行政事件

September 29, 2008

勝訴!在日コリアン4世中学生不就学裁判【大橋】

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 ご無沙汰しています、大橋です。

 9月23日24日と出張がてら高知へ行って来ました。
 四万十川の沈下橋と、帰りに淡路島のサービスエリアから撮った明石海峡大橋です。

*~*~*~*~*

 先週の嬉しい判決。

 2001年(中学2年のとき)と2002年(中学3年のとき)の2回にわたり、京都市立近衛中学校に対して「退学届」を提出し校長に受理された在日コリアン4世のA君とその母が、京都市に対し、不就学状態を作り出して外国籍者の義務教育を受ける権利(A君)及び義務教育を受けさせる義務(母)の履行を阻害したとして慰謝料を求めた裁判の判決が、9月26日に大阪地方裁判所で出されました。

 相談を受けた梁英哲弁護士が、急いで内容証明による請求書を送り、時効中断措置をとって2006年に提訴。6名の若手弁護団を組んで、取り組みました。

 A君に33万円の慰謝料を認める勝訴判決でした。

 論点も沢山設定したのですが、裁判所がA君の損害を(少額ながら!)認めた根拠は、A君の意思を校長が直接確認しなかったという点でした。

「原告Aは、2度目の退学届の受理に際して、HN校長から、退学と転学の違い及び退学によって原告Aが被る不利益について説明を受けなかった結果、指導要録の引継ぎや卒業認定の問題等、退学によって被る不利益について十分に検討することができず、原告母による退学届の提出に対して主体的に関与することができなかったことにより精神的苦痛を被ったと認められる。」

 少額の損害認定となった根拠については異議もありますが、ともかく京都市の違法性と損害が認められたのですから、A君のお母さんはようやくいくらか心の重荷が下りたことでしょう。
 息子のためと思って校長から差し出された退学届を書き、この退学届で中学校のフォローがほぼなくなってしまったことに、お母さんはすまない思いでいっぱいだったに違いないと思います。

 母親が、小学校中学校での差別から不登校状態に陥り、退学手続により不就学に陥った息子A君のために、どれだけ奮闘したことか。
 弁護団はその全てを書面にすることは不可能ながら、その一端でも裁判所に認識されるようにと心がけました。

*~*~*~*~*

 あと、この判決で重要な判断部分を引いておきます。

<原告Aの権利(外国籍生徒の就学の権利)の根拠>
①教育基本法及び学校教育法等は、外国人の就学を明確に排除しているわけではない。
②世界人権宣言26条1項、社会権規約13条2項(b)及び児童の権利に関する条約28条1項(b)等の条約規定には、すべての者(外国人を含む。)に対して、中等教育等の機会を与えるべき旨が規定されている。
③永住を許可された在日韓国人について、日韓協定による「教育について妥当な配慮」を払うべきものとされていること。これを受けた文部事務次官通達、文部省初等中等教育局長通知。
④被告京都市が「京都市立学校外国人教育指針」を作成していること。
  ↓
「以上の諸規定、通達等及び原告Aが現に近衛中学校に在籍していたことなどからすると、憲法26条の規定する教育を受ける権利が外国人に及ぶかどうかという問題は措くとしても、原告Aは、引き続き近衛中学校に在籍し続け、あるいは、転学に当たっては指導要録等の引継ぎを受けるなどして、卒業の際には卒業認定を受けるべき法的利益を有していたと認めるのが相当である。」

**おっと! 「憲法26条の規定する教育を受ける権利が外国人に及ぶかどうかという問題は措く」ことにしてしまったのが残念ですが。

 「法的利益」が認められたことは評価できます。

 以上、速報としてお知らせします。


February 18, 2008

「行政訴訟の新しい潮流」【大橋】

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 この波打った冊子はいったい何でしょうか?

 ご説明しましょう。

^*^*^*^*^*^

 この冊子は、大阪弁護士会の中にある6会派の一つ、「友新会」という団体の研究委員会が今年の1月に発行したものです。
 タイトルは「行政訴訟の新しい潮流を読むー最高裁判例を中心にー」。

 表紙の2人はどちらも大阪弁護士会所属の弁護士で、左が水野武夫会員、右が滝井繁男会員です。

 行政事件訴訟法が2004年に改正されたのですが、これについて、行政訴訟を専門としてきた水野会員と、改正の前後に最高裁判所裁判官を務めていた滝井会員が語り合う、という、なかなかビッグな研修会があったのです。
 研修会は昨年2月にあったようで・・冊子の作成には1年弱掛かってしまったのですね・・

^:^:^:^:^:^

 さて、ではどうしてこの冊子は波打っているのか?

 私がお風呂に浸かりながら読んだからです。

 こうした研修会などの冊子はほとんど毎日のように弁護士会のレターケースに配布されます。

 各会派が競い合うように研修会をしており、その成果を無料で全会員に配ります。

 会派の力量を表すものとして、宣伝代わりなのでしょう。

 また、日弁連の月刊誌「自由と正義」や、大阪弁護士会の月刊誌「大阪弁護士会報」、各委員会からの広報紙も来ますし、弁護士団体の発行する機関紙もあります。

 そのおかげで、私たちは新法や最新判例などの知識を手軽に得ることができています。

 しかしこれをいつ読むのか? 事務所でこれを読む時間はほとんどありません。

 カバンの中に突っ込んでおいて、電車の中で読むか、家に持ち帰ってお風呂の中で読むか。

 かくして、冊子はシワシワになります。

+;+;+;+;+

 行政訴訟は、私にとって割合身近です。

 大阪市を相手に使用不許可処分取消訴訟をしたり、国を相手に難民不認定処分取消訴訟をしたりしています。
 
 そのうち、生活保護の処分に関して訴訟を起こすこともあるだろうし、労災不認定処分の取消しの訴訟を起こすこともありそうです。

 そこで興味深く冊子を読んでいて、これは覚えておこうと思ったところをご紹介しておきます。

 改正後の行政事件訴訟法では、4条後段の当事者訴訟の規定の中に、「確認の訴え」という明文が挿入されました。これは例示列挙で、挿入される前から「確認訴訟は認められている」という解釈だったのですが、明文化されたことで認知度が増したということになります。

「これまで弁護士は、行政事件だというと、なにか処分がないかとまず探します。何が処分か、どの処分を争うのかという発想でやるのだけれども、無理に処分と言わなくてもいいではないか。処分性が認められないときは、確認訴訟でやればよろしいということなのです。」

 そして具体例として挙げられているのが、税金の充当です。
 還付請求をしたところ、税務署が他の滞納税金に充当すると言って、返してくれない。
 このときにどういう訴訟を起こすか。
 「還付」が処分行為かどうか、争いがあるそうです。
 処分行為だとすれば、(以前は行政庁である税務署長を被告に)還付請求拒否処分取消訴訟を起こし、これに勝訴してから還付を請求しないといけない。
 処分行為でなければ、国を被告に税金分の不当利得返還を求める訴訟を起こさないといけない。
 改正後の行政事件訴訟法は、被告を行政庁ではなく行政主体(国や地方公共団体)としました。
 その結果、税金を返してほしい人は、国を被告として、「還付の拒否処分を取り消す」及び「被告国は○円を支払え」の2本建で訴訟を起こせば、一手間でどちらかの請求が認められることになったのだそうです。

 今、確認訴訟を使おうという仕事は手元にないけれど、いつか使うときもあるかもしれないカードとして、頭の隅にしまっておきます。

 使わないと忘れてしまうのが悲しいですが・・
 
 

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