弁護士業務

October 26, 2008

10月のレポートその1 日弁連人権擁護大会(富山)【大橋】

 10月2日3日、日弁連人権擁護大会。富山へ行ってきました。
 2日が分科会で、3日が大会です。決議や宣言を採択します。

 2日は3つの分科会のうち、「労働と貧困」をテーマとするところへ参加。
 マスコミの関心も高く、翌日の北日本新聞にはこの分科会の記事が出ていました。

 3日の大会決議では、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」が決議されました。
 どうも日弁連の宣伝力もまだまだで残念ですが、決議内容は画期的だと思います。「正規雇用が原則であり、有期雇用を含む非正規雇用は合理的理由がある例外的場合に限定されるべきであるとの観点に立って、労働法制と労働政策を抜本的に見直すべきである。」と明確にされました。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_3.html

 他に「安全で質の高い医療を受ける権利の実現に関する宣言」も出されました。
 医療事故調査制度に関して、また医療事故を起こさない人的物的態勢(医療関係者の労働条件も含めた)に関して言及した、これも画期的な宣言であると思います。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_2.html
 ちなみに、あと一つは「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」です。
 憲法問題で特にテーマを絞ったものですが、大会では「なぜ9条を守ると明言しないのか」との発言も複数出て、一番審議に長時間を要しました。弁護士の関心が引き続き高いテーマであることは間違いありません。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_1.html
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 そして10月4日5日は、地元富山県弁護士会でプロデュースしてくださった公式観光に、大阪の弁護士複数で参加。
 1日目は、「立山カルデラ」という自然災害の脅威を知ることのできる「砂防博物館」の見学と、立山・室堂を富山県認定の「ナチュラリスト」の方の案内で歩くツアー、そして宇奈月温泉へ。

 天候に恵まれ、色づく立山の景色を堪能しました。写真ではあの360度の壮観は写せない!残念です。

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 宇奈月温泉ではトロッコ列車というものに乗って、黒部の奥の方まで行けるのですが、この切り立った峡谷はすごいです。列車の終点は欅平というところですが、ここから有名な黒部第四ダムまでは工事用の隧道しか通っていないそうで、これがまた温泉地帯を通るため大変な高熱だそうです。
 富山県弁護士会の方から、この隧道を通すための難工事を描いた吉村昭の小説「高熱隧道」の文庫本をいただきました。(希望者多数のため抽選で当たりました)
 戦時中に電力供給を確保するための国策として、沢山の地元の労働者の命を犠牲にしながら進められた難工事のことがよくわかります。
 その成果は今も壮大な黒四ダムとして残っているわけですが、そちらもまた行ってみたいと思いました。

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 宇奈月温泉に泊って夜と朝と温泉に浸かり、トロッコ列車にも乗りました。ちょっと雲が出てきて怪しい天気でしたが。
 宇奈月温泉の泉質は、さらっとしたクセのないものでした。川の水音を聞きながらの露天風呂は気持ちよかったです。

 さて、「宇奈月温泉」と聞くと、民法を勉強した人は「権利濫用」という言葉を思い出すはずです。

 我々弁護士は、「宇奈月温泉木管事件の現場はどこにあるのかな?」と半分冗談、半分本気で期待していたのですが、一部メンバーで「記念碑」のあるところへ連れて行ってもらうことができました!

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 これでもう思い残すことはないと満足いっぱいです。

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 富山はちょうど白エビの季節で、十二分に堪能させていただきました。富山はよいところです。

 そしてナチュラリストの方が「自然のフィトンチッドで精神が安定します。40分自然の中を歩くと、1カ月は持ちます」と言っておられたのも思い出します。

 富山では何時間もフィトンチッドを浴びましたが、そろそろ1カ月、また浴びたくなりました・・

(一方、この4日間のために、その後に仕事を押しやったのも間違いありません。しかし、弁護士にフィトンチッドを吸わせてくださると精神が安定しますので、よろしくご了解くださいますよう。)


April 29, 2008

コーチングとカウンセリング【大橋】

 昨日受けた研修のまとめを書いてみたいと思います。

 大阪弁護士協同組合主催の「コーチング研修」。

 「なんだそれは。聞いたことないな~」と思ったのと、「それ面白かったよ!」と前に研修を受けた松井が勧めたのとで、受講することにしました。


☆コーチングとは?

