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March 2006

March 29, 2006

「壊れる男たち」をお勧めします【大橋】

 最近、大阪労働者弁護団の中島光孝弁護士から「面白いよ!」と勧められたのが、標題の岩波新書「壊れる男たち」(金子雅臣・著)です。
 今年2月21日の発行ですので、まだ書店でも平積みでした。

 これは面白いです。
 著者は東京都職員で、労働相談に従事しながら、社会派ルポライターとして主に労働関係の現状の本を書いておられ、特にセクシャルハラスメント問題では第一人者として有名です。
 まさに現場から、セクハラを起こす男性とはどういう人たちでどんな考え方をしているのかを描き出しています。
 女の私としては、まことに興味深く読み進んだ次第です。

 著者は男性ですが、セクハラで加害者とされた男性たちとの面談で、男性が「男性同士、わかるでしょ」という前提で言い訳をするのが通らずに次第に追いつめられていく様子を克明に描いているのです。

 中身は読んでいただきたいのであまり詳しく書きませんが、著者の問題意識は、「このごろ、男たちが壊れ始めている」というものです。

 「このテーマを考えるにあたっては、男たちはこれまで、職場でも家庭でも幾重にも下駄を履かされて生きてきたことを認めなければならない。男たちは、そうした意味では、男というブランドを与えられて生き続けてきたのである。
  ここにきて男たちの価値が急速に下落しているように見えるのは、単に男性優遇措置の有効期限が切れ、正当な価値評価がはじまったに過ぎないのだ。」

 「果たしてこのような様変わりのショックに男たちは耐えられるのか、それとも耐えられずに崩壊してしまうのか。まさに、男たちにはそれが問われているのである。」

 女性からも、男性からも、なるほどなあと考えさせられる一冊です。きっと。

March 26, 2006

離婚をゆっくり考えるための相談を【大橋】

 大橋です。継続投稿を頑張っています。

 このごろ、本当に新規制定法令が多くて、弁護士会でも研修ラッシュです。
 弁護士としては、「どんな法令ができているのか」くらいは知識として入れておかないと、いざというときに気づいて調べることすらできません。
 その一方、「専門性の強み」がますます重要になってくるであろうと実感します。
 専門分野であれば相談を聞いたその場で方針まで出せるものが、未着手の分野の相談であれば「数日調査にいただきます」と言い、他の業務の合間を縫って法令と制定趣旨と類似判決例などを調査せねばなりません。
 
 松井は、前回のブログで「相続の専門性」について強くアピールしています。

 私が現在多く手がけるに至っている「離婚」も、同様に専門性があると思います。
 法制度をいかに利用してスムーズな解消を進めるかという点、またとりわけ、離婚の影響をもろに被ることになる子どもにとっていかによりましに解決するかという点は、重要です。

 ところで、今、ことに必要性を感じ、提供できたらと考えているのが、「カウンセリング機能を持つ法律相談」です。
 離婚に直面した人は、最も近しい関係だった配偶者と心が離れていくことへの困惑とか虚脱感とか、相手方を責める感情、あるいは自分を責める感情に激しく揺り動かされているものです。
 また、相手方が大変激しく出てくる場合、「一刻も早く解消してしまいたい」と離婚をとにかく焦ることがあります。
 そして、後で冷静になってみると、「慰謝料がもらえたのではないか、養育費の請求はできるはずではないか」と悔やんでしまうのです。
 特に、経済的基盤が社会的に脆弱な女性側は、「早まった離婚」をひしひしと後悔することになりかねません。
 こうした精神的に辛い時期を乗り切る心強いパートナーとしては、弁護士が最適任のはずなのです。
 法制度の的確な利用はもとより、かなり有益なのが「相談相手」さらには「窓口として相手方と交渉してくれること」です。
 直接対応しないで済む、ということがどれだけ心の余裕を生むか、依頼者からよく感想としてお聞きします。

 ところが、女性弁護士を含む弁護士全般が、まだまだ「別世界のエリート」「迷っていたらはっきりしなさいと怒られそう」「気持ちをわかってもらえるだろうか」と遠い存在に見られているように思います。
 
