弁護団活動

October 26, 2008

10月のレポートその1 日弁連人権擁護大会(富山)【大橋】

 10月2日3日、日弁連人権擁護大会。富山へ行ってきました。
 2日が分科会で、3日が大会です。決議や宣言を採択します。

 2日は3つの分科会のうち、「労働と貧困」をテーマとするところへ参加。
 マスコミの関心も高く、翌日の北日本新聞にはこの分科会の記事が出ていました。

 3日の大会決議では、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」が決議されました。
 どうも日弁連の宣伝力もまだまだで残念ですが、決議内容は画期的だと思います。「正規雇用が原則であり、有期雇用を含む非正規雇用は合理的理由がある例外的場合に限定されるべきであるとの観点に立って、労働法制と労働政策を抜本的に見直すべきである。」と明確にされました。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_3.html

 他に「安全で質の高い医療を受ける権利の実現に関する宣言」も出されました。
 医療事故調査制度に関して、また医療事故を起こさない人的物的態勢(医療関係者の労働条件も含めた)に関して言及した、これも画期的な宣言であると思います。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_2.html
 ちなみに、あと一つは「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」です。
 憲法問題で特にテーマを絞ったものですが、大会では「なぜ9条を守ると明言しないのか」との発言も複数出て、一番審議に長時間を要しました。弁護士の関心が引き続き高いテーマであることは間違いありません。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_1.html
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 そして10月4日5日は、地元富山県弁護士会でプロデュースしてくださった公式観光に、大阪の弁護士複数で参加。
 1日目は、「立山カルデラ」という自然災害の脅威を知ることのできる「砂防博物館」の見学と、立山・室堂を富山県認定の「ナチュラリスト」の方の案内で歩くツアー、そして宇奈月温泉へ。

 天候に恵まれ、色づく立山の景色を堪能しました。写真ではあの360度の壮観は写せない!残念です。

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 宇奈月温泉ではトロッコ列車というものに乗って、黒部の奥の方まで行けるのですが、この切り立った峡谷はすごいです。列車の終点は欅平というところですが、ここから有名な黒部第四ダムまでは工事用の隧道しか通っていないそうで、これがまた温泉地帯を通るため大変な高熱だそうです。
 富山県弁護士会の方から、この隧道を通すための難工事を描いた吉村昭の小説「高熱隧道」の文庫本をいただきました。(希望者多数のため抽選で当たりました)
 戦時中に電力供給を確保するための国策として、沢山の地元の労働者の命を犠牲にしながら進められた難工事のことがよくわかります。
 その成果は今も壮大な黒四ダムとして残っているわけですが、そちらもまた行ってみたいと思いました。

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 宇奈月温泉に泊って夜と朝と温泉に浸かり、トロッコ列車にも乗りました。ちょっと雲が出てきて怪しい天気でしたが。
 宇奈月温泉の泉質は、さらっとしたクセのないものでした。川の水音を聞きながらの露天風呂は気持ちよかったです。

 さて、「宇奈月温泉」と聞くと、民法を勉強した人は「権利濫用」という言葉を思い出すはずです。

 我々弁護士は、「宇奈月温泉木管事件の現場はどこにあるのかな?」と半分冗談、半分本気で期待していたのですが、一部メンバーで「記念碑」のあるところへ連れて行ってもらうことができました!

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 これでもう思い残すことはないと満足いっぱいです。

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 富山はちょうど白エビの季節で、十二分に堪能させていただきました。富山はよいところです。

 そしてナチュラリストの方が「自然のフィトンチッドで精神が安定します。40分自然の中を歩くと、1カ月は持ちます」と言っておられたのも思い出します。

 富山では何時間もフィトンチッドを浴びましたが、そろそろ1カ月、また浴びたくなりました・・

(一方、この4日間のために、その後に仕事を押しやったのも間違いありません。しかし、弁護士にフィトンチッドを吸わせてくださると精神が安定しますので、よろしくご了解くださいますよう。)


September 29, 2008

勝訴!在日コリアン4世中学生不就学裁判【大橋】

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 ご無沙汰しています、大橋です。

 9月23日24日と出張がてら高知へ行って来ました。
 四万十川の沈下橋と、帰りに淡路島のサービスエリアから撮った明石海峡大橋です。

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 先週の嬉しい判決。

 2001年(中学2年のとき)と2002年(中学3年のとき)の2回にわたり、京都市立近衛中学校に対して「退学届」を提出し校長に受理された在日コリアン4世のA君とその母が、京都市に対し、不就学状態を作り出して外国籍者の義務教育を受ける権利(A君)及び義務教育を受けさせる義務(母)の履行を阻害したとして慰謝料を求めた裁判の判決が、9月26日に大阪地方裁判所で出されました。

 相談を受けた梁英哲弁護士が、急いで内容証明による請求書を送り、時効中断措置をとって2006年に提訴。6名の若手弁護団を組んで、取り組みました。

 A君に33万円の慰謝料を認める勝訴判決でした。

 論点も沢山設定したのですが、裁判所がA君の損害を(少額ながら!)認めた根拠は、A君の意思を校長が直接確認しなかったという点でした。

「原告Aは、2度目の退学届の受理に際して、HN校長から、退学と転学の違い及び退学によって原告Aが被る不利益について説明を受けなかった結果、指導要録の引継ぎや卒業認定の問題等、退学によって被る不利益について十分に検討することができず、原告母による退学届の提出に対して主体的に関与することができなかったことにより精神的苦痛を被ったと認められる。」

