« August 2011 | Main | January 2012 »

October 2011

October 16, 2011

間接事実だけで有罪を認定する場合の新たな判断基準【大橋】

Cimg5813


 日本弁護士連合会が発行する月刊誌「自由と正義」。
 弁護士にとっては情報誌ですから、毎月送られてくるものを、遅れ遅れでも目を通すようにはしています。

 9月号の特集1は「厚労省元局長無罪事件を検証する」。
 大阪地裁で展開された、大阪地検特捜部を揺るがす大事件でした。
 関係する大阪の弁護人も顔見知りの方たちで、マスコミの報道も鋭く、印象深く成り行きを見守っていた事件ですので、興味深く読みました。
 
 特集2は「研究者・実務家それぞれの立場から見た国際司法支援」。
 知り合いの後輩弁護士が、どうも国際司法支援に行きたそうにしているので、これも興味深く感じました。

*~*~*~*~*

 さて、これ以外に私の目を引いたのは、
「刑事裁判の新たな展開を求めて=平成22年4月27日付最高裁第三小法廷判決の分析=」
というタイトルで、東京弁護士会の渡辺脩弁護士が寄稿された記事です。

 日弁連の刑事法制委員会所属の弁護士で、「大阪市母子殺人事件」の意義について委員会内判例研究チームでの検討結果の要約を書かれています。

 「大阪市母子殺人事件」は、2002年、被告人男性が養子(妻の連れ子)の妻及びその子(一歳)をマンション内で殺害した上、その部屋に火を付けたという、殺人2件及び現住建造物放火の容疑で起訴された事件で、無罪を争いましたが、1審・2審と有罪(死刑)判決が出されていたものです。
 昨年4月の上記最高裁判決で、大阪地裁に差戻しされ、現在審理中です。

 この最高裁判決は画期的なものだったということで、ここへさわりを紹介し、私の覚えともしておきたいと思います。

この判決は、「間接事実」だけで有罪を認定する場合、「間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない」等の事実関係が含まれていることを要するという(裁判長藤田宙靖、裁判官田原睦夫、同近藤崇晴、同那須弘平。反対・裁判官堀籠幸男)。

 これは、長年に亘って、「無罪推定の原則」を実質的に形骸化させてきた日本の刑事裁判における事実認定の在り方に、新たな判断基準を導入して、強力な楔を打ち込んだ新判例である。この判決はまた、「裁判員裁判」のもとで、「無罪推定」の原則と、有罪認定のために必要な「合理的疑いを容れる余地のない程度の証明」をどう市民のものにしていくのかという問題意識にも貫かれている。

 これは、すべての弁護人と市民に強く支持されるべき判決である。


 「間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない」等の事実関係が含まれていることを要する、というのがどう画期的であるのか。

 説明によれば、日本の刑事裁判の事実認定において、長年、主流となってきたのは「総合判断」の手法であるといいます。
 「個別に見れば証明力の薄い幾つかの間接証拠の積み重ねの上に、『被告人が犯人であるとすればその全てが矛盾なく説明できるが故に被告人が犯人であるとする』認定手法をいうとのことです。

 確かに、これは判断手法を180度変更したもので、
「この被告人がしたとしておかしくない」 から
「この被告人がしたのでなければおかしい」 への変更です。

 ただし、こんなことも書かれていました。

 その一方で、最高裁判例から判例集に登載する判例を選別して注釈を加える最高裁の「判例委員会」は、4.27判決について、「強力な反対があったため」に、「被告人が犯人でないとしたら合理的に説明することができない事実関係を要する」との「新たな判断基準」を判例要旨に掲げることを見送ったという(山口進、宮地ゆう著「最高裁の暗闘」95頁、朝日新書、2011年)。

 ともあれ、この判決の存在を頭の隅に覚えておくことにします。

October 09, 2011

香川でうどんを食べながら【大橋】

 10月6日、香川県高松市で、日弁連の人権擁護大会シンポジウムが開かれました。

 一般参加OKのシンポが3分科会ありました。
 第1分科会「私たちは「犯罪」とどう向きあうべきか?ー裁判員裁判を経験して死刑のない社会を構想するー」
 第2分科会「「希望社会」の実現~豊かさへの社会保障をデザインする~」
 第3分科会「患者の権利法の制定を求めてーいのちと人間の尊厳を守る医療のために」

 そのうち、私が参加したのは、第1分科会です。
Dsc_00261


 かねてから、裁判員裁判を契機に、裁判員に「死刑宣告」の経験を強いずに済む死刑廃止の議論を巻き起こせないか、死刑よりも更生のための処遇を考えられないか、ということを考えてきました。
 これが、5時間にわたるシンポの中で、強いメッセージとなって発せられたことで、私は大変嬉しく思いました。

 北欧の刑務所の処遇を参考にしたのがよかったと思います。日本で死刑執行されたある確定死刑囚の人生を辿り、「もし彼がノルウェーにいたら」との設定で比較するパワーポイントの説明は、なかなか説得力がありました。
 
