能を持たないと、現在の日本が人権の国際水準を満たすのは絶望的ではないかと思います。

 「世論調査の結果にかかわらず、締約国は死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである
 政府がすべきこと、そして弁護士が大きく声を挙げるべきことはこれなのでしょう。
 「死刑執行停止」よりも「死刑廃止」と言い切った方がよいのではないかと。

 そして思うことです。
 死刑の対象となっているのは、既に国家機関により自由を奪われている力無き一市民です。
 彼・彼女にどういう環境を提供するのか。冷たい拘置所暮らしで改心の情など芽生える機会があるのか(有罪が前提ですが)。それでも「死刑」を宣告してしまうのか。
 結局、「国家による市民排除の論理」の象徴的な一つが、死刑制度ではないでしょうか。

 そして本年5月から、裁判員が死刑求刑の予想される事件の審理に参加します。
 裁判員にも期待します。「先例にならって」死刑の判断をしないでください。個々の被告人とよく向き合って、彼・彼女にこれから国が提供できるものは「死刑」だけなのかを考えてください。
 弁護人の力量も相当問われます。裁判への恐怖感あるいは諦めに固まっている被告人に、どう人間性を取り戻させるのか(有罪が前提ですが)。

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 今日明日で、2通の書面を仕上げないといけません。
 その前にブログを、と思って書き出すとこんなに長くなり、またしばらくご無沙汰してしまうかも知れません。
 いろいろと見聞して、思ったことをまとめていくのによい機会なので、もう少しこまめに書きたいと、思ってはおります。

 

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December 06, 2008

11月のレポートその2 「ハラスメント連続講座」第3回の講演【大橋】

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 11月29日(土)午後、「働く女性の人権センター いこ☆る」主催の「ハラスメントに負けないために 連続講座」の締めの第3回がありました。

 締めという重責だったのですが、「日本にもハラスメント規制法を!~ヨーロッパの先進的取り組みに学ぶ~」というタイトルで、「実際に日本で法的手段をとるとしたらどうなるか、どういう難しさがあるか」「EU、特にフランスの取組みによる法制化でどうたたかいやすくなったのか」という内容を話しました。

 主には、例えば労災認定をとる場合に問題になることとか、裁判や労働審判を起こす場合の立証の問題とか、慰謝料金額とかいったお話をしました。
 フランスの法律については、実際のところ、自分で原典をあたったわけでもありませんので、学者の方の論文をまとめて報告するという程度だったのです。
 ただ、法制化された内容は、「挙証責任の転換」や「労働組合訴権」、「告発したり証言した労働者の保護規定」「離職の無効による復職ないし損害賠償の規定」「いじめに対する刑事罰」など、示唆に富むものです。

 どのように運用されているのかということについては、またどなたかによりレポートが出されるのを待たねばなりません。
 ちなみに、本年6月の「国際職場のいじめ学会」では、マリー=フランス・イルゴイエンヌさんの講演で、フランスでは法制化の次の段階として、定義へのあてはめ問題、つまり「どこからがいじめなのか」のライン引きに論争点が移り、肝心の職場環境の整備の問題に焦点が当たっていないという報告もありました。
 もちろん、日本より1段階先に行っているのは間違いなく、また、それだけ「いじめ」問題が根深いものであることを示していると思います。

 私の後に、ユニオンおおさかの小田みどりさんから、労働組合として取り組んでいる具体的ケースについてのお話もされました。

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 「職場のいじめ」問題は、現に「いじめを受けている!」と思ったときに、まだストレスで精神が疲れ切る前の段階で適切に労働組合へ相談ができて、職場環境の改善に進んでいけることが何より大事だと思います。

 弁護士のところに相談に来られるのは、既に「うつ」の診断が出て休職中であったり、休職が長引いて退職または解雇されてしまったりしてからのことが多いので、「次のためにどうするか」という相談にならざるをえなかったりします。

 職場を離れてからだと、ハラスメントの証拠を確保することから難しくなります。

 労働組合がまず身近になってほしいと思いますし、弁護士への相談もなるべく気軽にしていただきたいと思います。
 

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11月のレポートその1 「更生保護と弁護士会の役割」シンポジウム【大橋】

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 このごろ貫禄出てますか?
 トレンチを着こなそうと頑張っている大橋です。

 12月を迎えて、11月に取り組んだ企画2件についてご報告したいと思います。
 まず「その1」。

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 11月28日(金)、滋賀県大津市で、近畿弁護士会連合会の人権擁護大会が開かれました。
 その第1分科会で、「罪を犯した人の更生保護と弁護士会の役割」と題する公開のシンポジウムがありました。