 少額の損害認定となった根拠については異議もありますが、ともかく京都市の違法性と損害が認められたのですから、A君のお母さんはようやくいくらか心の重荷が下りたことでしょう。
 息子のためと思って校長から差し出された退学届を書き、この退学届で中学校のフォローがほぼなくなってしまったことに、お母さんはすまない思いでいっぱいだったに違いないと思います。

 母親が、小学校中学校での差別から不登校状態に陥り、退学手続により不就学に陥った息子A君のために、どれだけ奮闘したことか。
 弁護団はその全てを書面にすることは不可能ながら、その一端でも裁判所に認識されるようにと心がけました。

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 あと、この判決で重要な判断部分を引いておきます。

<原告Aの権利(外国籍生徒の就学の権利)の根拠>
①教育基本法及び学校教育法等は、外国人の就学を明確に排除しているわけではない。
②世界人権宣言26条1項、社会権規約13条2項(b)及び児童の権利に関する条約28条1項(b)等の条約規定には、すべての者(外国人を含む。)に対して、中等教育等の機会を与えるべき旨が規定されている。
③永住を許可された在日韓国人について、日韓協定による「教育について妥当な配慮」を払うべきものとされていること。これを受けた文部事務次官通達、文部省初等中等教育局長通知。
④被告京都市が「京都市立学校外国人教育指針」を作成していること。
  ↓
「以上の諸規定、通達等及び原告Aが現に近衛中学校に在籍していたことなどからすると、憲法26条の規定する教育を受ける権利が外国人に及ぶかどうかという問題は措くとしても、原告Aは、引き続き近衛中学校に在籍し続け、あるいは、転学に当たっては指導要録等の引継ぎを受けるなどして、卒業の際には卒業認定を受けるべき法的利益を有していたと認めるのが相当である。」

**おっと! 「憲法26条の規定する教育を受ける権利が外国人に及ぶかどうかという問題は措く」ことにしてしまったのが残念ですが。

 「法的利益」が認められたことは評価できます。

 以上、速報としてお知らせします。


June 03, 2008

入管職員暴行事件・嬉しい逆転勝訴【大橋】

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 5月29日、国を相手にした国家賠償請求訴訟で、一審敗訴を逆転させた勝訴判決を得ることができました。

 西日本入管センターに収容されていた中国人男性が、電話を掛ける時間がずれ込んだことを大声で抗議したことから入管職員に娯楽室へ連れ出されて他の収容者から見えないところで床に組み伏せられました。さらにこれを大声で抗議したところ、保護室へ両手両足を掴まれて連れて行かれ、途中で手足を突っ張って暴れたことから職員による「制圧」を受けました。そのことで男性は1年以上にわたる治療を要する腰痛を生じたことから、国家賠償請求訴訟を起こしたものです。

 この事件は2002年に起こったもので、訴訟を起こしたのが2004年。一審判決が2006年。そして控訴審判決が2008年と、このごろとしてはなかなか時間の掛かった訴訟でした。

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 私は提訴の前に行われた「証拠保全手続」には参加していませんが、入管側は、「制圧」行為を録画したビデオテープの提出に何やかやと抵抗し続け、1日で終わるはずの手続を3日続行したと聞いています。

 なぜビデオテープがあるのか不思議に思われるでしょうか?

 入管職員は、制圧行為をするときには、収容者がいかに規律違反をしたかを示すために、その状況をハンディカメラで録画し、法務省へ報告しているということなのです。

 法務省には「それでよし」となるものが、裁判所ではそうならないことを予測したのでしょうか・・・その抵抗。

 そして第一審。

 原告男性は、既に退去強制で中国に帰国しているのですが、最も「制圧」行為の激しかったとき、誰に何をされたのかということを全く覚えていないのだそうです。
 第5肋骨(胸と脇の下の間あたり)が折れているのはレントゲンではっきりしていましたが、第12肋骨(腰の上あたり)については当時の主治医がレントゲンを意識して撮っておらず、確定診断がありませんでした。

 それに対して、入管の職員たちは、揃って詳細な陳述書を提出し、尋問にもそつなく答えていき、「制圧」の実態がなかなか明らかにできません。

 証拠保全したビデオは、職員の大声をよく録音しているのですが、最も大事なところでビデオがなぜか後退して他のところを写し、撮影者がようやく戻っていくと、既に原告男性は保護室の床で伸びている、というものです。

 証拠が足りないのか?第一審は、「制圧」行為が正当であった(原告男性が暴れたのを抑えただけ)として原告の請求を棄却しました。

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 新規まき直しの控訴審。
 控訴理由を一生懸命考える中で、たまたま相談した整形外科医がビデオを見て「これはひどい。絶対に膝落としを腰に入れていると思いますよ。肋骨の他にきっと横突起も折れていると思いますけど」と言ってくれたのが転機となりました。