 「相手の自発的な行動を促進するコミュニケーションの技術」であり、
 「目標を達成するために、必要な知識や技術、ツールが何であるかを見つけ出し、それを相手に備えさせるプロセス」だそうです。


☆コーチングの3原則。

 1 人は、皆、無限の可能性を持つ。
 2 その人が必要とする答えは、皆その人の中にある。
 3 その答えを見つけるためには、パートナーが必要である。(それがコーチ。)


☆ティーチングとコーチングはどう違うのか。

 自分の経験や知識を相手に伝えるのがティーチング。
 相手の能力や自発性を引出すのがコーチング。


☆カウンセリングとコーチングはどう違うのか。

 過去に向かってWHY?と問うのがカウンセリング。
 未来に向かってHOW?と問うのがコーチング。


 講師をしてくださったのは、企業や医療機関等の研修によく出向かれる方のようでしたが、弁護士の業務から見ると弁護士の依頼者との打合せはまさに「カウンセリング+コーチング」だなぁ、と思いました。

 依頼者の話をずっと聞き、依頼者が過去を整理し前を向く気力を取り戻してからが弁護士の本来業務の領域になります。
 「カウンセリング+コーチング」は、弁護士の付加価値の領域になるのかもしれません。
 こんな知識も仕入れてみています。


March 17, 2008

驚いた弁護士の話【大橋】

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 すっかり春めいてきましたね。
 上の鉢植えは、珍しい八重咲きのカランコエを見つけて買った物です。
 下は、正月前に植えたミニ葉ボタンがぐぐっと伸びて花芽を付けているところ。

 さてしかし、松井の持っているカメラは確かにきれいな画質ですね。
 私が買い換えたEXILIMでは普通にしか写らない・・

 そして、松井の買ったMacもとっても画面が上質らしいです。
 今度、得意満面でMacを使っているところを私が激写してみたいと思います。

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 先ごろ、弁護士資格を有する大阪府知事が、始業前に朝礼をすることを「民間なら普通」として、サービス時間外労働を奨励するが如き発言をしたことが物議を醸しています。

 労働契約は、時間を単位として決められていますから(裁量労働制という例外を除き)、「タダで人の時間を使ってはいけない」のが当然なのですが。


 弁護士にもいろいろな人がいるなぁ、と思ったことがあったのを思い出しました。

 ある印刷工の方が、技術革新で機械に取って代わられ、職種転換の機会も十分に与えられず賃金を切り下げられたのです。生活できないからと労働審判を申し立てたところ、まだ30代の2代目社長はあっさり解雇通告をしてきました。
 あまりに理由のない解雇であり、労働審判はそこに立ち入らずに切り下げ前の賃金支払いを命ずる審判を下しました。会社は異議を申し立て、訴訟に移行しました。

 訴訟に移行したところで、印刷工(私が訴訟代理人)は「解雇無効」の主張を追加しました。
 争点は「解雇の理由があるか否か」であり、会社は「整理解雇」の主張と「懲戒解雇相当の働きぶりの悪さ」の主張を出してきました。よくあることですが、まだ在職中の従業員にこれでもかと陳述書を書かせて出してきます。

 そして、尋問。

 被告側本人尋問は、代表取締役である2代目社長です。
 
 原告・印刷工側は、5年ほど前に初代社長から「賃下げ強要」を受けて徹底して抵抗し、そのやりとりを秘密録音しており、反訳して証拠として提出していました。
 初代社長が、労働者から抵抗されてめちゃくちゃに怒っている様子がよく読みとれるものでした。

 その反訳書面について、被告側訴訟代理人弁護士が、2代目社長に聞きます。
 「あなたは、このやりとりを見て、どう思いました?」

 2代目社長は、何を答えて良いのかよくわからず、黙って困惑しています。

 代理人弁護士はもう一度説明して答えさせようとします。
 「あのね、この原告と前の社長のやりとりを見て、原告の態度がどういう立場かわきまえていないと思いませんか?」

 2代目社長より私の方が先にピンと来ました。なんてしょうもないことを言わそうとしているんだ、この弁護士は?