 「更生保護」とは誰でも知っている言葉ではないと思いますが、罪を犯して刑事手続(警察・検察による捜査、刑事裁判)を終えた後のフォローのことを指します。

 公の機関としては、法務省の一部署である「保護観察所」が担っていますし、地域には「保護司」という方がいらっしゃいます。また、「更生保護女性会」という団体に入っていらっしゃる方もおられるのではないでしょうか。

 少年時代に保護観察処分を受けて保護司さんのお世話になった方も、子どもさんが現にお世話になっている方もいらっしゃるでしょう。

 2007年にこれまでの法律の全面改正で「更生保護法」が施行されました。これまでの保護観察では「監視」が弱くて再犯を許してしまっているという批判を受けたものです。
 
 果たして、更生保護の現場ではどのような苦労があるのか? 
 また、「更生保護法」はどう評価すべきか?
 そして、弁護士また弁護士会は更生保護とどのように関わるべきか?

 こういった問題意識の下、私たちは実行委員会を組み、基調報告書を作成しました。
 近畿にある更生保護施設(帰住先のない人を対象とした施設)もほぼ全部訪問しました。

 (ちなみに写真の「更生保護法人泉州寮」は、大阪府内にある、少年のための専門施設です。)

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 シンポジウムでは、大津保護観察所長・吉田研一郎さん、更生保護施設和衷会の施設長・加藤吉宏さん、NPO法人神戸の冬を支える会事務局長・青木しげゆきさん、九州大学大学院法学研究院教授(刑事処遇論)・土井政和さん、そして弁護士であり保護司でもある野口善国さんにパネリストとして参加していただきました。

 また、会場特別報告として、「刑余者支援おおさかネットワーク準備会」と、「京都ダルク」から発言をいただきました。

 京都弁護士会の石側亮太さんと私がコーディネーターをしました。欲張ってテーマを盛り沢山にしたので、時間内にまとめるのが大変でした。終ってホッとしました。

 弁護士は、刑事弁護人の仕事をしますから、更生保護の対象となる人によく関わるのですが、刑事弁護が終了した後にどういったアドバイスをしてあげられるかというと、ほとんど知識がないのです。
 今回のシンポジウムでは、法務省が厚生労働省とともに取り組んでいる「高齢者・障がい者を福祉へつなぐ取組み」「就労支援の取組み」のこと、支援団体が取り組んでいる「居宅を確保し生活保護へつなぐ取組み」のことを広報する機会にもなったと思います。

 また、大阪弁護士会の人権擁護委員会と刑事弁護委員会有志による「押しかけ法律相談」から始まった、更生保護施設和衷会での定例法律相談の取組みも紹介しました。
 借金を負ったまま刑務所へ行き、出てきても「取立に遭うから住民票を移せない、まともな職に就けない」と悲観している人がたくさんいます。
 弁護士の取組みは、少しずつですが始まっています。まずは近畿の各弁護士会が取組みを始めることを決議しましたので、次第に広がっていくと思います。

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November 04, 2008

10月のレポートその2 ハラスメント連続講座始まる【大橋】

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 私が撮っていたケーキの写真はこれです。

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 10月25日(土)から、「いこ☆る」主催で「ハラスメントに負けないために」と題した連続講座が始まりました。

 3回シリーズで、第1回は「これってパワー・ハラスメント?~おかしい!と思う実感を大切に~」というテーマで、企業へのセクハラ・パワハラ研修を手がける「アトリエエム」の三木啓子さんが講師でした。
 研修ビデオを作っておられるので、一部を上映したり、グループワークを入れたりして、さすが工夫された講義内容でした。

 来られている方は、被害当事者も多そうでしたし、具体的な事案で困っている労働組合の方もおられたようです。

 あと、2回目が11月15日(土)に「わたしは悪くない!~ハラスメントへの対処法を考えよう~」というテーマで、フェミニストカウンセラーの周藤由美子さん。

 最後の3回目が11月29日(土)で、「日本にもハラスメント規制法を!~ヨーロッパの先進的取り組みに学ぶ~」というテーマで私が講師です。

 いずれも13時半から16時半ころまで、場所は天満橋のドーンセンターです。

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 この頃、私の以前のブログに「モラル・ハラスメント」をテーマとしたものがあるため、そこから相談の予約に来られる方が増えてきました。