 横突起というのは、肋骨の下、腰椎の両側に小さく突き出ている骨です。背骨にくっついている骨ですから、肋骨のように外側からの力で容易に折れるというようなものではないそうです。

 それでレントゲンを見せると、「やはり折れていますよ。腰の上の肋骨と横突起も」!ということになりました。
 不思議なのは、これまで数人の整形外科医の診断を受けてきているのに、横突起骨折の存在を指摘したのはこのお医者さんが初めてだったということです。それだけに国も抵抗してきます。

 そして控訴審は「横突起まで折れているのか否か」を巡り、医師の意見書の応酬による立証合戦となりました。

 裁判所が国に和解を打診したとき、我々は「もしかすると?」と思いました。

 しかし国は和解を蹴りました。

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 そして控訴審判決。

 入管職員の行き過ぎの「制圧」行為を認定したくだりです。

 「(控訴人が抵抗したので)この様子を見た本件職員らは、にわかに激高して極度の興奮状態に陥り、「暴れるな言うとんじゃお前は」、「じっとせんか、こら」、「うら」、「まだやるんか、おら」、「おお」、「まだすんかこら」、「お前は何いちびっとんじゃこら」、「お前は調子のんなこら」、「まだやるんか、おお」などと凄みのあるどすのきいた大声で語気鋭く申し向けながらその場で控訴人を床に押さえつけて制圧した。この間おおよそ数十秒間であり、控訴人は、あたかも本件職員らの激しい怒声にタイミングを合わせこれに呼応するかのように、「痛い、ああ・・・痛いよ、ああ・・・痛い、ああ・・・痛い」、「痛い、痛いよ、あー」などと断続的に苦痛に耐えかねた断末魔の悲鳴に近いような叫び声を数回にわたって上げている。」

 ビデオはまさにこのようなものなのです。

 どうして第一審はこれを見て「制圧行為の行き過ぎ」と思わなかったのか理解に苦しみます。

 裁判所の心証は、「骨が3箇所も折れている」ことから一気に深まったのでしょう。

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 控訴審判決は、治療費実費と、慰謝料35万円と、弁護士費用5万円を認めました。

 嬉しい、しかし安い。 複雑な気持ちの勝訴判決でした。


May 20, 2007

「パッチギ!Love&Peace」を見ました【大橋】

 松井はいつも「舟和」の芋ようかんをすごく喜んでくれるので、「買ってきた甲斐があった」と嬉しくなります。
 今度、日弁連定期総会へ行くそうなので、東京駅構内で芋ようかんが買える店の場所を教えてあげました。

 こんな話を書くと、うちの事務所でもドラマ「7人の女弁護士」みたいに事務所で三時のお茶をほっこりしているように思われるかも知れません。
 ところが。一日で数分しか顔を合わせないこともあるくらい、弁護士は出たり入ったりバタバタしています。特に私の方でしょうか。
 (事務員もバタバタしています。うちは忙しい事務所のようです。残業はさせないで弁護士で何とかする方針なので、「時間内処理」を頑張ってくれて余計に密度が濃くなっているのだと思いますが。)

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 5月19日は、表題の映画の封切りでした。
 第1作「パッチギ!」は、私の周りでも評判が大変高かったのですが、第2作が出ると聞いて期待半分、不安半分でした。ちょうど用事のない週末で、早速観てきました。
 HPで座席予約してレイトショー、という初体験もしました。レイトショーというのは500円安くなるのですね。予約料が100円掛かりましたが。
 しかし、郊外まで出たからか、レイトだったからか、初日なのにガラガラでした。これまたびっくり。

 こうした映画評の常として、あらすじを詳細に書くのはタブーですよね。
 ということで、残念なのですが、あらすじは書きません。

 第1作を観た方に、比較としてわかっていただけるよう、映画評を短く書いてみます。

 総評:お勧めします。

 私は第1作より気持ちよく観られました。
 今回の主人公は、アンソンよりもキョンジャです(キャストは代わりました)。
 女性の強さが、胸に迫ります。
 時代設定は1974年と過去ですが、現在でも石原東京都知事が平気で発言するような民族差別発言が吐かれます。
 日本における戦争賛美映画を、旧植民地の人々がどういう思いで観るのかが描かれます。
 朝鮮半島の人々が日本軍に「弾よけ」として徴用され南方へ送られ死んでいく状況、徴用から逃げて生き延びた人がいたこと、戦争の後に済州島で起こった四三事件のことについて、少し描かれますが、まるで知らなければわからないかもしれません。
 明確な反戦映画です。
 
 男性の殴り合いシーンは、やっぱり冒頭と最後に派手に出てきます。血まみれ・・これは外せないのかなあ?

