老後

May 01, 2006

リバース・モーゲッジ~財産を残すのが最善か~【松井】

1 4月30日付けの日経新聞朝刊で「リバースモーゲージって何」とリバースモーゲッジの特集が組まれていた。
 私がこの仕組みを知ったのは、確か、野口悠紀雄教授の本でだったと思う。
 野口悠紀雄教授のホームページ上のコラムでもかなり以前に紹介されているので、おそらくそうだろう。
 http://www.noguchi.co.jp/archive/yomiuri/yom39.html

2 上記でも紹介されているように、要は、不動産を抵当に入れてそれを担保にお金を受け取ることだけど、その仕組みが日本で従前知られている「抵当」とは大きく異なる。
 通常の抵当は、まさに不動産を担保にして何千万円というお金を借り入れ、何年ローンといった形で月々の返済を行い、この月々の支払いが行えなくなったら、不動産を売って手放し、この代金での返済を迫られるというものだ。不本意に不動産を手放すことを余儀なくされる。
 この不動産が、自宅だったら悲惨だ。以前紹介した判例の「情義的な保証人」の事例もまさに、親族の借金のために唯一の財産である自宅を抵当に入れた70歳過ぎの人が自宅を手放さざるを得ないか否かが争われたものである。
 また、ついに問題が世間一般化したアイフルの不動産担保貸付についても同じことだ。安易に不動産を担保にとっていればそれですぐに回収できると、明らかに認知症の人にまで不動産を担保にお金を貸し付けていた事例だ。
 つまり、通常、今暮らしている自宅不動産を手放すということはその人の人生にとって非常に大きな影響、ダメージを与えることとして認識されているのである。

3 では、リバース・モーゲッジはいわゆる不動産担保貸付と何が違うのか。不動産を担保にお金を受け取る点は同じである。この点で、モーゲッジ、つまり「抵当」という仕組みであることには変わりない。
 通常の抵当と違うのは、最初にドカンと何千万円というお金を借り入れ、それをちびちびと返済していくことが予定されているのではなく、逆に、「リバース」ということで、ちびちびとお金の借り入れを受けて、最後にドカンと返済することが予定されているという点である。
 最後にドカンと返済するというのはどういうことか。
 抵当に入れた不動産を売却して返済することが初めから予定されているのである。
 貸し付ける方は、変化する不動産の担保価値を見定めながら、年金のように、月々、お金を貸し付けるのである。
 じゃあ、唯一の資産である自宅を抵当に入れた場合、いつその不動産を手放して売却し、借金の返済に充てるのか?
 自宅が要らなくなったとき、である。
 つまり、住人が死亡したとき、売却して、それまでの借金を代金から返済するという制度である。
 この制度であれば、暮らしている不動産を手放さないといけないという憂き目に遭うことはない。
 むしろ、手持ちの無抵当のまっさらなきれいな不動産を自分が生きているうちに有効利用、消費できることになる。
 困るのは誰か。せいぜい、その不動産の取得をあてにしていた相続人くらいだろう。

4 相続人に自宅不動産を取得させる必要はないと思う者にとっては、これほど資産活用として有効な制度はないだろう。
 日経新聞の記事によれば、東京都の武蔵野市などが制度としてこのリバース・モゲッジを運用しているらしい。
 また民間機関でも、中央三井信託銀行や、東京スター銀行が実施しているらしい。
 この制度が普及するかどうかは、民間金融機関の商品開発能力によるだろう。
 記事に触れられていたように金融機関がこの制度で収益をあげるにはリスク管理能力が求められる。
 ①不動産価格下落リスク
 ②金利上昇リスク
 ③長命リスク
 バブル時のように、不動産価格は常に右肩上がりとの根拠のない算段に基づいて単に不動産を担保にとっておけば間違いないだろうというのではやっていけない商品だ。

5 ところで、韓国はソウルなどマンションが多いけどその一戸あたりの平米数は日本の平均と比べものにならないくらい広いという。そのようなマンションを多くの人が手に入れることが可能となっているのは独自の金融システムがあることによるということを以前、韓国通の知人から聞いた。どんなシステムだったか肝心なことは忘れてしまったので一度、きちんと調べておかないとと思うのだが。
 つまりは一国の金融商品の品数の豊富さは、その金融機関を利用する消費者のライフスタイルに大きな影響力を持つということである。
 不動産を担保にとったり、普通の会社勤務の個人を何も考えずに連帯保証人にとることだけが能じゃないということなんでしょう。
 新聞記事によれば、保証協会などは、この4月から、原則的に個人を連帯保証人にとることは止めたそうです。
 「アンフェアなのは誰か~情義的な保証人~」で触れた、教授の指摘がまさに現実化しようとしているのを感じます。
 思考の枠を自分で限界づけることはないということ。金融商品ももっといろいろとあっていいのではないかということ。
 手っ取り早いのは、諸外国の例を見てみることなんでしょう。