 この弁護士の頭の中には、「労働者が雇ってくださっている雇用主になぜ抵抗する!黙って従うのが道理だろう!」という封建制由来の観念がカチカチに存在しているのです。(ちなみに、十分にベテランと言えるお歳の弁護士でした)
 
 2代目社長が同調する答えを吐かなかったことが救いでした。
 まあ、2代目社長も「労働審判に訴えられたこと」がイヤで解雇を口にしたのですから、似たようなものですが。


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 そういうわけですから、全く残念なことに、現代の法体系を体得していない弁護士が存在するのです。

 私たちは、相手方に代理人弁護士が付いたとき、「どういう弁護士か」をまず知ろうとします。
 どういう相手方本人か、そしてどういう代理人弁護士か。
 それによって、「この事件はどのくらい解決に時間と手間を要するか」がだいたいわかります。

 念のため言えば、それは「若い弁護士だから駄目」ということではありません。
 「若い弁護士は質が低下している」などという論調には、反対します。
 そういう意味では、弁護士の淘汰もやはり要るのだと思います。

August 05, 2007

加害者が被害者に負う道義的責任、法的責任【大橋】


 最近、職場のいじめ問題に関する労働審判申立てをした件が、調停成立で終わりました。
 これをきっかけに、考えたことです。

 結論を先に言いますと、
 「 道義的責任(被害者にお詫び) ⊂ 民事責任(被害者に賠償) ⊂ 刑事責任(国から刑罰) 」
というテーマです。


 他人を傷つける行為。
 電車の中でよろけて、後ろの人の靴を踏んでしまったとか。
 虫が大変苦手な人の目の前に、テントウムシを差し出したりとか。

 大変軽微な例ですみません。
 しかし、事情によっては「被害者」は大変な苦痛を受けることがあります。

 そのとき、「加害者」は「被害者」の苦痛を見て取り、「ごめんなさい」と謝りますね。
 どうして苦痛なのかは推測しきれなくても、自分のせいで苦痛を与えたと見て取ればまず謝る。
 「他人に迷惑をかけてはいけません」と小さいときからしつけられ、常識ある大人の行動として。

 これは、道義的責任の話です。


 道義的責任を超えて法的責任となり、金銭賠償等を負わされることになるのには、別の事情が必要です。

 「損害との相当因果関係」です。
 それから、「故意」または「過失」です。

 電車の中で足を踏まれた「被害者」が、実は靴の先に大事な割れ物を入れていて、それが壊れてしまったとします。「加害者」からすればそんな事情は通常想定しうる範囲を超えています。
 この破損は「相当因果関係ある損害」とはいえません。

 電車の中で足を踏まれた「被害者」が、実は大変に骨の弱い人で、足の甲や足指が骨折してしまったとします。
 足を踏んだら、もしかしたら骨の弱い人は骨折をするかもしれない。これは想定の範囲です。
 そして、電車の中ではよろけて他人の足を踏まないように注意することは必要だし、できることですから、それを怠ったのには「過失」があり、法的責任が問われます。

 テントウムシを見せられた「被害者」が、前に何らかの事情で虫で怖い目に遭っていたために、その経験を思い出して強いショックを受け、1週間寝込んでしまったとしましょう。
 「加害者」はまさかこんなことになるとは思っていません。可愛いなと思って見せただけです。
 これは相当因果関係の有無も問題になるでしょうし、過失といえるかどうかの問題にもなるでしょう。