 豪華脇役陣がすごいです。
 舞台が東京の枝川だというのもタイムリーです。(「枝川裁判」)

 ぜひ観てください。

October 25, 2006

マクガワン35万円高裁判決、闘いはこれから【大橋】

 大橋が以前にご紹介していた、アフリカ系アメリカ人マクガワン氏の入店拒否事件で、10月18日、大阪高裁で控訴審判決がありました。
(↓以前のブログ記事) 
http://osaka-futaba.cocolog-nifty.com/futaba/2006/01/index.html
 結果は、マスコミに注目しておられた皆さんはご存じでしょう。1審判決を破棄し、35万円の金銭支払を命ずる一部勝訴判決でした。

 実はこの日、私は法廷に入るのが遅れてしまい(というより、判決の言い渡しが1分ほど早かった)、入ってみると法廷内が静まりかえっていました。まだかな?と思ったら裁判官が立ち上がりました。
 弁護団の1人の弁護士が、「勝ちましたよ!」とにっこり笑ってくれたので、ともかく肩を叩き返して喜びました。
 マクガワンさんと弁護士は握手したり抱き合ったり。
 私はこういうとき、おくてで、後の方で様子を見ているのです。

 しかし・・全体に静かな退場です。「で、いくら?」「35万円です」
 法廷では主文しか読み上げませんので、「どうして35万円なのか」は判決文をもらって読まないとわからないのです。

 そこで弁護士たちは書記官室に行き、判決文の受け取りを行いました。
 少し待ち時間があり、「どう思う?」と予想をしました。
 「黒人差別を認めずに単なる入店拒否をしただけだというなら、30万円にもなるはずがない。黒人差別は認められていると思う」と1人の弁護士。
 「いや、これまでに人種差別を認定した判決は、100万円を超えている。きっと黒人差別は認定していない。」と他の弁護士。

 ようやく判決文が手に入り、1人が早口で読み上げます。30分後には記者会見を予定していたため、ゆっくりしていられません。
 内容は・・黒人差別を認定していませんでした。現場で「黒人キライ」という言葉を店主が吐いたかどうか、直接の証拠もないので、マクガワン氏の証言と店主のかつて黒人に被害を受けた経験(悪感情)だけしか認定材料がありません。マクガワン氏の証言については「日本に11年も住んでいて『黒人』という言葉を聞いたことがないのは不自然」「日本語能力からすると聞き誤りもあり得る」とされました。店主の黒人差別感情については「それが行為として客観的、外形的に明白であるとは言えない以上、当該行為をその感情故の人種差別的行為と認定することには慎重であるべきである」という見地から、人種差別的意図をもって行われたと認めるには不十分だとされました。
 では、どうして35万円(うち弁護士費用として5万円)という判決が出たのか。それは、お客かもしれない人に対する対応としては「その仕草(腕を振って追い払う)を含めて考えると、健全な社会通念を逸脱した一方的かつ理不尽な攻撃的行為であって、このような対応をされた者にとっては、自己を貶められたように感じ、強度の不快感を抱くに至るであろうことは容易に推測できるのであって、控訴人もまた同様であったものと推認することができる」からだということでした。
 店の前から腕を振って追い払われた、そのことに対する慰謝料として30万円が認められるのは、かなり異例であると言えるでしょう。
 この30万円は、裁判官が、「マクガワンさん、お気持ちはよくわかりますよ、しかし判決には証拠が要るから、これが限界です。せめて金額で勘案させてもらいました。」というアピールを込めて算定した金額だと言えるでしょう。

 ともあれ、第1審よりはよほど血の通った審理と判決が出たものと思います。
 マクガワンさんも、そのことに気を和ませたのでしょう。「この判決は、終わりではなく、始まりです」と記者会見で述べていました。翌日、「上告はしない」と連絡をしてこられました。
 マクガワンさん、お疲れ様でした。弁護士費用はもちろん5万円で済んでいません。大変な労力と心労を重ねた2年間だったと思います。しかし、貴方の行動が一つの波を日本の国に起こしてくれたのです。大きな支援の輪もできました。差別を我慢してきた人たちを力づける成果としていきたいと思います。

June 26, 2006

靖国訴訟ー戦没者の追悼をめぐって【大橋】

 6月は、偶然にも戦没者の追悼をめぐる2つのできごとがありました。

 一つは、6月5日・6日に北海道護国神社(旭川市)での例大祭を見学したことです。
 
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 この例大祭は、昨年にこれを見学した高橋哲哉教授(「靖国問題」の著者)が「自衛官が堂々と制服で参列している」「ボーイスカウトが『同期の桜』の舞踊を披露する」ことに驚いて、同じく昨年の「政教分離訴訟全国交流集会」での講演で話をされたものです。
 それで、今年の「全国交流集会」はわざわざこれを見るために旭川で開催されたのでした。

 ところが、今年の例大祭は、『同期の桜』がなくなり、やや肩すかしを食らってしまったのでした。

 例大祭には、北海道の各地から、遺族会がそれぞれに旗を掲げて参列されていました。
 年に一度、戦争で肉親を失った遺族がここに来て、「英霊」になった肉親を偲ぶのでしょう。
 そこには、やはり、舞台装置として「国家の関与」は不可欠なのだろうと実感しました。
 なぜ「英霊」なのか。国家が祀ってくれるからです。
 故人を偲ぶ追悼ならば、その信じる宗教に従って祀ればよいのです。「英霊」にするには、国家の関与が不可欠なのです。
 しかし、このしくみを排除するためにこそ、憲法20条の政教分離原則は制定されたはずなのです。


