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June 2006

June 26, 2006

靖国訴訟ー戦没者の追悼をめぐって【大橋】

 6月は、偶然にも戦没者の追悼をめぐる2つのできごとがありました。

 一つは、6月5日・6日に北海道護国神社(旭川市)での例大祭を見学したことです。
 
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 この例大祭は、昨年にこれを見学した高橋哲哉教授(「靖国問題」の著者)が「自衛官が堂々と制服で参列している」「ボーイスカウトが『同期の桜』の舞踊を披露する」ことに驚いて、同じく昨年の「政教分離訴訟全国交流集会」での講演で話をされたものです。
 それで、今年の「全国交流集会」はわざわざこれを見るために旭川で開催されたのでした。

 ところが、今年の例大祭は、『同期の桜』がなくなり、やや肩すかしを食らってしまったのでした。

 例大祭には、北海道の各地から、遺族会がそれぞれに旗を掲げて参列されていました。
 年に一度、戦争で肉親を失った遺族がここに来て、「英霊」になった肉親を偲ぶのでしょう。
 そこには、やはり、舞台装置として「国家の関与」は不可欠なのだろうと実感しました。
 なぜ「英霊」なのか。国家が祀ってくれるからです。
 故人を偲ぶ追悼ならば、その信じる宗教に従って祀ればよいのです。「英霊」にするには、国家の関与が不可欠なのです。
 しかし、このしくみを排除するためにこそ、憲法20条の政教分離原則は制定されたはずなのです。


 さて、2つめは、突然、6月23日に小泉首相靖国神社参拝違憲アジア訴訟(大阪第1次訴訟)の最高裁判決が出されることになり、最高裁判所まで行ってきたことです。
 弁護士をしていても、最高裁の法廷で判決を聞く機会などそうそうありません。私は、初めてでした。
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 「要塞のような」とよく形容されるグレーのモダン建築です。
 おまけに事件が事件だからか(とはいえ、こちらが逆転勝訴することはあり得ない状況でしたので、そんなに右翼が押し寄せる状況ではなかったのですが)、最高裁職員総動員の様相でものものしい警備でした。

 第2小法廷は4名の裁判官。大阪弁護士会出身の滝井判事が座っていました。
 判決は、既に報道されたとおりの「違憲判断回避判決」。
 「人が神社に参拝する行為自体は、他人の信仰生活等に対して圧迫、干渉を加えるような性質のものではない」。「内閣総理大臣の地位にある者が靖国神社を参拝した場合においても異なるものではない」。
 この逃げ切り方にはまさに唖然としました。
 ただし、この判決には滝井判事の補足意見がついていました。
 「何人も公権力が・・その意に反して別の宗旨で故人を追悼することを拒否することができるのであって、それが行われたとすれば、強制を伴うものでなくても法的保護を求め得るものと考える。」
 ここに、訴訟団の遺族が必死に訴えてきた宗教的人格権のひとつの形が示されたように思われます。

 あまりに宗教に寛容というか、いい加減な日本で、信教の自由の価値を認識し国家による侵害を排除するということ。政教分離原則の基本を改めて考えさせられています。
 ついでに、今、NHKブックス「国家と犠牲」(高橋哲哉著)を読んでいます。「靖国問題」とは異なる視点から、国家により戦没者を讃えることの意味について考察されています。

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