大阪国税局~「手口」と「たまり」と動機【松井】

*9/30追記
*10/1追記
1
たぶん今日、税務に関する研修を受ける予定だから目についたのだと思うのですが、昨日の朝日新聞の朝刊と夕刊で、大阪国税局に関する記事が3つ目にとまりました。
同じ日に国税局での発表か何かが一緒にあっただけなのだろうとは思うのですが。
2
1つ目。「3.9億円所得隠し 液晶会社に容疑」
「約3億9400万円の所得を隠し、法人税約1億1800万円を脱税したとして、大阪国税局は、液晶ディスプレー加工会社「NSC」(大阪府豊中市)と西山智弘・元社長(46)ー昨年4月辞任=を法人税法違反容疑で大阪地検に告発した。すでに修正申告し、重加算税約4600万円を含め全額納付という。」
「関係者によると」ということで
「同社は07年2月期までの3年間、『配送費』などの名目で取引実態のない請求書を下請け業者に作らせ、いったん下請けに支払う手口で所得を隠し、法人税を免れていたとされている。」
「下請けへの支払い分は、西山元社長に現金で戻させていた。」
「同社は71年設立。07年2月期の売り上げは約77億円で従業員は約350人」
2つ目。「法人税8700万円脱税で告発」
「大阪国税局は、金属精錬業『大阪亜鉛工業』(大阪市西淀川区)と林昭宏社長(71)を法人税法違反容疑で大阪地検に告発した。同社は既に修正申告し、重加算税約3500万円を含め全額を納付したという。」
やはり「関係者によると、」として、
「同社は商品の在庫を約1億4千万円分少なく計上したり、架空の退職金約7千万円を計上したりする手口で、06年11月期までの2年間に約2億9千万円の所得を隠し、約8700万円の法人税を免れたとされる。」
3つ目。「申告漏れ3億円 ヤンマーに指摘」「大阪国税局」
「産業機器大手『ヤンマー』(大阪市北区)が大阪国税局の税務調査を受け、08年3月期までの2年間で約3億円の申告漏れを指摘された。うち約2億円については『子会社への寄付金を経費と装った』として所得隠しと認定された。」「すでに修正申告し、重加算税を含め1億数千万円を納めたという。」
ここは「ヤンマーによると、」として、
「国内の子会社と業務の委託契約を結び、委託費を経費に計上していた。だが国税局は『業務の実態がなく、委託費は子会社への利益供与にあたる』と判断したとみられる。」
「ヤンマーの広報担当者は『当局と見解の相違があったが指摘に従った』と話している。」
「同社の09年3月期の売り上げは約2200億円。」
3
と、こんな記事が3つ、朝刊と夕刊で掲載されていました。
最初の二つは、会社と当時の社長が
「法人税法違反容疑で大阪地検に告発」されています。
つまり、おそらく起訴されて、刑事裁判を受けることになります。
ヤンマーの場合は、最初の二社と同じく重加算税を支払っていますが、告発まではされていません。まさに「見解の相違」といったレベルだったからだと考えられます。
これに対し、最初の二社は、まさに「所得隠し」の「手口」と客観的にも判断されるような処理だったことが伺われます。あくまで新聞記事に基づけばですが。
下請けを使って架空の経費を計上する、在庫を少なく計上、あるいは架空の退職金といった、記事を読む限り、なぜすぐに分かるようなことをするのかと非常に不思議なのですが、やはり「動機」が強く作用するのがこの所得隠しになるのだと思います。
新聞記事によれば、1社目の元社長は、
「元社長はこの金で、ポルシェやランボルギーニなどの高級車を含めて車60台を購入していた。社員らと耐久レースに出場したこともあったという。『カーレースで自由になる金がほしかった』と話しているという。」とあります。
また二社の社長は、
「『資金を蓄えておきたかった』と話しているという。」とあります。
税金として支払うべきとされるお金を減らすこと、所得を減らすこと、経費をふくらませること、この「手口」によって、お金をひねりだすわけです。
この「お金」をどうしたいのかが、動機です。
動機があるからこそ、欲があるからこそ、多少無理をしてでも「お金」をひねり出そうとする。
このひねり出された「お金」あるいはこの「お金」が姿を変えたものと、「たまり」と特捜部で脱税捜査を担当していた検察官が表現していたのを見聞きしたことがあります。 今回の記事を読んで、1社目の高級外車を社長が買っていたというのは、まさに「たまり」だなということです。
こういうのが一番目につくようです。しかしご本人は本当に車が好きなんだろうなとは思います。
二社目の「資金を蓄えておきたかった」というのも71歳の社長の動機としてはとてもよく理解できます。
ただ、問題なのは「手口」とされるような悪質な、虚偽の申告、さらにはその金額の大きさなんだろうと思います。
法人税法違反で実刑というのでは、まったく割に合わないと思います。
二社は、いわゆる実力ある中小企業なのだろうと思うのですが、上場企業ではないようなので監査法人の監査はないまでも、それでも税理士等の税務申告のプロは関わっていなかったのだろうかと不思議です。
国税局は告発しているので、たとえ税理士の指摘があったとしても、押し切って、社長の判断でこの「手口」、スキームが計画実行されたという証拠があってのことだろうとは思うのですが。
調査が来たらすぐに分かるようなことをなぜするのか。不思議です。
でもきっと不思議に思う疑念を上回る動機があるというのが、脱税事件の刑事事件なのだろうと思います。
ところで、ヤンマーは広報に取材をしているようですが、最初に二社はそれぞれ「関係者によると」とあるので、たぶん当該会社に取材は行っていないのだろうなと思うのですが、どうなんだろう。国税局の発表頼りの記事ではないかと思われるので、真実は分かりません。あくまで報道によればという推測と疑問の話しです。
(おわり)
*9/30追記
さらに今朝の日経でもありました。
「3500万円脱税容疑 金型業者を告発 大阪国税局」
「2007年12月までの3年間で約1億1千万円の所得を隠し、所得税約3500万円を脱税したとして、大阪国税局は29日までに、プラスチック金型製造業者「エストモールド」の園田龍治経営者(44)=大阪府松原市=を所得税法違反容疑で大阪地検に告発した。重加算税も含めた追徴課税は約4700万円とみられ、修正申告したという。」
やはりまた、「関係者によると、」として、
「園田経営者は富田林市のメーカーにポンプなどの部品のプラスチック金型を卸し、年間4千万円前後の所得があったが、実際には年間約200万円しか申告しなかったという。」
この報道の「関係者」が誰か明示してくれとは思うのですが、記事に基づいて推測すると、この個人事業者の方は、売上げ段階から計上しなかったのかもしれません。大胆不敵。
*10/1追記
さらに今日の日経朝刊。
「消費税免税悪用 1億2000万円脱税」との見出し。
「消費税の免税制度を悪用して、2008年3月までの3年間で、消費税など約1億千万円を脱税したとして、大阪国税局は30日までに、警備保障会社「エスピージャパン総合警備」(大阪市住吉区)と森俊彦元社長(35)=同市阿倍野区=を消費税法違反容疑などで大阪地検に後発した。」
とあります。
「重加算税を含めた追徴税額や約1億6千万円になるとみられ修正申告したという。」
ここでいう消費税の免税制度を悪用したという手法についてはまたどこかで考察を深めたいと思います。
とりあえず、自分の備忘録的にメモ。