 さて、2つめは、突然、6月23日に小泉首相靖国神社参拝違憲アジア訴訟(大阪第1次訴訟)の最高裁判決が出されることになり、最高裁判所まで行ってきたことです。
 弁護士をしていても、最高裁の法廷で判決を聞く機会などそうそうありません。私は、初めてでした。
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 「要塞のような」とよく形容されるグレーのモダン建築です。
 おまけに事件が事件だからか(とはいえ、こちらが逆転勝訴することはあり得ない状況でしたので、そんなに右翼が押し寄せる状況ではなかったのですが)、最高裁職員総動員の様相でものものしい警備でした。

 第2小法廷は4名の裁判官。大阪弁護士会出身の滝井判事が座っていました。
 判決は、既に報道されたとおりの「違憲判断回避判決」。
 「人が神社に参拝する行為自体は、他人の信仰生活等に対して圧迫、干渉を加えるような性質のものではない」。「内閣総理大臣の地位にある者が靖国神社を参拝した場合においても異なるものではない」。
 この逃げ切り方にはまさに唖然としました。
 ただし、この判決には滝井判事の補足意見がついていました。
 「何人も公権力が・・その意に反して別の宗旨で故人を追悼することを拒否することができるのであって、それが行われたとすれば、強制を伴うものでなくても法的保護を求め得るものと考える。」
 ここに、訴訟団の遺族が必死に訴えてきた宗教的人格権のひとつの形が示されたように思われます。

 あまりに宗教に寛容というか、いい加減な日本で、信教の自由の価値を認識し国家による侵害を排除するということ。政教分離原則の基本を改めて考えさせられています。
 ついでに、今、NHKブックス「国家と犠牲」(高橋哲哉著)を読んでいます。「靖国問題」とは異なる視点から、国家により戦没者を讃えることの意味について考察されています。

January 31, 2006

マクガワン氏判決のおかしさ!【大橋】

 1月30日、アフリカ系アメリカ人であるスティーブ・マクガワン氏が眼鏡店への入店を拒否されたことについて、人種差別に基づくものとして慰謝料を求めた裁判の判決がありました。
 大阪地裁第18民事部の佐賀義史裁判官は、眼鏡店店主が入店を拒否した事実はあったとしながらも、「黒人キライ」という発言自体はしていなかったと判断し、単なる入店拒否であれば慰謝料までは発生しないとして請求を棄却したのです。

 まず、一応、この判決のまともだったところを挙げますと、「人種差別に基づく行為は不法行為となる」ということを明確にしたことです。これまでに、浜松市の宝石店入店拒否事件、札幌の公衆浴場入店拒否事件、東京都豊島区の入店拒否事件と同様の事件が続き、この中で、「人種差別撤廃条約」の精神が国内法規範として民法の不法行為性の判断に取り入れられてきました。
 マクガワン氏の判決も、その流れを固めるものでした。

 それはよいのですが、その後が問題です。
 この事件は、マクガワン氏と友人(アジア系)が2人で眼鏡店店内を覗き、友人が眼鏡を買いたいが目の検査費用は無料だろうか?と迷って、では聞いてみようとドアに近づき掛けたところで起こりました。
 「出て行け!コクジンキライ!ドア触らない、ショーウィンドウ触らない。ジャマ、無理!」
と店主から言われた、というのがマクガワン氏の記憶です。
 マクガワン氏は、まだ日本語に堪能とまでは言えず、「コクジン」の意味がわかりませんでした。
 それで、すぐに妻(日本人)に携帯電話を掛け、「コクジン」とは何か、「外国人」のことか?と聞いたのです。
 妻は「コクジン」と言われたということに驚き、「それはブラックピープルのこと」だと答えましたが、本当にこんな露骨な差別発言がなされたのか、どうしてそんな状況になったのか、相手方にも言い分があるかもしれない、と考えました。
 そして、その日の夕方と、翌日の午前に、夫婦で眼鏡店を訪ねました。

 ご夫婦ともクリスチャンで、「話合い、理解し合う」ことを重視する方々です。
 それで、店でも、妻はまず「このお店では、外国人を差別するということはありますか?」と聞き、そのようなことはありません、との回答を得ています。

 ここについての裁判官の判断は、驚くべきものです。ここ以外にも驚くべき判断は散見されますが、まずここからボタンの掛け違いが起こっています。
 「黒人差別が人間の尊厳にも影響する重大な違法行為であることは明らか」であることを認めた上で、そうであるならば、妻は店でまず「この店では黒人を差別するのか」と聞くはずだ、しかし妻は「外国人を差別するのか」としか聞いていない、だから妻は最初には「コクジン」という言葉は聞かされていないのだ、というのです。
 そして、「黒人」という言葉を使うことに抵抗があって婉曲的に「外国人」という言葉を用いたのであれば、その点についても説明があってしかるべきなのに、その点を何も述べていない、というのです。

 私たち弁護団は、妻が最初から「黒人を差別するのか」と聞かなかったことがそのように問題にされるとは思っても見ませんでしたので、あえて証人尋問でも聞きませんでした。
 裁判官も聞く機会があったのに、聞きませんでした。