 大事なのは、犯罪を犯した人を彼岸に置くのではなく、自分と地続きのところで生きている同じ人間だという感覚を持つことなのだと思います。


*~*~*~*~*

 さて、人権擁護大会は、ついでに旅行する機会でもあります。

Scimg5779


 私は、同好の士4名とともに、「讃岐うどんツアー」に向かいました。

Scimg5790


Scimg5789

 香川には、聞くところによると、現在1万軒にも及ぶ讃岐うどん店があるそうです。

 私が食すことができたのは、たった4軒だけでしたが、いずれもガイドブックに載るメジャー店でした。

 1軒め 高松市内、お昼時だったので40人待ちくらいの行列。
 2軒め 郊外で、ピーク時ではなくすぐ入れたが、店の大きいのに感心。
 3軒め 郊外の老舗で、午前10時半ころなのに既に大行列。警備員も出ている。お店は小さめだが大駐車場が3つ、ツアー客が観光バスで訪れるのに驚く。
 4軒め 昼時だが行列はなくてすぐ食べられた。ロゴ入りTシャツを売っているのに目を引かれる。

・・という具合。

 私はそんなに食通ではないので、どれがどううまいか、といったことは評価しかねるのですが、考えたのは「参入障壁」です。

 うどんはせいぜい500円前後ですから、何軒回って食べてもお手頃で、かつお腹に限度があります。
 押しかける家族連れ、若いカップル。
 ただ、彼らも私たちのように、ガイドブックを見ながら「こことここ」と決めて回っていると思われますので、ガイドブックに載ってよい評価を書いてもらわないと、お客が回ってこないと思われます。

 急膨張している「老舗」より、工夫を凝らしている新参のうどん屋さんの方が、もしかするとよい味を出しているかも知れません。
 しかし、限られたお腹のキャパシティと時間の中で、新参のうどん屋さんを体験してみようということにはなりにくいのではないか。

 ん? もしかしてこの思いは、競争を増す弁護士業界でいかに頭角を現すかの問題と同じでは?

 でも、とにかく讃岐うどん業界の皆さま、工夫を凝らして、押し寄せるうどんツアー客をゲットしてください。

青森・六ヶ所村で【大橋】

 最近、青森の六ヶ所村へ行く機会がありました。

 六ヶ所村は、青森県の下北半島の付け根部分(太平洋側)にあります。
 「日本原燃株式会社」が操業する「原子燃料サイクル施設」(ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、再処理工場など)が存在することで有名です。

 東日本大震災から生じた福島第1原発の事故で、大気中に撒き散らされてしまった放射性物質が大きな問題となっています。
 
 しかし、放射性物質は「事故だから出てきてしまった」のではなく、原子力発電を行う限り「放射性核廃棄物」として必ずその処理が問題となるはずのものです。
 この処理を行う施設が、六ヶ所村にあるわけです。

 PRセンターでその仕組みを見ていますと、放射性物質はガラス固化体にして危険が少なくなるまで保管するとか、放射能の帯び方が少ないものはコンクリート詰めにするとか説明されていますが、「完全に放射性物質を外に出さない」という処理ではないことがわかります。

 放射性物質の濃度が低くなった段階で、最後には大気中に放出するとか、廃液を海中に放出するとかいうことが説明されています。

 でも、放射性物質の濃度が一定水準以下であれば「健康に問題ない」とは、科学的に証明されていません。
 (そのことを「閾(しきい)値が存在しない」という言葉で説明されていますね。)

 危険な核のゴミが、各原子力発電所から六カ所村に運ばれて、まだ軌道に乗っていない「核燃料サイクル」のために集結していっている状態です。

 ここも、地震・津波で危険が生じることに変わりありません。

*~*~*~*~*~*

 さて、この六ヶ所村に再処理工場を造らせない、また核廃棄物を運び込ませないために、かつて大きな運動が展開されていました。
 このことを私はよく知りませんでしたが、現地で「花とハーブの里」を運営しておられる菊川慶子さんの著書、
「六ヶ所村 ふるさとを吹く風」(影書房、2010年9月)
を読んで、六ヶ所村で起こったできごとと、運動の中心を担われた菊川さんの個人史・思いを知ることができました。

 「花とハーブの里」は、とてもおしゃれなサイトで、今年春まで行われた「チューリップ祭り」や、「核燃に頼らない村作り」のためのルバーブジャムの製造販売などを紹介しています。

 この著書を読んでみると、子どもたちのために、将来のために、息長い取り組みをしたいという思いがよく伝わります。
 皆さんにもこの本を読んでいただきたいのですが、その上で、このルバーブジャムなどお求めいただいたらいかがでしょう?

Scimg5802


 この、雑草の中にある、大きな葉を茂らせているのがルバーブです。
 例えて言えば「フキ」のように、茎を食用にするそうですが、熱を加えるとトロトロになり、酸味があって、砂糖を入れて煮詰めてジャムにするとのこと。繊維が多くて、美肌によいとか。
 青臭くないかな?と思いましたが、美味しいです。
Scimg5706


 青森の人は、大阪人から見ると(私のルーツは浜松ですが) 、本当に控えめでシャイな感じです。
 青森で、方々の原発から出た核廃棄物を黙って抱えている状況に甘んじることなく、既に直面している「核のゴミ」問題を考えなければなりません。
 「各地へ核廃棄物を引き取ってほしい」というのが、現地の人々の偽らざる思いなのです。

 
 

« August 2011 | Main | January 2012 »

October 2014
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

Recent Trackbacks