 確かに女性弁護士、当然、気が強いです。専門試験を経てキャリアを積んだ自負があります。
 また、それでなければ依頼者からも頼りなく見えるでしょう。
 しかし他方では、キャリアを積んで、依頼者から学び、「離婚という人生の一大転換点で、ゆっくり考える余裕が必要だし、その余裕を差し上げたい」という気持ちも持っています。
 
 そういう意識でより離婚に関する専門性を高め、人生の一大転換点を乗り切るお手伝いをするために女性弁護士を集めて「相談窓口サイト」を作るのはどうだろうか?と構想中です・・・そのサイトで参加弁護士に直接相談予約を入れていただくとか、サイトへ相談申込をしていただくと対応できる弁護士が即座に応答する、といったシステムですね。

 よろしければ、ご要望や感想などコメントしていただければ。
 来年4月の年金分割を待ちながら、「どうしたものだろうか?」と思案中の方も多いはずだとお察しします。
 

March 21, 2006

公益通報者保護法をご存じですか?【大橋】

 施行間近の新法について、弁護士会からの宣伝を兼ねてお知らせしたいと思います。

 「公益通報者保護法」が4月1日から施行されます。 

これは、一言で言うと、「勤務先が違法行為をしているとき、それを防止しようとした労働者を保護する法律」です。
 要点は次のようにまとまると思います。
 
☆ この法律に定める「公益通報」とは、
①労働者(パートも派遣も含む。)が、
②事業者内部の犯罪等法令違反行為(罰則のあるもの)について、
③事業者内部・行政機関・事業者外部のいずれかに対し、
④通報先に応じた保護要件を満たした通報、です。

☆ 「公益通報」に該当する通報をした労働者については、
①解雇は無効、②派遣契約の解除は無効、③不利益取扱いの禁止
という効果が生じます。

☆ 「法令違反行為」が何を指すかについては、
・刑法・食品衛生法・証券取引法・JAS法・大気汚染防止法・廃棄物処理法・個人情報保護法・「その他政令で定める法律(全406本)」←その都度調べる必要があります。
 この中で、罰則のある規定、ということになります。

 ただし、「犯罪行為と関連する法令違反行為」として、直接に違反が犯罪となる規定ではない基準とか指示とかであって、これに違反することにより最終的に罰則につながる行為まで含むものとされました。

☆ 「通報先に応じた保護要件」というものがあります。
 ①事業者内部の場合:Ⅰ不正目的でない、Ⅱ事実発生または発生を思料
 ②行政機関:上記Ⅰと、Ⅱ事実の真実相当性
 ③事業者外部:上記ⅠⅡに加え、①②では実効がない5場合で、相当機関であること(解釈として、報道機関・事業者団体・消費者団体・被害者など)。

 すなわち、内部への通報であれば真実性の証明は要りません(「おかしい」と思うだけでもOK)が、行政機関や外部機関になるほど要件が厳しくなります。
 
☆ このように「公益通報者保護法」は要件が限定されているため、これに該当しないが公益性のある内部告発行為については、「解雇権濫用法理」「懲戒処分の有効要件」で労働者を救済することになります。

 大ざっぱに言って、「公益通報者保護法」ができたことで、「公益性のある内部告発行為は保護されるべき」という社会的な合意の方向が出されたと思われます。

 それから、大阪弁護士会でも、4月1日以降、電話相談と面談の相談で「公益通報者支援」を行う体制を組んでいるところです。
 ご関心をお持ちの方は、施行後に弁護士会のHPなどをご覧ください。

♪♪ 最後に、私見ですが、この制度は、まさに公務員の労働組合が信頼回復のために大いに活用したらよいことではないだろうか?と思っています。
 汚職にせよ、「口利き」にせよ。おかしいと思ったら、公にしましょう。
 元公務員としては、世間並みに「おかしい」と思う感性も、中にいると薄れがちだということを、自戒しなければならないと思うのです。