 ただ、もし「被害者」が前々から「私は昆虫が苦手で、見ただけで体が震える」と言っていたとしましょう。
 「加害者」は分かっていながら「テントウムシでも震えるかどうか試してみよう」と考えたとします。これはまさに「いじめ」です。「故意」になるわけです。
 「加害者」が分かっていたのに軽く考えていて、うっかり見せてしまったとき、「過失(注意義務違反)」と評価されるわけです。


 民事の不法行為責任を問われるには、このように「故意」や「過失」が必要になります。

 また、刑事責任を問われるには、原則として「故意」が必要になります。
 「わかっていながら犯罪行為を行うこと」を、わざわざ国が介入して罰する、というのが刑事裁判です。

 こうしたことは、学校でもマスコミでもはっきりわかるように説明していません。

 大変アバウトに説明すれば、冒頭に示した、

   「 道義的責任(被害者にお詫び) ⊂ 民事責任(被害者に賠償) ⊂ 刑事責任(国から刑罰) 」

ということになります。


 人間社会では、人間同士の摩擦は絶対に生じます。
 「お互いさま」の精神で謝ったり許したりしながら、助け合って生活する。
 これが人間生活の基本だと思いますし、それを超える事態になって初めて、「法的な追及」の問題になるのです。
 常識を知らない人というのは必ずいますし、周りが説教をしたり、説教が通じなければ周りが「困ったものだ」と言いながらフォローしたり。周りがそれなりに努力をせざるを得ません。

 「被害者」が「いじめ」と捉えた問題も、周りから見れば「何くそ」とがんばれる程度の叱咤激励だと思えることもあるし、「被害者」が非常識である場合だってあり得ます。
 そうすると「ごめんなさい、これからは気を付けます」「お互い言いたいことは溜めないで言い合おうね」という話合いでの和解で終わるのが一番の解決、となります。

 損害が生じたときに、「加害者」に賠償を求めることができない場合も出てきます。それを補填するのが自分で加入する損害保険であったり、社会保障としての保険年金システムや犯罪被害者給付金制度等です。

 近隣関係の紛争、離婚や相続といった親族関係の問題も、周りや本人が努力・我慢すべき限度内か、「法的な追及」の話であるのかどうか。
 私たち弁護士が仕事をするときには前提としてこの判断基準を持ち、相談者の悩みを分析して説明しなければならないと思います。 

June 24, 2007

弁護士の職務で思うこと【大橋】

 このごろ、心がけていることがあります。
 「土日のどこか数時間は、仕事から離れよう」
・・・というくらい、何か仕事に追われています。
 「儲かって、よろしいなあ」って?それは違いますよ!
 弁護士会の委員会活動や、弁護団事件(手弁当系)に掛けている時間が結構あります。
 まあ、これは「仕事」というよりは「ライフワーク」と位置づけて別に考えた方がよいかもしれません。


 それはさておき。



 最近、私が勤務弁護士をしていた先の事務所のボス弁護士を、出身弁護士や関係弁護士が「囲む会」、という例年の親睦行事が今年もありました。
 ある先輩弁護士が、「先生には、相手方をとことん追い込まない、という姿勢をしっかり教え込んでいただけたと思います。このごろ、手加減を知らずに突っ込んでくる弁護士を見かけるので・・」と述懐していました。
 それを聞いて、確かにそうだな、と納得しました。
 紛争を丸く収めるには、最後には「譲る」という姿勢が必要です。
 元の事務所は交通事故の保険会社の代理人業務が多かったですが、元ボスは、保険会社に必ず「どこまで譲れるか」を聞いていました。弁護士に裁量を与えない保険会社とは契約を絶ったと聞きました。

 弁護士が出るということが、代理人の付いていない一般の方には強い圧迫を与えるのは事実だと思います。
 確かに弁護士は法律のプロ、裁判のプロだから、「ややこしいことにされてしまう」と思われるのでしょう。
 だからこそ、品格が大事だと思います。本当は紛争を収めるのがプロの仕事なのですから。

 