 裁判官の発想は、「差別された人は、差別はおかしい!とすぐさま憤激して反応するはずである」というものです。
 そうではないのです。
 自らも入居差別を受けて訴訟を提起している康由美弁護士は、この裁判の代理人でもありますが、次のようにわかりやすく説明してくれています。
 いつも差別を糾弾しようと常に構えている人は、そのようにも出られるでしょう。
 しかし、日常の中で、突然、差別的な対応を受けると、まずその排除的行動に対して打ちのめされてしまうのです。
 そして、その差別者と話し合おうとすると、重ねて差別を受けることを当然覚悟しなければならず、話しかけ方もえん曲なものからスタートしようと考えます。
 裁判官は、そういった、差別された人の「これ以上傷つきたくない」という気持ちが、全くわからなかったのでしょうか。残念です。

 この店主は、自らに黒人差別意識があることを認めているのですが、それでも裁判官は、当初「黒人キライ」とは言っていないから黒人差別に基づく入店拒否をしたのではない、と判断しました。
 黙って店から追い払ったら、差別行為にならないのか??
 もう少しマシな判断が欲しかったです。

 弁護士としては「控訴してもう一度判断を得よう。こんな判決を確定させるわけにはいかない」と思いますが、マクガワン氏に掛かる負担の数々を考えるとき、安易に勧めることもできません。
 マクガワン氏夫婦の負ってしまった心の傷を思い、また、弁護団としてもより念を入れた立証が必要だったのではないか、を問わなければならないとも思います。

October 09, 2005

小泉首相の靖国参拝は違憲(靖国台湾訴訟・控訴審判決)【大橋】

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  9月30日、大阪高裁の「小泉首相靖国神社参拝違憲・台湾訴訟」控訴審判決は、良心的裁判官の審理を受けることができた幸運によって、最初に「違憲」を明言した福岡地裁判決に続き、ようやく2件目の違憲判決となりました。
 前日に、東京高裁が、「私的な参拝である」として憲法判断に至らなかったのと対照的でしたが、同じ高裁レベルで判断が真っ二つに分かれたことについて、マスコミも熱心にとりあげてくれました。
 みなさんの感覚ではいかがでしょう?
 小泉首相は、マスコミの前でも国会でも常に、私的か公的かの明言を避けてきたのです。
 でも客観的には、どう見ても「私的」とは言えない振る舞いをしてきていました。
 ただ、裁判所でだけ、「私的な参拝だ」と書面を出し続けてきたのです。
 この、思惑が透けて見える首尾一貫しない対応に対して、きっぱりと「公的である」と断罪した大阪高裁の判断は、まったくまともな判断だと思います。

 しかし、さらに特筆すべきは、福岡地裁判決を超える、理論的前進があったことです。
 「小泉参拝の職務行為性」につき明確に違憲の判断をしたのは、福岡地裁と同様なのですが、さらに、被侵害利益についても認める余地ありとしました。
 これまで、「宗教的人格権など法的な権利・利益ではない」と一蹴されていた論点です。

 ただし、結論は「小泉による直接の侵害なし、権利侵害の目的無し」で簡単に「損害無し」の判断をされた点は、やはり不満を拭えません。
 この部分だけ、あまりに論理展開が薄いのです。
 結論が「無し」であっても、もう少し説明したらどうなの?という感じでした。

  あまりに薄く「小泉による直接の侵害なし、権利侵害の目的無し」として控訴棄却の幕引きをした背景には、「ここで勝たせたら大変なことになるから、棄却の結論に持っていくためにはそのように切り捨てるしかなかったんでしょ」と弁護団の一員が言っていました。
 ここは、規範(一般的判断基準のことです)定立がされていないのです。直接に向けられた侵害行為がない、と言っても、煤煙公害などは「被害者に向けられた行為」ではありませんし、メディアの電波で世界中に到達するということは「向けられた行為」に当たらないのはなぜか、どうして行為者に目的がなければならないのか、故意行為のみが違法性があるという理屈なのか、が明確ではありません。
 つまり、どういう要件を満たせば利益侵害が認められるのか、が予測できないのです。
 言ってみれば、利益侵害を認めませんよ、という裁判所のメッセージに他ならないのです。

 ベテラン弁護士と事務局が「まともな判決でよかったよかった」という中、私は「裁判所の政治性」に冷めていました。
 というより、訴訟団は長年取り組んで、充分冷めた上で「それにしてはまともだった」と思っているのでしょうね。

 また、台湾原告(控訴人)のみなさんは、もちろん「損害無し」は到底納得できない様子です。
 判決の夜は台湾原告団との交流があるだろうと思っていたのですが、別行動でした。
 「台湾の人達は『勝った』とは思っていないからね」と事務局スタッフ。
 
 台湾の人や原告の一部の人が「国外から見れば違憲判断だけでは何も嬉しくない」と訴訟団の喜び様に批判的だったのですが、訴訟団は、ともかく、台湾の人達に違憲判断のもつ意味について理解してもらうことに努めたとのことでした。
 