March 11, 2006

モラル・ハラスメントをご存じですか?【大橋】

 先日、マリー=フランス・イルゴイエンヌさんというフランスの精神科医の方を招いた講演会に参加しました。
 1998年、「モラル・ハラスメントー人を傷つけずにはいられない」という著書を出され、それ以来、被害者の心のケアに努める傍ら、モラル・ハラスメントの専門家として各地で講演・セミナーを行っている方だそうです。

 モラル・ハラスメント、という言葉は、前から知られていたのかもしれませんが、私は、ごく最近、ある女性弁護士の勉強会でレポートされたことで初めて知ったのです。
 フランスで「社会近代化法」という法律ができ、職場でのモラル・ハラスメントの結果退職に追い込まれた場合にこれを無効とする等、労働関係での被害者救済手段として導入されたと知りました。

 モラル・ハラスメントを日本語に訳すと「精神的嫌がらせ」という意味ですが、「精神的暴力」という方がニュアンスは近い、と聞きました。
 セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、スクール・ハラスメント、そしてドメスティックバイオレンスへの精神的暴力の包括・・様々な社会関係における「精神的暴力」が違法行為として概念化されてきています。
 モラル・ハラスメントは、言ってみればこれらを大きくまとめた概念です。

 そのとき購入した著書2冊は、まだ読めていないのですが、こうした専門家ー精神科医による研究が私たち弁護士の法的主張の重要な証拠になるだろうと思っています。

 その講演会では、今現にモラル・ハラスメントで元の雇用主を訴えている裁判の原告女性がアピールをしていました。
 その女性は、ある特許事務所に勤務していましたが、所長とその意を汲んだベテラン事務員から若い事務員が次々と集中的に嫌がらせを受けて退職に追い込まれる状況で苦痛の日々を送っていたそうです。
 それは、他の事務員の見ている前で「どうして何度言ってもわからないのか」「育ちが悪すぎる」というような罵倒を執拗に浴びせかける、それも何時間も、という状況です。
 確かに仕事のミスがあったからなのでしょう、事務員はまっとうな反論ができません。
 それでも、「そこまで言っては言い過ぎ」という限界があります。そうしたことを他の事務員がかばって言ってあげることもできない状況。次の標的にされかねないからです。正に、いじめです。

 その女性は、「退職してから、退職した女性同士で集まり、あれはいったいどういう状況だったんだろうか、とすっきりしない気持ちで話し合っていました。でも、モラル・ハラスメントの本に出会い、答をやっと見つけた気がしました。」という喜びを語っていました。
 そうなのです。罵倒され、罵倒されて、自信を失い、自分が悪かったと責め、相手方の「論理」に反抗する術を失ってしまい、生命力を失わされていく。DVの被害者もそう、いじめの被害者もそう。
 しかし、「それはモラル・ハラスメントだ!」と加害者に反論できる、そういう武器としてこのモラル・ハラスメントという概念は使えるのです。

 この講演会では、イルゴイエンヌさんに対して、「加害者とはどういう人間だと思われますか? どうしたらその加害者は態度を改めるのでしょうか?」という質問が出されました。
 答は、「加害者は、自らが成育過程で辛い目にあって精神的な傷を負った人であるか、あるいは甘やかされ放題で育てられ、人の痛みが分からない人。そして、加害者は自分が加害者だとは決して思わない。被害者から指摘されると自分を被害者だと思う人なのです。」ということでした。
 うんうん、そうだそうだ、と思いながら聞きました。仕事でいろいろな人に会いますから。
 加害者もまた、ある不正常な成育環境で育ってしまったことによりその人格を形成されてしまった被害者ではあるでしょう。
 しかし、そうであるからといって、自らが人に加害行為をしているのであれば、社会的に許されることではありません。

 一人一人の人権を守る、ということ。人権とは、人間として生きる一人一人の尊厳です。被害者が尊厳を回復する武器としてモラル・ハラスメントを使えるように。私もよく勉強せねばならないと思っています。

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