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June 03, 2008

入管職員暴行事件・嬉しい逆転勝訴【大橋】

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 5月29日、国を相手にした国家賠償請求訴訟で、一審敗訴を逆転させた勝訴判決を得ることができました。

 西日本入管センターに収容されていた中国人男性が、電話を掛ける時間がずれ込んだことを大声で抗議したことから入管職員に娯楽室へ連れ出されて他の収容者から見えないところで床に組み伏せられました。さらにこれを大声で抗議したところ、保護室へ両手両足を掴まれて連れて行かれ、途中で手足を突っ張って暴れたことから職員による「制圧」を受けました。そのことで男性は1年以上にわたる治療を要する腰痛を生じたことから、国家賠償請求訴訟を起こしたものです。

 この事件は2002年に起こったもので、訴訟を起こしたのが2004年。一審判決が2006年。そして控訴審判決が2008年と、このごろとしてはなかなか時間の掛かった訴訟でした。

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 私は提訴の前に行われた「証拠保全手続」には参加していませんが、入管側は、「制圧」行為を録画したビデオテープの提出に何やかやと抵抗し続け、1日で終わるはずの手続を3日続行したと聞いています。

 なぜビデオテープがあるのか不思議に思われるでしょうか?

 入管職員は、制圧行為をするときには、収容者がいかに規律違反をしたかを示すために、その状況をハンディカメラで録画し、法務省へ報告しているということなのです。

 法務省には「それでよし」となるものが、裁判所ではそうならないことを予測したのでしょうか・・・その抵抗。

 そして第一審。

 原告男性は、既に退去強制で中国に帰国しているのですが、最も「制圧」行為の激しかったとき、誰に何をされたのかということを全く覚えていないのだそうです。
 第5肋骨(胸と脇の下の間あたり)が折れているのはレントゲンではっきりしていましたが、第12肋骨(腰の上あたり)については当時の主治医がレントゲンを意識して撮っておらず、確定診断がありませんでした。

 それに対して、入管の職員たちは、揃って詳細な陳述書を提出し、尋問にもそつなく答えていき、「制圧」の実態がなかなか明らかにできません。

 証拠保全したビデオは、職員の大声をよく録音しているのですが、最も大事なところでビデオがなぜか後退して他のところを写し、撮影者がようやく戻っていくと、既に原告男性は保護室の床で伸びている、というものです。

 証拠が足りないのか?第一審は、「制圧」行為が正当であった(原告男性が暴れたのを抑えただけ)として原告の請求を棄却しました。

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 新規まき直しの控訴審。
 控訴理由を一生懸命考える中で、たまたま相談した整形外科医がビデオを見て「これはひどい。絶対に膝落としを腰に入れていると思いますよ。肋骨の他にきっと横突起も折れていると思いますけど」と言ってくれたのが転機となりました。

 横突起というのは、肋骨の下、腰椎の両側に小さく突き出ている骨です。背骨にくっついている骨ですから、肋骨のように外側からの力で容易に折れるというようなものではないそうです。

 それでレントゲンを見せると、「やはり折れていますよ。腰の上の肋骨と横突起も」!ということになりました。
 不思議なのは、これまで数人の整形外科医の診断を受けてきているのに、横突起骨折の存在を指摘したのはこのお医者さんが初めてだったということです。それだけに国も抵抗してきます。

 そして控訴審は「横突起まで折れているのか否か」を巡り、医師の意見書の応酬による立証合戦となりました。

 裁判所が国に和解を打診したとき、我々は「もしかすると?」と思いました。

 しかし国は和解を蹴りました。

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 そして控訴審判決。

 入管職員の行き過ぎの「制圧」行為を認定したくだりです。

 「(控訴人が抵抗したので)この様子を見た本件職員らは、にわかに激高して極度の興奮状態に陥り、「暴れるな言うとんじゃお前は」、「じっとせんか、こら」、「うら」、「まだやるんか、おら」、「おお」、「まだすんかこら」、「お前は何いちびっとんじゃこら」、「お前は調子のんなこら」、「まだやるんか、おお」などと凄みのあるどすのきいた大声で語気鋭く申し向けながらその場で控訴人を床に押さえつけて制圧した。この間おおよそ数十秒間であり、控訴人は、あたかも本件職員らの激しい怒声にタイミングを合わせこれに呼応するかのように、「痛い、ああ・・・痛いよ、ああ・・・痛い、ああ・・・痛い」、「痛い、痛いよ、あー」などと断続的に苦痛に耐えかねた断末魔の悲鳴に近いような叫び声を数回にわたって上げている。」

 ビデオはまさにこのようなものなのです。

 どうして第一審はこれを見て「制圧行為の行き過ぎ」と思わなかったのか理解に苦しみます。

 裁判所の心証は、「骨が3箇所も折れている」ことから一気に深まったのでしょう。

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 控訴審判決は、治療費実費と、慰謝料35万円と、弁護士費用5万円を認めました。

 嬉しい、しかし安い。 複雑な気持ちの勝訴判決でした。


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