しかし。
 最近、光市母子殺人事件差戻審に21人の弁護人団がついた件で、「弁護人としての活動内容」に対して懲戒請求をされる方が増えたといいます。
 弁護人団の一人の弁護士に話を聞く機会がありました。
 被告人は犯行時には少年で、結果が重大だったために取調べもかなり厳しかったことが推測されたようです。そこが心配で被告人に接見して確かめたところ、言い分としてこれまでの裁判で出てこなかった事実が出てきたと。それで、急いで死刑事件の弁護経験のある弁護士に協力を求めたのだということでした。

 テレビで「差戻し審になって新たな主張をするのは、弁護士の作文である」といった内容のコメントをした弁護士がいるようです。しかし、そんなことは言い切れません。
 手練れの刑事に昼夜取調べをされて、冷静に筋の通った主張などできないものです。弁護人との血の通った十分な打合せの中で、気持ちの整理がつき、事実関係が整理されていくのです。
 弁護人に被告人との十分な打合せができるか? 相性もありますし、観察力も洞察力も想像力も必要です。
 被告人に新しい弁護人がついた。それは、新しい主張をすくい上げるきっかけにもなるのです。
 裁判にはそういう面があります。
 そして、特に刑事の死刑事件ですと、「死刑判決が確定したらほとんどやり直しが利かない、執行されたら後でお金で補償することもできない」という意味で重大です。
 被害者が、被告人を許せないのは当然のことでしょう。しかし、被告人には弁護活動を受ける権利があり、その権利を実現するのは弁護人の職務です。本件の弁護人の行動は、被害者をいたずらに傷つけるものでもなく、権利の濫用だなどとはいえません。

 それで、数日前に、「弁護活動に対する違法な攻撃を許さない弁護士緊急アピール」の呼びかけが弁護士有志から提起されたのですが、松井・大橋ともこれに賛同しています。

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母子殺害で懲戒請求数百件 弁護士が中止求めアピール
 山口県光市の母子殺害事件で殺人罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の弁護人に対する、インターネットを利用した懲戒請求が相次いでいることが分かり、有志の弁護士508人が19日、「被告が弁護を受ける権利を否定する言動に抗議し、直ちに中止を求める」との緊急アピールを発表した。請求は計数百件に上るという。
 アピールなどによると、ネット上に「意図的に裁判を遅らせている」などとして懲戒を求める書面のフォームが出回り、これを使った請求が各弁護人の所属弁護士会に届いている。
 アピールの呼び掛け人の1人、前田裕司弁護士は「基本的人権を守る弁護士への攻撃だ」と話している。
 日弁連は、こうした懲戒請求の有無について「答えられない」としている。

2007/06/19 共同通信

March 09, 2007

専門家の意見と裁判所のズレ【大橋】

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 松井が専門性について書いています。私も最近思ったことを少し。


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 入管施設で、処遇の不満の表明あるいは言葉の行き違い(収容されているのは外国人である)から、被収容者が職員5人がかりで床に押さえ付けられ、抵抗したところ罵声とともに「制圧」され、肋骨2本と第3腰椎横突起を骨折する暴行事件が起こった。国家賠償請求訴訟を提起。
 ところで、第1審段階では、骨折は肋骨1本だけだと思われていた。それが理由でというだけではないが、第1審は敗訴。
 現在、控訴審で審理中であるが、ある協力的な整形外科医にレントゲンを見せたら、さらに肋骨1本と第3腰椎横突起(どんなものか私も知らなかった)が折れているのが見えるという。
 これまでに整形外科医が数人、レントゲンを見ているのだが、見過ごしてきた「真実」である。

 →→多くの専門分野があるところ、裁判所は法律の専門家という以上に専門家ではないし、弁護士もまた専門家ではない。どちらかというとゼネラリストと言われ、世の常識(良識か)を体現するべき職業である。
   専門家のフィールドでの常識がここでは非常識であり得る。その結果として、数々の「真実」を見誤った判決が生まれていることは間違いがない。
   裁判所という国家強制力を有する機関は、その力の大きさを十分に認識して慎重にその権力を行使しなければならない。また、弁護士は、裁判所に問題提起をする役割であって、いかに「真実」を裁判所の常識としていくかにつき、パイオニア的役割を果たさなければならない。
   日々勉強。見聞を広げることが大事。
 

