「国税不服審判所と審査請求手続」の研修【松井】

撮影 塩澤一洋氏(http://shiology.com/)。勝手に心の師匠。なんと!iPhone3GSで撮影した写真だということです!絵画のような妖艶な一枚。
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昨日、大阪弁護士会主催の「国税不服審判所と審査請求手続」という研修を受けました。
講師は、大阪国税局不服審判所の所長、本多俊雄さんです。ついこの春までは民事部の裁判官をされていた方です。おそらく2、3年ほど、審判所の所長を務めた後、また裁判所に戻られます。
そうです、国税不服審判所は「国税庁の中の特別の機関」なのですが、その所長は裁判官という法曹が務めているようです。
もう12年前になる、司法修習時代の私がいたクラスの民事裁判教官の裁判官も、一時期、東京の国税不服審判所の審判官をされていましたので。
で、特に守秘義務が厳しいようなのですが、その義務の中で、いろいろと興味深い実務上のお話がきけて面白かったので、ここにまた自分用にメモします。ブログをご覧頂く方にも何か参考になることがあれば。
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国税不服審判所の詳細については、HPが充実しているのでこちらをご覧ください。
http://www.kfs.go.jp/
審査請求事件については、平成20年度、発生件数が2835件あったということでした。ちなみに、異議申立ては5313件、訴訟は355件ということです。
うち、審査請求事件について代理人の状況はどうかというと、これは感覚的なものですがということで、次のような状況らしいです。
代理人なし・・・・47%
税理士代理人・・・29%
弁護士代理人・・・12%
代理人なしで審査請求手続きをされる方が約半数。驚きでした。また、税理士さんも代理人として約3割がついているというのも予想より多く、活躍されているんだなという印象を受けました。
ただ、審査請求について、平成20年度の処理のうちで、納税者の主張が何らかの形で受入れられたものの割合は、14.7%だそうです。
これを狭き門と捉えるのか否か。
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最近の傾向としては、やはり国際税制がらみが多いということでした。
そういえば、大学の同級生などで国税局に就職したという人が、留学しているらしいという話も聞いたことがあるので、国税局の方も力を入れているのだと思います。
また、国際税制がらみになると、金額も大きく、専門性も高く、そして争訟性が強いという傾向があるようです。
企業も、納得出来ないときは国税局に対して争うようになってきたということだと思います。数年前から言われていますが。
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審査請求手続に関しては、審判官として多いのはやはり税務所からの出向の人がほとんだということで、手続的保障といった観点、主張と証拠といった観点、あるいは第三者機関としての視点という点で不慣れな面もあり、法曹出身の審判官として、いろいろと協議しているということでした。
税務所の職員として働いていた方々が、第三者機関として、いわゆる古巣の税務所の判断について改めて審査というのは、これはもう制度的に難しい面があるというのはやむを得ないと思います。
また、法曹ではないので、実体面と手続面を区別して思考するという訓練を受けているわけでもないので、この思考法はなかなか難しい面もあるのだろうと思います。
ただ、もちろん税法については税務所の職員出身の方は実務を経験されたプロですので、逆に法曹出身者の方はその面で教わることが多々有るのだろうと思います。
行政部内の最終判断となる裁決を行う機関としては、よく出来た機関なのだろうと思います。
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ちなみに私は、固定資産税という地方税に関し、地方自治体に対し異議申し立てを行い、自治体の行為が改善されたという経験はありますが、国税に関して、この審査請求手続を利用したという経験はありません。
ただ、講師が言うには、たとえば税理士が代理人となっている件でも、やはり民法上の観点が重要であって、知識と経験が必要な案件で、弁護士さんに相談に行かれたらどうですか?と言いたくなるような案件もないわけではないということでした。
また弁護士が訴訟代理人となって訴訟になった事案でも、審査請求手続の方を利用していてれば、もっと早く妥当な解決が導き出せたのではないかと感じる事案もないわけではないということでした。
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国税不服審判所の目的は次のようなものです。
「税務行政部内における公正な第三者機関として、適正かつ迅速な事件処理を通じて納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資すること。」
おもしろいのは、納税者の正当な権利利益の救済が目的だけではなくて、税務行政の適正な運営の確保にもある点です。
そのためか、不当な処分の取消対象は、違法な処分だけではなくて、不当な処分も取消の対象になるようです。
「違法」「不当」と聞いて思い出すのは、ある裁判官の言葉です。
「違法判決」と言われたら困るけど「不当判決」と言われる分には仕方ないと思える、というものです。
裁判ではそういう世界です。
しかし、この審査請求、裁決においては、「不当」な処分も是正の対象とされるのです。
裁判と、それ以外の似て非なる制度に手続き。
いろいろとあります。またどこかでまとめたいと思います。
相続でよく出てくるので依頼者の方々によく説明するのですが、普通に生活していたら、「裁判所」「裁判官」というひとくくりで、裁判所、家庭裁判所、訴訟手続、審判手続、裁判官、審判官、訴訟事項、審判事項の説明が難しいです。「既判力」って何という話も出てくるし。ホワイトボードに書いて、説明させていただくと、なるほどと納得はしていただけるのですが、その後、本当に腑に落ちているのかどうか怪しいことも多く。
相続事件だと、下手したら、家庭裁判所と地方裁判所(高裁、最高裁)をいったりきたりということもあります。だから事件解決が長期化することも多く。前にもどこかで書きましたが、離婚訴訟のように、家裁で一元化するか、地裁でも判断可能とした方がいいのにと思います。
(おわり)
*京都地裁に行ったらよくよるお店、mamaroのスープカレーです。絶品!


