 確かに、控訴審判決にも明記されているのですが、日本の政教分離原則は、特に国家神道の侵略・軍国主義に果たした役割を深く反省した上に定められたものなのです。
 端的に言えば「靖国神社と政府の分離」を憲法で定めたわけですから、これに抵触すると宣言したのは、日本帝国主義の侵略の歴史を忘れないことを確認したのに他ならないのです。
 
 その後の、10月5日には、高松高裁で控訴審判決がありました。
 松山地裁の原審判決は、これ以上簡単には書けないというくらいにあっさりと「小泉首相が靖国神社に参拝しただけのこと、原告らには利益の侵害がない」と、結論づけ、憲法判断に全く触れませんでした。
 それで、判断が変更されるかどうかが関心事でしたが、高裁判決もまた「それでいいのだ」という追認の内容でした。

 同じ小泉首相の行為を対象として、どうしてこんなに判断が変わるのか?
 通常、同一の事件を2つの裁判所に掛けることはできませんが、被告は同一でも全国から原告となった人たちが訴訟を起こしたために、全国でバラバラに訴訟が進んでいます。
 その結果、様々な判決が出されているのは、「裁判官の独立」から当然ですが、それぞれの「裁判官の良心」が滲み出しているという実感があります。

 憲法判断に踏み込んだ判決を、結論に関係のないことに言及した「蛇足判決」であると評し、非難する向きもあります。
 しかし、なぜ三権分立というシステムで国会の民主主義を裁判所が統制する制度があるのか、なぜ裁判官が良心に従って独立して職権を行う地位を保障されているのか、なぜ裁判システムがコンピュータ化されずに人間である裁判官によって裁かれるのか、ということを、私たちも、裁判官をしている人たちも、考えねばならないと思います。

September 19, 2005

この間のご報告【大橋】

 またまた、大変なブランクの後になりましたが、この間のご報告をしておきます。

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 まずは、さわやかに、この夏に親戚の集まりで出かけた、出身地近くの竜洋海洋公園(静岡県)の景色から。
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 夏は、裁判所も夏休みに入るので、裁判の準備に追われることから少しは解放されます。
 そこで、様々な弁護団活動を、「夏休みモード」ながら、進めることになります。

 靖国訴訟。
 在韓原告が沢山含まれている、アジア訴訟の大阪高裁控訴審判決が、7月26日に出ました。
 大阪地裁の判決では、小泉首相の靖国神社参拝行為を「職務行為性あり」と認めながら、「だから違憲だ」とまでは言わなかった歯がゆさがありましたが、高裁ではこれが進むのか後退するのか、がひとつの焦点でした。
 進みませんでした。どちらかといえば、後退でしょうか。地裁判決の「職務行為性判断」の部分を引用しないで棄却判断をしましたから。
 また、もうひとつの焦点であった「原告(控訴人)らの被害の有無」については、控訴人の主張に対して一つ一つ反論して、結論としては認めませんでした。
 今、上告審へ向け、上告理由を弁護団で分担して検討しているところです。
 さらに、もうすぐ、9月30日には、台湾人原告中心の第2次訴訟の控訴審判決が出ます。

 第1審判決までの経過は、「アジェンダ」という季刊誌にまとめて書いています。
http://members10.tsukaeru.net/agenda/content9.html
 
 判決は、誰が書いても同じになるというものではありません。結論は、法的判断としてそう差が出ないとしても、事実をどう把握したのか、どう問題意識を持ったのか、ということについて、一人の裁判官の見識が如実に表れます。
 訴訟団と弁護団は、担当している裁判官の良心に訴えかける裁判となるよう努力しています。
 法廷に座っている裁判官に対して、書面と、限られた時間での原告の口頭陳述や尋問で、いかに実情を訴えられるか。ここが知恵の絞りどころです。
 裁判官が、余計なことには聞く耳を持たないタイプであれば、努力も判決には反映されないことになりますが、まずは弁護団がいかに表現するかということです。
 これは、どの裁判についても結局同じことで、代理人としての弁護士の職務です。

 それから、ホームレス問題での人権擁護委員会部会活動。
 8月末、大阪の部会と京都の竹下義樹弁護士で、滋賀県近江今津の山間にある、西成の元ホームレスの人が多く収容されている生活保護施設に、見学兼無料法律相談会で行ってきました。
 HPを見るととてもきれいな施設で、現にきれいなのですが、なにしろ山の中ですから、西成で生活してきた人々は「さみしい、つまらない、早く西成に戻りたい」ようです。
http://www.ojk.or.jp/kosei/tunokawa/tunokawa.html

 ここで受けた法律相談は、そのときには「借金の消滅時効援用」で解決するものばかりでしたが、今後は自己破産の申立案件も出てくると思われます。借金を整理すれば、施設からアパートに出て自活する意欲も強くなるということで、大阪のホームレス問題部会では、滋賀弁護士会のメンバーに、今後の協力をお願いしています。
 滋賀の弁護士は、59名しかいないということで、3000名弱を擁する大阪に比べると仕事も大変だと思うのですが、皆で助け合ってこうした問題にも取り組んでくれるということです。
 (大阪でも、ホームレス問題に現に取り組んでいる弁護士は20名もいないのですが。)

