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June 2008

June 15, 2008

「国際職場のいじめ学会」参加報告【大橋】

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 6月4日から6日まで、カナダ・モントリオールのケベック大学モントリオール校(UQAM)で、第6回「国際職場のいじめ学会」「bullying_Aff_Envoi.pdf」をダウンロード

が3日間にわたり開催されました。以下はその参加報告です。

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  参加者は、「NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」代表で奈良県立医科大学講師の御輿(おごし)久美子さん、社会保険労務士で臨床心理士の涌井(わくい)美和子さん、「職場のモラルハラスメントをなくす会」メンバーの長尾香織さんと宗景(むねかげ)なつ子さん、私の友人で「アジェンダ」編集部の藤井悦子さんと大橋の6名。

  事前の早期割引申込でも525カナダドルがかかった。結構高いなと思われる金額であったが、これは英仏の同時通訳設備を要したからだと思われた。

  第1日目の開会式では、同時通訳イヤホンの説明がないままにフランス語での挨拶が2人続き、3人目が英語で話し始めて、会場が「どうなってるんだこりゃ」という雰囲気になり始めた。私は、英語とフランス語は親戚のようなもので、みんなどっちでも理解できるのだろうくらいに考えていたが、やはりそういうものではないようで、同時通訳イヤホンの借り出し説明がなされた。要するに段取りの不備だった。

  しかしやはり英語は世界言語。フランス語圏以外の人は英語でプレゼンテーションをするし、コーヒーブレイクには英語で挨拶を交わしている。英語が聞き取れないということの不自由さを痛感する3日間だった。同行者はそれぞれに英語をそれなりに話せる人たちであったため、私はその人たちから独立してコミュニケーションをとることができなかったのである。他人の手をわずらわすと思えば、自分の聞きたいことを聞くのにも遠慮が起こる。最低、リスニングができなければどうにもならない。スピーキングはブロークンでも自分のペースでできるが。

  どうやったら英語耳が得られるのだろうか? そんなことばかり考えながら、プレゼンのパワーポイントの英語を読み、デジカメで記録し、そこの単語を電子手帳で引き、説明の英語は全く聞き流していた。見事に聞き取れないものだと感心した。
  
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(御輿先生のプレゼンテーション)

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  しかしそんな情けない3日間の中でも、同行者の「職場のモラルハラスメントをなくす会」メンバーが頑張って、事態はそれなりに進んでいった。

  職場のいじめ(モラル・ハラスメントとフランスでは名付けられている)問題は、取組みが先進的なのは北欧・フランス・イギリス・アイルランドといった国を中心とするヨーロッパであり、北米はぼちぼち。南米や他地域はこれからというところである。
  日本においても、「いじめ」「パワーハラスメント」が昨今関心を呼んでいるのは感じられるが、それは「過労自殺」の一要因としてのうつ状態として労災認定の中で認識され、あるいは最近は職場に必ず存在すると思われるメンタルヘルス系休職者の増加から来ていると思われる。未だ組織だった研究もないし、職場のいじめの防止義務を立法化する動きなど未だカケラも認められないという状況にある。
  だから、職場のいじめについての対策を日本でも推し進めよう、そのために学会を日本に招致して気運を盛り上げよう、というのがこの学会へ前回(2年前の第5回学会)以来乗り込んでいる「職場のモラルハラスメントをなくす会」の意気込みであり、私も共感しているところである。
 
  今回、学会が単なる回り持ち交流会から組織化へ進み、国際組織として7名の理事を選出して設立された。この7名の中に日本人を誰か入れたいという思いがあったが、さすがにそう簡単に理事が務まるものではなく今回は断念。理事になるには職種等の条件がある他に、何しろ英語で丁々発止のやりとりができなければ付いていけないのである。
  その代わり、メンバーは精力的に理事や他の参加者と交流し、2年後は無理だとしても4年後の学会を日本に招致することを見越して、この1~2年でアジア・オセアニア地域での国際会議を持ちましょうという展望をまとめた。
  今回の学会も、アジアからの参加者は遠方であることもあるのかほぼゼロであった。辛うじてインドからの参加者が理事にも選出されたが、韓国の参加者もイギリス留学中、他の1人の日本人参加者もアメリカで臨床心理の仕事に就いている人だった。(発表内容は日米のいじめ内容の比較研究であり、研究の深化を期待したいところである)
  アジアでの運動の盛り上げはこれからである。

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  職場のいじめ問題は、フランスから直輸入した「モラルハラスメント」という言葉を用いると概念がイメージしにくいところがあるが、結局は「職場環境の中でのストレスフルな言動」のもたらす問題であり、被害従業員側からすれば「快適な職場を提供されるべきなのに心身を害する環境に置かれている」という雇用契約に付随する使用者の職場環境整備義務の債務不履行の問題である。

  ただ、加害従業員ないし経営者側からすれば、故意による「いけすかないからいびる、自ら退職するように仕向ける」というものから、そういう認識はなくて「仕事上のミスの指摘が行き過ぎた、あるいは思いがけず指摘された方が落ち込んでしまった」というレベルのものまでを包括すると思われる。
  単なるコミュニケーションギャップ、「言わなくてもわかるはず」がわかっていないという問題であれば、なんとか相互に近づくスキルを習得することで改善は図れるだろう。
  しかしそうではなく故意によるといえる、ストレスのはけ口のようにして他の従業員を攻撃する事態は深刻である。DV(ドメスティックバイオレンス)をはたらく夫(あるいは妻)の病理も最近は理解が進んできたと言えるが、結婚してしまったものを離婚で解決するのには多大な労力を要する。職場の「いじめ魔」対策もまた、被害者が職場を離脱するか、「いじめ魔」を職場から追放するか、というシビアな問題を提起する。これにはDV同様、和解はないであろう。
 職場のいじめ問題も、DV同様に、関係解消後の被害者の生活設計を社会がいかに援助するかを抜きに語れないし、加害者にはどんな働きかけが必要か(理解させることは困難であろうが!)を研究し何らかの取組みをすることも今後の課題となるだろう。

 職場のいじめ問題を国際的な視野と協力をもって、しかし国内で地道に普及を図る活動を行って盛り上げていく必要があると感じた3日間であった。特に労働法学者の協力は不可欠と思われる。
 さて2年後の次回学会はデンマーク(コペンハーゲン)またはフランスが候補地であるという。私は2年後に英語で普通にコミュニケーションができるようになっていたい。英語ニュースの聞き流しからでも目標の第1歩にはなるだろうか?

