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September 2005

September 19, 2005

この間のご報告【大橋】

 またまた、大変なブランクの後になりましたが、この間のご報告をしておきます。

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 まずは、さわやかに、この夏に親戚の集まりで出かけた、出身地近くの竜洋海洋公園(静岡県)の景色から。
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 夏は、裁判所も夏休みに入るので、裁判の準備に追われることから少しは解放されます。
 そこで、様々な弁護団活動を、「夏休みモード」ながら、進めることになります。

 靖国訴訟。
 在韓原告が沢山含まれている、アジア訴訟の大阪高裁控訴審判決が、7月26日に出ました。
 大阪地裁の判決では、小泉首相の靖国神社参拝行為を「職務行為性あり」と認めながら、「だから違憲だ」とまでは言わなかった歯がゆさがありましたが、高裁ではこれが進むのか後退するのか、がひとつの焦点でした。
 進みませんでした。どちらかといえば、後退でしょうか。地裁判決の「職務行為性判断」の部分を引用しないで棄却判断をしましたから。
 また、もうひとつの焦点であった「原告(控訴人)らの被害の有無」については、控訴人の主張に対して一つ一つ反論して、結論としては認めませんでした。
 今、上告審へ向け、上告理由を弁護団で分担して検討しているところです。
 さらに、もうすぐ、9月30日には、台湾人原告中心の第2次訴訟の控訴審判決が出ます。

 第1審判決までの経過は、「アジェンダ」という季刊誌にまとめて書いています。
http://members10.tsukaeru.net/agenda/content9.html
 
 判決は、誰が書いても同じになるというものではありません。結論は、法的判断としてそう差が出ないとしても、事実をどう把握したのか、どう問題意識を持ったのか、ということについて、一人の裁判官の見識が如実に表れます。
 訴訟団と弁護団は、担当している裁判官の良心に訴えかける裁判となるよう努力しています。
 法廷に座っている裁判官に対して、書面と、限られた時間での原告の口頭陳述や尋問で、いかに実情を訴えられるか。ここが知恵の絞りどころです。
 裁判官が、余計なことには聞く耳を持たないタイプであれば、努力も判決には反映されないことになりますが、まずは弁護団がいかに表現するかということです。
 これは、どの裁判についても結局同じことで、代理人としての弁護士の職務です。

 それから、ホームレス問題での人権擁護委員会部会活動。
 8月末、大阪の部会と京都の竹下義樹弁護士で、滋賀県近江今津の山間にある、西成の元ホームレスの人が多く収容されている生活保護施設に、見学兼無料法律相談会で行ってきました。
 HPを見るととてもきれいな施設で、現にきれいなのですが、なにしろ山の中ですから、西成で生活してきた人々は「さみしい、つまらない、早く西成に戻りたい」ようです。
http://www.ojk.or.jp/kosei/tunokawa/tunokawa.html

 ここで受けた法律相談は、そのときには「借金の消滅時効援用」で解決するものばかりでしたが、今後は自己破産の申立案件も出てくると思われます。借金を整理すれば、施設からアパートに出て自活する意欲も強くなるということで、大阪のホームレス問題部会では、滋賀弁護士会のメンバーに、今後の協力をお願いしています。
 滋賀の弁護士は、59名しかいないということで、3000名弱を擁する大阪に比べると仕事も大変だと思うのですが、皆で助け合ってこうした問題にも取り組んでくれるということです。
 (大阪でも、ホームレス問題に現に取り組んでいる弁護士は20名もいないのですが。)

 刑務所・拘置所の人権問題。
 名古屋刑務所での職員による入所者暴行致死事件があって、国でも行刑改革会議が持たれ、既決囚については「刑事施設及び受刑者の処遇に関する法律(受刑者処遇法)」という新法が本年成立しました。来年の施行を待つ状況です。
 その流れの中で、弁護士会への「人権救済申立」件数も増加しています。
 塀の中では、外に知られることなく、職員が定数を超える入所者の管理に追われています。その過剰収容の実態に、処遇改善は到底追いつかず、依然としてあまりに非人間的な扱いが止みません。
 それは、医療のレベルの問題、不服申立の握りつぶし、基準の曖昧な懲戒手続、等々です。
 もっと風通しをよくすることが重要です。法律に規定された「視察委員会」という外部からの視察団体については、どう運用されるのかがまだ未定です。また、人権擁護法案は、制定も未定ですし、法務省の外に設置されるのでなければ「風通し」としてほとんど意味がありません。
 そういう中で、外部団体である弁護士会の人権調査は、なるべく実効性のあるものでありたいと考え、「人権救済申立処理マニュアル」の作成にとりかかっています。趣旨は、担当した弁護士が「早く、ポイントを掴んだ調査ができるように」ということです。刑務所や拘置所の中の仕組みを知らないと、何をどう調査してよいのかわかりません。施設の職員も、自ら都合の悪いことを言ってくれるわけもありません。