 刑務所・拘置所の人権問題。
 名古屋刑務所での職員による入所者暴行致死事件があって、国でも行刑改革会議が持たれ、既決囚については「刑事施設及び受刑者の処遇に関する法律(受刑者処遇法)」という新法が本年成立しました。来年の施行を待つ状況です。
 その流れの中で、弁護士会への「人権救済申立」件数も増加しています。
 塀の中では、外に知られることなく、職員が定数を超える入所者の管理に追われています。その過剰収容の実態に、処遇改善は到底追いつかず、依然としてあまりに非人間的な扱いが止みません。
 それは、医療のレベルの問題、不服申立の握りつぶし、基準の曖昧な懲戒手続、等々です。
 もっと風通しをよくすることが重要です。法律に規定された「視察委員会」という外部からの視察団体については、どう運用されるのかがまだ未定です。また、人権擁護法案は、制定も未定ですし、法務省の外に設置されるのでなければ「風通し」としてほとんど意味がありません。
 そういう中で、外部団体である弁護士会の人権調査は、なるべく実効性のあるものでありたいと考え、「人権救済申立処理マニュアル」の作成にとりかかっています。趣旨は、担当した弁護士が「早く、ポイントを掴んだ調査ができるように」ということです。刑務所や拘置所の中の仕組みを知らないと、何をどう調査してよいのかわかりません。施設の職員も、自ら都合の悪いことを言ってくれるわけもありません。

 また、昨年、和歌山東警察署の留置場で、大声を上げ続ける被疑者に防声具を違法に二重装着させたことが元で、被疑者が窒息死する事件がありました。この件での国家賠償請求訴訟を弁護団で準備中です。
 この件は、担当した警察官が防声具の取扱いに不慣れであったということが直接の問題ですが、名古屋刑務所事件をきっかけに法務省管轄の刑務所や拘置所では取扱いを中止していたものが、警察庁管轄下の代用監獄(つまり警察の留置場のことです)では取扱いをそのまま認めていたということにも問題があります。
 ひいては、「代用監獄という制度をこのまま存置するのか廃止するのか」という議論にも関係するところで、訴状の内容も検討を重ねているところです。

 類似しますが、より深刻な問題かも知れません。オーバーステイ等で退去強制されるまでの施設である入管センターで、入所者が職員に「制圧され」その過程で肋骨を骨折し、腰にも異常を来したという事件があり、国家賠償請求訴訟の弁護団に関わっています。中国人・王連革さんが、尋問に備えて、特別に日本への入国を認められて在日しています。このような事件は、ボランティアの人達の献身的関わりと、同じくボランティアとして集まる弁護士によって成り立っています。(慰謝料が認められれば、報酬がもらえるとは思いますが。)法律扶助制度も、返済能力があるとは判断できない「退去強制対象者」には弁護士費用の立て替えをしません。
 これは、難民認定の訴訟においても同様です。
 私たちも、着手金いくらかさえ見込めない(結果については一層不明な)仕事を沢山はできません。
 費用立替についての体制化が必要です。

 外国人の差別事件。
 ひとつは、アフリカ系アメリカ人のマクガワン氏が、眼鏡店の前でウインドーをのぞき込み、中に入ろうとしたところ、「かつて黒人にイヤな目に遭わされた」との経験を持つオーナーに入店を拒否され、追い払われた、という事件の慰謝料請求訴訟の弁護団に入っています。
 もうひとつは、これからですが、在日韓国人で本名を名乗っている弁護士が、賃貸マンションへの入居を拒否されたという事件について弁護団を組み、対応を検討しています。
 入居拒否事案というのは、最近になってもかえって増加傾向だということです。ニューカマーへの拒否という問題は、個別に「入居の条件を満たすかどうか」で検討されるべきかもしれませんが、在日の弁護士は、生活習慣も賃料支払能力も、問題がないのが明らかです。ただ単に、「外国人を入居させるのはイヤ」という条件を家主は主張してよいのか、人種差別撤廃条約に照らして違法ではないか、社会的に問題提起をしていきたいというのが当事者である弁護士の希望であり、支える弁護団も認識の共有を図っていこうとしています。

 これより前にも、「高槻むくげの会」というマイノリティーの子どもたちの子ども会活動に取り組んできた団体が、高槻市から事業予算を廃止・縮小されたことに対して、この是非を問うため訴訟を起こしている件で弁護団に入っています。
 日本の中に暮らす外国人、及び日本国籍は有していてもルーツが外国にある人達の割合はどんどん増加していくはずです。日本人が持ち続ける旧来の排外的な感情をどう克服して共生社会を実現するのか、この問題意識から関わっています。
http://www.mukuge.net/

 そうこうしているうちに、秋になりました。
 来週は、大阪労働弁護団の一員として、「民主社会の実現のための弁護団」との交流のため、韓国に行ってきます。http://homepage2.nifty.com/lala-osaka/toha.htm
 韓国は、南北の冷戦下での軍政(日米韓の体制がこれを支えてきました)から民主化で一気に様相を変え、日本を大きく超える人権尊重の国に変貌していっています。
 この件でまたご報告したいと思っております。少なくとも、次のご報告が年末になりませんように(^_^;)

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