 モラル・ハラスメントは、家庭内の精神的暴力の問題としても使われますし、労働関係でのいわゆる「いじめ」問題を意味するものとしても使われます。
 「職場のモラル・ハラスメントをなくす会」のHPもぜひお訪ねください。定期的な電話相談の体制もとっています。

 会の方に話を伺うと、「電話の多くは『私が受けているのはモラルハラスメントでしょうか?』という質問」だそうです。
 HP上で、「イエス・ノー」で答えていくとモラルハラスメントかどうかが判断できるようなチャートを作ったらどうだろうという話も、出てきていました。

 まだ公式の定義がない、モラルハラスメントとかパワーハラスメントとか言われるものには、被害者も振り回されますが、一方、「加害者」とされた人も振り回されているようです。

 労働組合への相談には、「パワハラ上司」であったことを理由に解雇された人の相談が来ているそうです。
 ご本人にはそんな覚えがなく、嵌められてしまったように思えて被害意識を持ってしまいます。

 それも、パワハラに明確な定義がないことに原因があると言えます。
 そして、ハラスメントの本質は人間の尊厳の侵害、プライドを傷つけられるところにあるのではないかと考えますが、一方で労働現場は総体として「人間の尊厳」など考える余裕がないほどギスギスしている実態があります。これでは「人間の尊厳を傷つけてはいけない」という規範自体が成立し得ません。

 日本においてあるべきハラスメント防止法とはどんなものか、研究していきたいと思います。

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October 26, 2008

10月のレポートその1 日弁連人権擁護大会(富山)【大橋】

 10月2日3日、日弁連人権擁護大会。富山へ行ってきました。
 2日が分科会で、3日が大会です。決議や宣言を採択します。

 2日は3つの分科会のうち、「労働と貧困」をテーマとするところへ参加。
 マスコミの関心も高く、翌日の北日本新聞にはこの分科会の記事が出ていました。

 3日の大会決議では、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」が決議されました。
 どうも日弁連の宣伝力もまだまだで残念ですが、決議内容は画期的だと思います。「正規雇用が原則であり、有期雇用を含む非正規雇用は合理的理由がある例外的場合に限定されるべきであるとの観点に立って、労働法制と労働政策を抜本的に見直すべきである。」と明確にされました。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_3.html

 他に「安全で質の高い医療を受ける権利の実現に関する宣言」も出されました。
 医療事故調査制度に関して、また医療事故を起こさない人的物的態勢(医療関係者の労働条件も含めた)に関して言及した、これも画期的な宣言であると思います。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_2.html
 ちなみに、あと一つは「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」です。
 憲法問題で特にテーマを絞ったものですが、大会では「なぜ9条を守ると明言しないのか」との発言も複数出て、一番審議に長時間を要しました。弁護士の関心が引き続き高いテーマであることは間違いありません。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_1.html
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 そして10月4日5日は、地元富山県弁護士会でプロデュースしてくださった公式観光に、大阪の弁護士複数で参加。
 1日目は、「立山カルデラ」という自然災害の脅威を知ることのできる「砂防博物館」の見学と、立山・室堂を富山県認定の「ナチュラリスト」の方の案内で歩くツアー、そして宇奈月温泉へ。

 天候に恵まれ、色づく立山の景色を堪能しました。写真ではあの360度の壮観は写せない!残念です。

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 宇奈月温泉ではトロッコ列車というものに乗って、黒部の奥の方まで行けるのですが、この切り立った峡谷はすごいです。列車の終点は欅平というところですが、ここから有名な黒部第四ダムまでは工事用の隧道しか通っていないそうで、これがまた温泉地帯を通るため大変な高熱だそうです。
 富山県弁護士会の方から、この隧道を通すための難工事を描いた吉村昭の小説「高熱隧道」の文庫本をいただきました。(希望者多数のため抽選で当たりました)
 戦時中に電力供給を確保するための国策として、沢山の地元の労働者の命を犠牲にしながら進められた難工事のことがよくわかります。
 その成果は今も壮大な黒四ダムとして残っているわけですが、そちらもまた行ってみたいと思いました。

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 宇奈月温泉に泊って夜と朝と温泉に浸かり、トロッコ列車にも乗りました。ちょっと雲が出てきて怪しい天気でしたが。
 宇奈月温泉の泉質は、さらっとしたクセのないものでした。川の水音を聞きながらの露天風呂は気持ちよかったです。

 さて、「宇奈月温泉」と聞くと、民法を勉強した人は「権利濫用」という言葉を思い出すはずです。

 我々弁護士は、「宇奈月温泉木管事件の現場はどこにあるのかな?」と半分冗談、半分本気で期待していたのですが、一部メンバーで「記念碑」のあるところへ連れて行ってもらうことができました!