June 03, 2008

入管職員暴行事件・嬉しい逆転勝訴【大橋】

Photo

 5月29日、国を相手にした国家賠償請求訴訟で、一審敗訴を逆転させた勝訴判決を得ることができました。

 西日本入管センターに収容されていた中国人男性が、電話を掛ける時間がずれ込んだことを大声で抗議したことから入管職員に娯楽室へ連れ出されて他の収容者から見えないところで床に組み伏せられました。さらにこれを大声で抗議したところ、保護室へ両手両足を掴まれて連れて行かれ、途中で手足を突っ張って暴れたことから職員による「制圧」を受けました。そのことで男性は1年以上にわたる治療を要する腰痛を生じたことから、国家賠償請求訴訟を起こしたものです。

 この事件は2002年に起こったもので、訴訟を起こしたのが2004年。一審判決が2006年。そして控訴審判決が2008年と、このごろとしてはなかなか時間の掛かった訴訟でした。

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 私は提訴の前に行われた「証拠保全手続」には参加していませんが、入管側は、「制圧」行為を録画したビデオテープの提出に何やかやと抵抗し続け、1日で終わるはずの手続を3日続行したと聞いています。

 なぜビデオテープがあるのか不思議に思われるでしょうか?

 入管職員は、制圧行為をするときには、収容者がいかに規律違反をしたかを示すために、その状況をハンディカメラで録画し、法務省へ報告しているということなのです。

 法務省には「それでよし」となるものが、裁判所ではそうならないことを予測したのでしょうか・・・その抵抗。

 そして第一審。

 原告男性は、既に退去強制で中国に帰国しているのですが、最も「制圧」行為の激しかったとき、誰に何をされたのかということを全く覚えていないのだそうです。
 第5肋骨(胸と脇の下の間あたり)が折れているのはレントゲンではっきりしていましたが、第12肋骨(腰の上あたり)については当時の主治医がレントゲンを意識して撮っておらず、確定診断がありませんでした。

 それに対して、入管の職員たちは、揃って詳細な陳述書を提出し、尋問にもそつなく答えていき、「制圧」の実態がなかなか明らかにできません。

 証拠保全したビデオは、職員の大声をよく録音しているのですが、最も大事なところでビデオがなぜか後退して他のところを写し、撮影者がようやく戻っていくと、既に原告男性は保護室の床で伸びている、というものです。

 証拠が足りないのか?第一審は、「制圧」行為が正当であった(原告男性が暴れたのを抑えただけ)として原告の請求を棄却しました。

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 新規まき直しの控訴審。
 控訴理由を一生懸命考える中で、たまたま相談した整形外科医がビデオを見て「これはひどい。絶対に膝落としを腰に入れていると思いますよ。肋骨の他にきっと横突起も折れていると思いますけど」と言ってくれたのが転機となりました。

 横突起というのは、肋骨の下、腰椎の両側に小さく突き出ている骨です。背骨にくっついている骨ですから、肋骨のように外側からの力で容易に折れるというようなものではないそうです。

 それでレントゲンを見せると、「やはり折れていますよ。腰の上の肋骨と横突起も」!ということになりました。
 不思議なのは、これまで数人の整形外科医の診断を受けてきているのに、横突起骨折の存在を指摘したのはこのお医者さんが初めてだったということです。それだけに国も抵抗してきます。

 そして控訴審は「横突起まで折れているのか否か」を巡り、医師の意見書の応酬による立証合戦となりました。

 裁判所が国に和解を打診したとき、我々は「もしかすると?」と思いました。

 しかし国は和解を蹴りました。

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 そして控訴審判決。

 入管職員の行き過ぎの「制圧」行為を認定したくだりです。

 「(控訴人が抵抗したので)この様子を見た本件職員らは、にわかに激高して極度の興奮状態に陥り、「暴れるな言うとんじゃお前は」、「じっとせんか、こら」、「うら」、「まだやるんか、おら」、「おお」、「まだすんかこら」、「お前は何いちびっとんじゃこら」、「お前は調子のんなこら」、「まだやるんか、おお」などと凄みのあるどすのきいた大声で語気鋭く申し向けながらその場で控訴人を床に押さえつけて制圧した。この間おおよそ数十秒間であり、控訴人は、あたかも本件職員らの激しい怒声にタイミングを合わせこれに呼応するかのように、「痛い、ああ・・・痛いよ、ああ・・・痛い、ああ・・・痛い」、「痛い、痛いよ、あー」などと断続的に苦痛に耐えかねた断末魔の悲鳴に近いような叫び声を数回にわたって上げている。」

 ビデオはまさにこのようなものなのです。

 どうして第一審はこれを見て「制圧行為の行き過ぎ」と思わなかったのか理解に苦しみます。

 裁判所の心証は、「骨が3箇所も折れている」ことから一気に深まったのでしょう。

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 控訴審判決は、治療費実費と、慰謝料35万円と、弁護士費用5万円を認めました。

 嬉しい、しかし安い。 複雑な気持ちの勝訴判決でした。


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