韓国企業との取引について【金】
先日、弁護士同士の勉強会で、「韓国における債権保全・回収の方法-韓国企業との取引での注意点」という内容で発表をしました。
2008年、リーマンショックにより、当時、ウォン高から一気に円高に振れました。それで、円建てで韓国企業と取引していた日本企業の売掛金回収についていくつか相談を受けました。その相談事例に基づき、2009年に外部のセミナーでも同内容の講演をしたのですが、今回、それについて、少し書いてみたいと思います。
取引で最も基本的な事項の一つに、取引の相手方が、個人なのか、それとも法人なのか、法人であれば、代表権をもっている人が誰なのかを特定し、事前に、相手方の財産関係・信用状況を把握しておくことだと思います。
韓国で事業を行う場合、日本と同じように、個人事業主と法人に大きく分かれます。
韓国の個人事業主の場合、個人の身分確認方法として、住民登録票や運転免許証があるほか、税務署から「事業者登録証」を発行してもらえます。ここには、商号(屋号)、事業所の所在地、代表者の氏名・住所、住民登録番号、開業年月日などが記載されています(ここでいう「代表者」は、事業者登録をした本人をいい、法人の代表者とは概念が異なります)。
一方、法人の場合、商業登記制度がありますので、日本と同様に「商業登記簿謄本」を登記所で発行してもらえます。
韓国の個人事業主と取引をすると、事業者登録証上の代表者や実際に代表者として振る舞っている人と一致しないことが少なくありません。また、法人との取引でも、登記簿上の代表者(代表理事)と違う人が、「会長」、「社長」、「顧問」等の名刺を持って、取引の場に出てくることがあります。
その理由は、過去の不渡りなどで、本人名義で事業者登録をできなかったり、法人の代表者になれないので、他人の名義を借りていることがあるからです。
そのため、取引に先立って「事業者登録証」の写しをもらったり、商業登記簿謄本を取得して、それらの記載事項と実際に取引で相対している人の情報と一致しているかを確認しておく必要があります。
また、個人事業主の代表者、法人の代表者の住所を把握しておけば、韓国でも不動産登記制度がありますので、住所地の不動産登記簿謄本を取ることで、代表者の所有不動産を担保に入れさせるなど、将来の債権回収に備えることもできます。
何を今さら当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれません。しかし、相談に来られた方の中には、相手方の調査を疎かにされている方も時々みられ、債権回収に行き詰まることも多いです。
最近、改めて日本企業の動向を調べたところ、この間の円高や韓国企業の躍進等から、製造業、飲食業を中心にかなりの日本企業が韓国に新たに進出しているようです。進出を考える企業では、進出先でのトラブルに備えて、できるだけの備えをしておきたいものです。
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