 また、昨年、和歌山東警察署の留置場で、大声を上げ続ける被疑者に防声具を違法に二重装着させたことが元で、被疑者が窒息死する事件がありました。この件での国家賠償請求訴訟を弁護団で準備中です。
 この件は、担当した警察官が防声具の取扱いに不慣れであったということが直接の問題ですが、名古屋刑務所事件をきっかけに法務省管轄の刑務所や拘置所では取扱いを中止していたものが、警察庁管轄下の代用監獄(つまり警察の留置場のことです)では取扱いをそのまま認めていたということにも問題があります。
 ひいては、「代用監獄という制度をこのまま存置するのか廃止するのか」という議論にも関係するところで、訴状の内容も検討を重ねているところです。

 類似しますが、より深刻な問題かも知れません。オーバーステイ等で退去強制されるまでの施設である入管センターで、入所者が職員に「制圧され」その過程で肋骨を骨折し、腰にも異常を来したという事件があり、国家賠償請求訴訟の弁護団に関わっています。中国人・王連革さんが、尋問に備えて、特別に日本への入国を認められて在日しています。このような事件は、ボランティアの人達の献身的関わりと、同じくボランティアとして集まる弁護士によって成り立っています。(慰謝料が認められれば、報酬がもらえるとは思いますが。)法律扶助制度も、返済能力があるとは判断できない「退去強制対象者」には弁護士費用の立て替えをしません。
 これは、難民認定の訴訟においても同様です。
 私たちも、着手金いくらかさえ見込めない(結果については一層不明な)仕事を沢山はできません。
 費用立替についての体制化が必要です。

 外国人の差別事件。
 ひとつは、アフリカ系アメリカ人のマクガワン氏が、眼鏡店の前でウインドーをのぞき込み、中に入ろうとしたところ、「かつて黒人にイヤな目に遭わされた」との経験を持つオーナーに入店を拒否され、追い払われた、という事件の慰謝料請求訴訟の弁護団に入っています。
 もうひとつは、これからですが、在日韓国人で本名を名乗っている弁護士が、賃貸マンションへの入居を拒否されたという事件について弁護団を組み、対応を検討しています。
 入居拒否事案というのは、最近になってもかえって増加傾向だということです。ニューカマーへの拒否という問題は、個別に「入居の条件を満たすかどうか」で検討されるべきかもしれませんが、在日の弁護士は、生活習慣も賃料支払能力も、問題がないのが明らかです。ただ単に、「外国人を入居させるのはイヤ」という条件を家主は主張してよいのか、人種差別撤廃条約に照らして違法ではないか、社会的に問題提起をしていきたいというのが当事者である弁護士の希望であり、支える弁護団も認識の共有を図っていこうとしています。

 これより前にも、「高槻むくげの会」というマイノリティーの子どもたちの子ども会活動に取り組んできた団体が、高槻市から事業予算を廃止・縮小されたことに対して、この是非を問うため訴訟を起こしている件で弁護団に入っています。
 日本の中に暮らす外国人、及び日本国籍は有していてもルーツが外国にある人達の割合はどんどん増加していくはずです。日本人が持ち続ける旧来の排外的な感情をどう克服して共生社会を実現するのか、この問題意識から関わっています。
http://www.mukuge.net/

 そうこうしているうちに、秋になりました。
 来週は、大阪労働弁護団の一員として、「民主社会の実現のための弁護団」との交流のため、韓国に行ってきます。http://homepage2.nifty.com/lala-osaka/toha.htm
 韓国は、南北の冷戦下での軍政(日米韓の体制がこれを支えてきました)から民主化で一気に様相を変え、日本を大きく超える人権尊重の国に変貌していっています。
 この件でまたご報告したいと思っております。少なくとも、次のご報告が年末になりませんように(^_^;)

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