January 04, 2007

年頭のごあいさつ【大橋】

2007
 皆さま、新年明けましておめでとうございます。

 当事務所は、明日5日から業務開始です。私は、年末年始最後の休日をのんびり過ごさせていただき、明日からの活力を蓄えているところでございます。

 年賀状は31日投函という有様、もう配達されましたでしょうか?
 昨年は慌ただしく終わってゆきました。昨年中に作成しようと思いつつ、越年した書面もいくつか。

 ブログがすっかり公約違反でご無沙汰してしまった理由の一つは、書面をお待たせしている依頼者の方に「私の仕事をしないでこんな駄文をだらだら書く暇はあるのか?」と思われたくないがためでありました。
 しかし、それではブログの意味がありません。
 週に一回くらい、シャープに、近況をお知らせし、我が身を振り返る時間をとりたいと思います。

 年頭に当たりまして、シャープにごあいさつを。
 では、いただいた招待券がありますので、「日展京都展」へ行ってまいります。

September 03, 2006

「法曹の使命と責任」に思う【大橋】

 大橋です。私もきっと聞いたはずの「所長講話」、その話自体は覚えていないですね・・

 しかし、「法曹の使命と責任」というテーマで思い出したことをいくつか。

1 ある弁護団会議で。退去強制処分を受ける外国人を収容する入管センターで起こった「職員からの過度の『制圧』による傷害事件」での国家賠償訴訟を起こしています。
  支援団体からの依頼と中心の弁護士からの呼びかけで弁護士が集まり、着手金とか実費とかはさておきで訴訟を進めています。
  話題が途中で司法修習生の話になりました。これまでは修習生は国家公務員に準じて給料をもらっていたのですが、今後、貸与制になります。
  ひとりの若手の弁護士が、「私ら、修習生のときに給料をもらって研修していたから、弁護士になったら社会に何か還元しないといけない、と思ってきてますけど、貸与制になると自分のために資格をとる感覚になるでしょ?そんな気持ちはなくなってくるんじゃないかなあと思いますけど。」と言いました。
  私は、そういう考え方もあるかな、と思い、「社会に何か還元しないといけない」と思っているこの弁護士の素直さにちょっと感動し、また、「どの弁護士もそうというわけじゃないのでは?」とも思いました。
  ただ、確かに「法曹の使命」という言葉は、これからの「弁護士年3000人時代」において存在感を薄くしていくのではないかという危惧があります。

2 最近、私の事務所に電話予約をして借金の相談に来られた方がいます。
  初めて、現役のホームレスの方をお迎えしました。
  これまでは、既に自立支援センターやシェルターや生活保護施設に入っている人だけだったのです。
  「どうしてうちの事務所を知って来られたのですか?」と聞くと、あいりんセンター(西成区にある日雇労働者のための施設)の相談室から教えてもらった、と言ってメモを取り出されました。
  それから、以前に「なにわ路情」というホームレス支援紙に連載していた「借金問題は解決できます」という記事のコピーもお持ちでした。
  私も弁護士会の「ホームレス問題プロジェクトチーム」に関わって5年目になるのでしょうか、今では「ホームレス問題部会」に昇格し、活動分野がどんどん拡大してきました。今はまとめ役で部会長をしています。
  私の関心は必ずしもホームレス問題に限りませんが、「路上に寝ている人」を疎外し他者として蔑み眺める視線には猛烈に抵抗を感じます。それで続けてきていると思いますし、部会員が生き生きと活動するのもおそらく同じ思いでしょう。
  私が1年以上前に書いた原稿がコピーされて、困っているホームレスの人に渡っていくということは嬉しいものです。
  また、この事業こそ「公的支援」、具体的には弁護士費用援助をしてもらわなければ、うちの事務所はつぶれてしまいます。