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 これでもう思い残すことはないと満足いっぱいです。

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 富山はちょうど白エビの季節で、十二分に堪能させていただきました。富山はよいところです。

 そしてナチュラリストの方が「自然のフィトンチッドで精神が安定します。40分自然の中を歩くと、1カ月は持ちます」と言っておられたのも思い出します。

 富山では何時間もフィトンチッドを浴びましたが、そろそろ1カ月、また浴びたくなりました・・

(一方、この4日間のために、その後に仕事を押しやったのも間違いありません。しかし、弁護士にフィトンチッドを吸わせてくださると精神が安定しますので、よろしくご了解くださいますよう。)


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September 29, 2008

勝訴!在日コリアン4世中学生不就学裁判【大橋】

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 ご無沙汰しています、大橋です。

 9月23日24日と出張がてら高知へ行って来ました。
 四万十川の沈下橋と、帰りに淡路島のサービスエリアから撮った明石海峡大橋です。

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 先週の嬉しい判決。

 2001年(中学2年のとき)と2002年(中学3年のとき)の2回にわたり、京都市立近衛中学校に対して「退学届」を提出し校長に受理された在日コリアン4世のA君とその母が、京都市に対し、不就学状態を作り出して外国籍者の義務教育を受ける権利(A君)及び義務教育を受けさせる義務(母)の履行を阻害したとして慰謝料を求めた裁判の判決が、9月26日に大阪地方裁判所で出されました。

 相談を受けた梁英哲弁護士が、急いで内容証明による請求書を送り、時効中断措置をとって2006年に提訴。6名の若手弁護団を組んで、取り組みました。

 A君に33万円の慰謝料を認める勝訴判決でした。

 論点も沢山設定したのですが、裁判所がA君の損害を(少額ながら!)認めた根拠は、A君の意思を校長が直接確認しなかったという点でした。

「原告Aは、2度目の退学届の受理に際して、HN校長から、退学と転学の違い及び退学によって原告Aが被る不利益について説明を受けなかった結果、指導要録の引継ぎや卒業認定の問題等、退学によって被る不利益について十分に検討することができず、原告母による退学届の提出に対して主体的に関与することができなかったことにより精神的苦痛を被ったと認められる。」

 少額の損害認定となった根拠については異議もありますが、ともかく京都市の違法性と損害が認められたのですから、A君のお母さんはようやくいくらか心の重荷が下りたことでしょう。
 息子のためと思って校長から差し出された退学届を書き、この退学届で中学校のフォローがほぼなくなってしまったことに、お母さんはすまない思いでいっぱいだったに違いないと思います。

 母親が、小学校中学校での差別から不登校状態に陥り、退学手続により不就学に陥った息子A君のために、どれだけ奮闘したことか。
 弁護団はその全てを書面にすることは不可能ながら、その一端でも裁判所に認識されるようにと心がけました。

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 あと、この判決で重要な判断部分を引いておきます。

<原告Aの権利(外国籍生徒の就学の権利)の根拠>
①教育基本法及び学校教育法等は、外国人の就学を明確に排除しているわけではない。
②世界人権宣言26条1項、社会権規約13条2項(b)及び児童の権利に関する条約28条1項(b)等の条約規定には、すべての者(外国人を含む。)に対して、中等教育等の機会を与えるべき旨が規定されている。
③永住を許可された在日韓国人について、日韓協定による「教育について妥当な配慮」を払うべきものとされていること。これを受けた文部事務次官通達、文部省初等中等教育局長通知。
④被告京都市が「京都市立学校外国人教育指針」を作成していること。
  ↓
「以上の諸規定、通達等及び原告Aが現に近衛中学校に在籍していたことなどからすると、憲法26条の規定する教育を受ける権利が外国人に及ぶかどうかという問題は措くとしても、原告Aは、引き続き近衛中学校に在籍し続け、あるいは、転学に当たっては指導要録等の引継ぎを受けるなどして、卒業の際には卒業認定を受けるべき法的利益を有していたと認めるのが相当である。」

**おっと! 「憲法26条の規定する教育を受ける権利が外国人に及ぶかどうかという問題は措く」ことにしてしまったのが残念ですが。

 「法的利益」が認められたことは評価できます。

 以上、速報としてお知らせします。


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