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March 11, 2006

モラル・ハラスメントをご存じですか?【大橋】

 先日、マリー=フランス・イルゴイエンヌさんというフランスの精神科医の方を招いた講演会に参加しました。
 1998年、「モラル・ハラスメントー人を傷つけずにはいられない」という著書を出され、それ以来、被害者の心のケアに努める傍ら、モラル・ハラスメントの専門家として各地で講演・セミナーを行っている方だそうです。

 モラル・ハラスメント、という言葉は、前から知られていたのかもしれませんが、私は、ごく最近、ある女性弁護士の勉強会でレポートされたことで初めて知ったのです。
 フランスで「社会近代化法」という法律ができ、職場でのモラル・ハラスメントの結果退職に追い込まれた場合にこれを無効とする等、労働関係での被害者救済手段として導入されたと知りました。

 モラル・ハラスメントを日本語に訳すと「精神的嫌がらせ」という意味ですが、「精神的暴力」という方がニュアンスは近い、と聞きました。
 セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、スクール・ハラスメント、そしてドメスティックバイオレンスへの精神的暴力の包括・・様々な社会関係における「精神的暴力」が違法行為として概念化されてきています。
 モラル・ハラスメントは、言ってみればこれらを大きくまとめた概念です。

 そのとき購入した著書2冊は、まだ読めていないのですが、こうした専門家ー精神科医による研究が私たち弁護士の法的主張の重要な証拠になるだろうと思っています。

 その講演会では、今現にモラル・ハラスメントで元の雇用主を訴えている裁判の原告女性がアピールをしていました。
 その女性は、ある特許事務所に勤務していましたが、所長とその意を汲んだベテラン事務員から若い事務員が次々と集中的に嫌がらせを受けて退職に追い込まれる状況で苦痛の日々を送っていたそうです。
 それは、他の事務員の見ている前で「どうして何度言ってもわからないのか」「育ちが悪すぎる」というような罵倒を執拗に浴びせかける、それも何時間も、という状況です。
 確かに仕事のミスがあったからなのでしょう、事務員はまっとうな反論ができません。
 それでも、「そこまで言っては言い過ぎ」という限界があります。そうしたことを他の事務員がかばって言ってあげることもできない状況。次の標的にされかねないからです。正に、いじめです。

 その女性は、「退職してから、退職した女性同士で集まり、あれはいったいどういう状況だったんだろうか、とすっきりしない気持ちで話し合っていました。でも、モラル・ハラスメントの本に出会い、答をやっと見つけた気がしました。」という喜びを語っていました。
 そうなのです。罵倒され、罵倒されて、自信を失い、自分が悪かったと責め、相手方の「論理」に反抗する術を失ってしまい、生命力を失わされていく。DVの被害者もそう、いじめの被害者もそう。
 しかし、「それはモラル・ハラスメントだ!」と加害者に反論できる、そういう武器としてこのモラル・ハラスメントという概念は使えるのです。

 この講演会では、イルゴイエンヌさんに対して、「加害者とはどういう人間だと思われますか? どうしたらその加害者は態度を改めるのでしょうか?」という質問が出されました。
 答は、「加害者は、自らが成育過程で辛い目にあって精神的な傷を負った人であるか、あるいは甘やかされ放題で育てられ、人の痛みが分からない人。そして、加害者は自分が加害者だとは決して思わない。被害者から指摘されると自分を被害者だと思う人なのです。」ということでした。
 うんうん、そうだそうだ、と思いながら聞きました。仕事でいろいろな人に会いますから。
 加害者もまた、ある不正常な成育環境で育ってしまったことによりその人格を形成されてしまった被害者ではあるでしょう。
 しかし、そうであるからといって、自らが人に加害行為をしているのであれば、社会的に許されることではありません。

 一人一人の人権を守る、ということ。人権とは、人間として生きる一人一人の尊厳です。被害者が尊厳を回復する武器としてモラル・ハラスメントを使えるように。私もよく勉強せねばならないと思っています。

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Comments

 星さん、お問い合わせありがとうございます。
 具体的なお話、相談予約でしたらダイレクトメールでいただくのがよろしいかと思いますが、だいたいの金額といいますと「1時間1万500円」の相談料をいただいています。
 1時間を超えても直ちに追加料金はいただいておりませんので、どうぞお気軽に。

現在、モラハラで離婚を考え中なのですが、
ご相談したいので、大体の金額を教えてください。よろしくお願いいたします。

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