3 またまた最近ですが、大阪府のホームレス対策で、地域巡回法律相談の担当になり、ある日、某所(野外)へ相談を受けに向かいました。司法書士さん(司法書士会の人権委員会所属)1人も同行しました。
  「もう生活保護を受けようかと思って」というその男性は、年齢的には十分に生保支給可能な人で、目立った体調の支障はないものの、夏冬の野宿生活が身に堪えるようでした。
  腕のよい溶接工だったのですが、高齢になって職がなくなり、借金には走らずに潔く野宿を選んだようです。
  「こうなりゃどこで死んでも同じ」と自転車で鹿児島へ、東北へと無銭旅行をしたものの、やはり長年住んだ大阪へ戻ってきたのだということでした。
  全国どこでもコンビニはあるので、期限切れの弁当で全く不自由はなかった。まあ2,3日食べないこともあったけどね、と笑っていました。
  このごろの生活は、「缶は拾いたくない」というこだわりがあり、車のホイールを拾ってお金に換え、100円ショップで必要なものを買いそろえているということでした。
  生活保護を受けようと思ったきっかけは、巡回相談員に勧められて年金が受給できるかどうかを調べたところ、ずっと働いてきたのに年金を掛けた記録が半分以下しか出てこず、必要月数を満たさないことがわかって愕然としたからだそうです。
  大企業もあり、零細企業もありましたが、年金を掛けてくれていなかったようです。既に消滅している会社もあり、確認はできなくなっています。
  「生活保護、もらえるかねえ?」と心配そうに聞くので、同行の司法書士さんと「生活保護は、権利なんですよ!アパートを探して申請をしたら通りますよ!」と元気づけました。2年越しのおつき合いという巡回相談員さんも「大丈夫だよ~」と肩を叩いて元気づけます。
  孤独な野宿生活に追いつめられた人が、人を信頼して社会との関わりを取り戻していく現場に立ち会って、少しでも力添えができれば嬉しいことです。

4 もう一つ、違う方向から、書きたくなりました。
  弁護士は、世間で誤解を受けているところもあるかもしれませんが、「依頼者が勝つことだけを考える」職業ではありません。仕事の内容を「紛争の円満な解決」と捉えています。
  ですから、依頼者の要求が「通らない話」であれば、それは無理ですと断ります。
  「通らなくてもいいんです。気が済みません」と言われたら、「通らなくてもいいんですね」と念を押した上、裁判を受ける権利を実現することを手伝います。
  相手方の要求が「通らない話」であるとき、弁護士がついてくれて説得してくれることを期待します。
  弁護士同士で「この辺が妥当な解決」というラインが合意できれば、それに合わせてお互いが依頼者を説得します。
  弁護士には一種、裁判官的な「公正さ」が期待されています。その社会的な信頼を失わないよう、経験もたくさん積み、自己満足的な判断に陥らないことを自戒していかなければならないと思います。

March 29, 2006

「壊れる男たち」をお勧めします【大橋】

 最近、大阪労働者弁護団の中島光孝弁護士から「面白いよ!」と勧められたのが、標題の岩波新書「壊れる男たち」(金子雅臣・著)です。
 今年2月21日の発行ですので、まだ書店でも平積みでした。

 これは面白いです。
 著者は東京都職員で、労働相談に従事しながら、社会派ルポライターとして主に労働関係の現状の本を書いておられ、特にセクシャルハラスメント問題では第一人者として有名です。
 まさに現場から、セクハラを起こす男性とはどういう人たちでどんな考え方をしているのかを描き出しています。
 女の私としては、まことに興味深く読み進んだ次第です。

 著者は男性ですが、セクハラで加害者とされた男性たちとの面談で、男性が「男性同士、わかるでしょ」という前提で言い訳をするのが通らずに次第に追いつめられていく様子を克明に描いているのです。