6 最近、話題の貸付の上限金利引き下げ論ですが、先日、海外の法制事情に詳しい先輩弁護士から聞いたところでは、いわゆる欧米では、100万円以下の貸付のときの金利は日本の29.2%どころかもっと高いそうです。日本は低い、と言っていました。では、海外では過剰取り立て問題はないのか、あったとしたらどう対処されているのか。
 このへんも考えどころではないかと思っています。
おわり

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February 26, 2006

老後の財産管理 【松井】

1 
 先週2月21日火曜日、NHK大阪の「ぐるっと関西おひるまえ」という番組に出演させてもらいました。
 タレントさん、アナウンサーを間近に見ていつも思うのは、場をいかに見せるかということに関して、本当にプロの人たちだということです。その仕事に対する姿勢、能力に感動します。刑事裁判でももうすぐ裁判員制が導入されます。「人は見た目が9割」という新書本が出ていますが、何を話すのかではなく、いかに話すか、どのように話すかで印象・判断が決まるのではないかといわれ、弁護士会でもNHKのアナウンサーを呼び、話し方研修などが行われています。こういった方向性について良い面もあれば、悪い面もあるんだろうけど、テレビ業界という全く違う世界をかいま見ることは刺激になります。

2 
 で、何のために番組に出演したかというと「老後の財産管理」について語るためです。数年後には、4人に一人が65歳となるという日本です。単身、あるいは老夫婦で暮らすお年寄りがさらに増えることは明らかです。被害の実態として、お年寄りの方が悪徳訪問商法などの被害に遭いがちです。また、このような第三者でなくても、認知症を発症したりして、抗う気力等が低下していると、自身の子どもや親族などから預金や保険を解約され、お金を持って行かれる被害が多いという実態があります。悲しいことですが。
 そこで老後の財産を管理する、このような被害に遭わないためにどのような方策があるのかということを法的な視点が話をしてきました。
 
 一つは、各市町村にある社会福祉協議会という団体が行っている財産管理サービスの利用です。年間数千円で、通帳や権利証、印鑑などを保管してくれます。これで預かっておいてもらえれば、定期預金を解約しようというときでも、預かってくれる側が何か変だなと思ったら声をかけてもらえ、詐欺被害等に遭わずに済む可能性が増えます。
 もう一つは、弁護士などの資格ある専門家による財産管理サービスです。これも似たような制度があります。
 そしてもう一つは、平成12年に施行された制度、「任意後見制度」の利用です。これは意思能力に問題がないとき、予め、自分が認知症などを発症したときのために、誰に、何を頼むのかを決めておく制度です。番組ディレクターの方は、「財産管理のオーダーメイド・サービス」と表現しており、なるほどなあと思いました。万が一のときの保険のようなものです。
 任意後見制度ですと、不動産売却といった手続きまで依頼しておくことができます。自宅を処分し、専門施設への入所希望する場合などはこの制度の利用が望ましいといえます。

3 
 このような事前の対策をとっていなかったとき、どうなるかというと、例えば、田舎で一人暮らしをしている高齢の母が、詐欺被害に遭っていたという場合、被害を回復させるにはまず契約当時、お母さんの意思能力に問題があったということを立証しなければならなくなります。
 また、定期預金を解約して施設に入所する費用を用意しようと思っても、他人の財産ですから、勝手に解約して使ってしまうことは出来ません。母の同意があればいいのですが、意思能力に問題がある方の同意は効力が認められません。
 結局、成年後見の申立を家庭裁判所に行わなければならなくなります。この決定が認められるには早くて3か月ほどはかかります。
 こういった不都合を防ぐため、元気なうちにとれる対策をとっておきましょうという話しでした。


 これは遺言についてもいえることです。明らかに残された相続人の間で紛争が起こるであろうケースというものがあります。遺言で対策をと相談の際にアドバイスさせていただくのですが、弁護士費用を考えて躊躇されるようです。しかし、相続が起きてトラブルが起きてから弁護士を依頼した方がはっきりいって費用はかかります。着手金と共に報酬金の請求があるからです。しかし遺言作成の依頼であれば報酬金はかかりません。
 そういったことも説明させていただくのですが、やはり無形のものに対して10万円以上の費用を支払うということについては抵抗があるようです。残念ながら。
 従前、弁護士の新規登録者数は1000人程度でした。私たちのときは確か700人程度でした。それが今後、毎年2000人を超える弁護士が誕生することになります。
 価格競争が起こるのは目に見えていますが、安かろう悪かろうとなることのないことを祈っています。
 
5 
 話が脱線しましたが、「老後の財産管理 備えあれば憂いなし」といことで。思うに、日頃からご近所、親族などと円満なコミュニケーションを欠かさないことが本当の備えになるかと思います。
                                   おわり
 

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