 中身は読んでいただきたいのであまり詳しく書きませんが、著者の問題意識は、「このごろ、男たちが壊れ始めている」というものです。

 「このテーマを考えるにあたっては、男たちはこれまで、職場でも家庭でも幾重にも下駄を履かされて生きてきたことを認めなければならない。男たちは、そうした意味では、男というブランドを与えられて生き続けてきたのである。
  ここにきて男たちの価値が急速に下落しているように見えるのは、単に男性優遇措置の有効期限が切れ、正当な価値評価がはじまったに過ぎないのだ。」

 「果たしてこのような様変わりのショックに男たちは耐えられるのか、それとも耐えられずに崩壊してしまうのか。まさに、男たちにはそれが問われているのである。」

 女性からも、男性からも、なるほどなあと考えさせられる一冊です。きっと。

March 26, 2006

離婚をゆっくり考えるための相談を【大橋】

 大橋です。継続投稿を頑張っています。

 このごろ、本当に新規制定法令が多くて、弁護士会でも研修ラッシュです。
 弁護士としては、「どんな法令ができているのか」くらいは知識として入れておかないと、いざというときに気づいて調べることすらできません。
 その一方、「専門性の強み」がますます重要になってくるであろうと実感します。
 専門分野であれば相談を聞いたその場で方針まで出せるものが、未着手の分野の相談であれば「数日調査にいただきます」と言い、他の業務の合間を縫って法令と制定趣旨と類似判決例などを調査せねばなりません。
 
 松井は、前回のブログで「相続の専門性」について強くアピールしています。

 私が現在多く手がけるに至っている「離婚」も、同様に専門性があると思います。
 法制度をいかに利用してスムーズな解消を進めるかという点、またとりわけ、離婚の影響をもろに被ることになる子どもにとっていかによりましに解決するかという点は、重要です。

 ところで、今、ことに必要性を感じ、提供できたらと考えているのが、「カウンセリング機能を持つ法律相談」です。
 離婚に直面した人は、最も近しい関係だった配偶者と心が離れていくことへの困惑とか虚脱感とか、相手方を責める感情、あるいは自分を責める感情に激しく揺り動かされているものです。
 また、相手方が大変激しく出てくる場合、「一刻も早く解消してしまいたい」と離婚をとにかく焦ることがあります。
 そして、後で冷静になってみると、「慰謝料がもらえたのではないか、養育費の請求はできるはずではないか」と悔やんでしまうのです。
 特に、経済的基盤が社会的に脆弱な女性側は、「早まった離婚」をひしひしと後悔することになりかねません。
 こうした精神的に辛い時期を乗り切る心強いパートナーとしては、弁護士が最適任のはずなのです。
 法制度の的確な利用はもとより、かなり有益なのが「相談相手」さらには「窓口として相手方と交渉してくれること」です。
 直接対応しないで済む、ということがどれだけ心の余裕を生むか、依頼者からよく感想としてお聞きします。

 ところが、女性弁護士を含む弁護士全般が、まだまだ「別世界のエリート」「迷っていたらはっきりしなさいと怒られそう」「気持ちをわかってもらえるだろうか」と遠い存在に見られているように思います。
 
 確かに女性弁護士、当然、気が強いです。専門試験を経てキャリアを積んだ自負があります。
 また、それでなければ依頼者からも頼りなく見えるでしょう。
 しかし他方では、キャリアを積んで、依頼者から学び、「離婚という人生の一大転換点で、ゆっくり考える余裕が必要だし、その余裕を差し上げたい」という気持ちも持っています。
 
 そういう意識でより離婚に関する専門性を高め、人生の一大転換点を乗り切るお手伝いをするために女性弁護士を集めて「相談窓口サイト」を作るのはどうだろうか?と構想中です・・・そのサイトで参加弁護士に直接相談予約を入れていただくとか、サイトへ相談申込をしていただくと対応できる弁護士が即座に応答する、といったシステムですね。

 よろしければ、ご要望や感想などコメントしていただければ。
 来年4月の年金分割を待ちながら、「どうしたものだろうか?」と思案中の方も多いはずだとお察しします。
 

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